皆さん、AIは使っていますか?
これに「NO」と答える人は、相当少ないのではないでしょうか。同時に、NOと答えた方も、実は気づかぬうちにAIの恩恵を受けていると思います。
では質問を変えます。皆さん、AIを使いこなしていますか?
こうなると逆に、胸を張って「YES」と答えられる方はマイノリティでしょう。
そこで今回は、ちょっと緊急的にAIについてのコラムを書いていきます。
驚異的なスピードで進化するAIに対して、それを扱う人間側のノウハウ蓄積が追い付いていない現状で、ぼくなんかが「正しい使い方」を提示するなんて、おこがましいにも程があります。
ですが、AIと共生していきたい皆さんのためにも、「正しい使い方を考える」ことならできるかもしれません。
しばし、お付き合いいただければ幸いです。
どんなツールも使い方次第!

さて、今回取り上げるのは、ITmediaビジネスオンラインさんのこんな記事です。
>ITmediaビジネスオンライン『部下「計画をAIに作らせました。チェックしてください」 上司のあなたはどう答える?』
AIの正しい使い方と間違った使い方について解説する。部下の成長を願うマネジャーは、ぜひ最後まで読んでもらいたい。…
AIを取り上げた記事ですから、早速この記事をAIくんに要約してもらい、時間のない皆様にも簡易的に把握いただきましょうかね。あ、時間のある方はぜひ、リンク先をご確認ください。
✏️ 記事の概要
最近、部下が「仕事の計画(プラン)を AI に作らせたのでチェックしてほしい」と上司に頼むケースが増えている。
ただし、AI による「自動生成された計画」をそのまま鵜呑みにすると、誤りや見落とし、非現実的な部分がある可能性が高いため、注意が必要。
✅ 正しい AI の使い方と注意点
記事では、AI を使う際の「正しい使い方」と「落とし穴」について解説:
AI はあくまで“補助ツール” として使うべきで、人間(上司・経験者)が 最終チェック を行うことが重要。
特に、目的や制約条件を明示せず AI に丸投げすると、ズレた提案・プランが返ってくる可能性がある。
また、AI が作った計画が「合理的」「効率的」に見えても、現実の実行可能性やチーム事情を反映できていないこともある。そこを見逃さないようにする必要がある。
本コラムでは恒例ですが嘘をついていない証拠にスクリーンショットも載せておきますね。

では、まずこの記事に登場するAIの間違った使い方から見ていきましょう。
AIが若手の成長を阻害する?
記事では若手社員が新商品開発プロジェクトの計画書を生成AIを使って作成したとあります。
これは現代の会社において、それなりの頻度で目撃される行為なような気がしますね。
一体、何が問題なのでしょうか? AIが作った書類を見た上司の言葉を引用します。
結論から言おう。AIに叩き台(ドラフト)を作らせてはいけない。ましてや完成品を作らせるなど論外だと私は考えている。
そして、想定される「AIはそういうものだろう?」という読者の反応に対して……
しかし、私はあえて問いたい。「それで、あなたは成長しましたか?」
という返事を書いています。
筆者の主張はきわめてシンプルです。
「考える機会を奪う」からAIにすべてを任せるのは反対。その代わり、自分がつくった計画書をAIに見てもらって、修正をする。さらにそれをもう一度AIに投げて、そしてまた修正する。
このプロセスを回すからこそ、若手は成長するんだ。
そういう主張ですね。
AIを頼る理由
ご覧のとおり、筆者はAIを頼るな、ではなく、頼る場所を考えろ、と言っています。
というのも、感情を持つ人間はどうしても厳しい指摘を避けてしまうから。たとえそれが上司・部下の関係であってもです。
一方、AIには感情がない。冷静に欠点だけを淡々と指摘してくれる。同時に疲れることもないので、常にフラットな視点で批評してくれる。
だから、AIは辛口の評論家として最適である。
この意見、とても的を射ていますね。ほぼほぼ、ぼくも同意見です。
AIを正しく使わせるには?
ただ、この記事がすばらしいかと聞かれると、素直に首を縦に振れない自分がいるのも事実なんです。だからこそ、この特別編コラムを書こうと決めました。
では、何が問題なのか。
それは伝え方です。
「汗をかく」プロセスが成長を生む
冒頭の商社の部長は、部下にこう言った。
「AIに叩き台を作ってもらうのではなく、AIに叩いてもらえ」
部下はキョトンとしていた。部長は続けた。
「君が汗をかいて作った計画書を、AIに批評させるんだ。順番が逆なんだよ」
「汗をかく」とはいわゆる慣用表現で、実際には「努力する」「がんばる」くらいの意味です……が。
この文章を見たお若い皆さんの中に、こんな感想を持った方はいませんか?
『無駄に汗をかきたくないからAIを使ってるんだよ!』
中には、こんな感情まで生まれてしまった方もいるかも。
『こんな便利なツールの良さが分からないなんて、年寄りはダメだな』
もし、こんなふうに世代間の分裂を招いてしまったら、これほど悲しいことはありません。
「誤解」を生むかもしれない要素
どちらかというと上司・先輩寄りな年齢・キャリアを持つぼくの目から見て、この文章のどこが“言葉足らず”に見えたのか。
それは先述の「汗をかく」という表現がまず一つ。あと、「たたき台をAIに見せて検証してもらえ」という部分です。
こう書いてしまうと、“若手のため”ではなく、本来チェックするべき上司・先輩の負担軽減のため? と受け取られかねない。ぼくはそう感じてしまったんですよね。
いや、筆者の書いていること、言いたいことは痛いほど分かります。きっとこの方も上司ポジとして若手への指摘に悩んだ経験があるのでしょう。現在はコンサルタント会社の代表者ですが、その前はきっといわゆる「いい上司」だったはずです。ゆえに人間関係の脆さも知っていて、それを恐れてしまう上司側の気持ちを慮り、AIの活用法として「厳しくも冷静な指摘をもらえる絶好のツール」という認識に辿りついたんだと思います。
だからこそ。
これを「上司側の目線でしかない」と受け取られてしまったら、すごくもったいない気がしたんです。
AIを上手に活用してもらう方法!
最初に書いたとおり、AIの「正しい使い方」なんて、ぼくごときには分かりません。分かるはずもありません。
だからこそ、考えてみたのです。若手もベテランも関係なく、どうすればAIを最大限に活用できるのかを。
その結果、とある(現段階での)答えに到達しました。
それは、若手の目線に立って「どういう風に使えば成長の手助けになるか」を提案することです。
そしてもうひとつ。
可能であれば、若手と一緒に自分も体験することです。
もしぼくが提案するなら
ぼくの場合、対象となるのは後輩の芽生ちゃんなので、彼女を例に考えてみます。
たとえば、彼女のコラムをチェックしていて論理の飛躍が目立ったとしましょう。そのときの対応例を、記事のやり方とぼくのやり方を併記しますね。
「俺に見せる前に、AIにチェックしてもらいなよ。そしたら『ここの論理が飛躍してる』と指摘してくれるよ。それを受けて修正して、また見せて、さらに直して…。ライターってのはそうやって成長していくんだよ」
【ぼくのやり方】
「こことここの繋がりに違和感があるけど、なんでだろうなあ。あ、AIに『うまい繋げ方を教えて』って聞いてみると、いろんな選択肢を見せてくれるかも! 一緒にやってみようか」
お分かりですかね。この記事のやり方は、あくまで「自分でやって、AIに聞け。そうすれば成長する」という姿勢です。
そして、ぼくも「違和感がある」ことは伝えつつ、答えは教えません。それを自分で見つけてほしいから。その点では、記事の著者と同じです。
ただ、提案というかたちで、AIをおすすめします。さらに、それを一緒にやることで、自分も勉強する姿勢を見せられます。
きっと、これなら芽生ちゃんに「魔王さんは自分がラクをしたいわけじゃない」と思ってもらえる気がします。
一緒に体験することの付加価値
この行動には大きな付加価値が2つあります。
まず、自分が上で芽生ちゃんが下という図式にならないこと。むしろ、AIのように“新しいもの”の活用法は、若い彼女のほうがすぐに身に付けて、ぼくは彼女から教わることになるでしょうね。
でも、ぼくはそれを悪いことだとは一切思いません。それどころか、ベテランと若手の関係として理想的だと思っています。
そしてもう一つ。
AIを上手に扱えるかどうかは、すでに組織の一員として必要なスキルの1つになっています。
より年齢を重ねているぼくや上司・先輩ポジの皆さんは、若手以上に意識的に勉強しないとその差は開く一方でしょう。
それならば。
後輩の成長を促しつつ、自分もAIの扱い方を“効率的に”学べる。これも非常に大きなメリットになりえます。
正しい使い方を考える!
以前、AIのことを取り上げたコラムで、ぼくはこんなことを書きました。
(AIとの共生とは)ライターという仕事であれば、具体的には下記の2つかな。
・アイディアが枯渇したときにヒントをもらう
・どうしても時間/人が足りないときにとりあえず量産してもらうそして特に2つめの役割を担ってもらうなら、細かく的確に指示を出す必要があります。ということは、細かい指示が出せるように、こちらが大事なポイントを把握しておかなければなりません。
AIは良くも悪くもツールでしかありません。使う人がいて初めて、その性能を発揮します。そして、精通した人が使えばハイパフォーマンスを実現できる一方、そうでない人が指示を出してもそれなりの出力で終わってしまいます。
AIは今日も進化しています。もし今「俺は誰よりAIに詳しいぜ!」という方がいても、1カ月くらい勉強をサボったら置いていかれるでしょう。そのくらい、進化の速度はすさまじいのです。
だから、常にAIを触り続ける必要があります。
そのためには、若手にAIを使わせるだけではなく、若手と一緒に使っていくべきではないでしょうか。
まとめ:AIとも「対話」が大事!

最後にネタばらしというか、白状しますね。
実はこのコラム、一度ざっくり書いたあと、ChatGPTと同じ対話型AIである「Claude(クロード)」に読んでもらって手直しをしたものなんですよ。
せっかくの「AIの正しい使い方を考える」記事ですから、まずぼく自身がAIの正しい使い方を考えて、実践してみたんですね。
具体的には、下書き時点で感じていた疑念を、素直にClaudeにぶつけました。
「このコラムは元記事を批判したいわけじゃないんだけど、批判が強すぎると感じた部分はある?」
すると優秀かつ冷静なClaudeくんはいくつかの欠点を教えてくれました。ぼくもその意見に納得できたから、素直に修正したというわけです。
ただ、重要なことがあります。ぼくはすべての提案をそのまま受け入れたわけではありません。
というのも、そのほかにも「もっと例を増やしたら?」「上司目線になるメカニズムを掘り下げたら?」というアドバイスまでくれたんです。
ただ、例を増やすにしても本業以外の例をあげるとリアルさがなくなる、メカニズムの解明はメインテーマと乖離する。ぼくは素直にそう感じたので、AIにも素直に伝えました。
そしたらね。
なんとClaudeくんは「確かに冗長になるかもしれない、焦点がぼやけるかもしれない」として、「批判的に見えてしまう部分のトーン調整を重視するべきだ」と返事をしてくれたんですよ。
いやあ、本当にびっくりしました。自分で導き出したアドバイスなのに、こちらの疑問に合わせて自分から取り下げてくれる。こんな柔軟性まで持っているなんて。
上司や先輩の皆さん、AIから見習わなきゃいけないことって、予想以上に多いかもしれませんよ!
AIを“フル”活用しよう!
この経験を踏まえて、ぼくは確信しました。
記事の若手社員のような「最初から任せる」やり方も、著者が提案する「まず自分で作って、AIに添削させる」やり方も、どちらも間違っていません。
ただ、どちらにせよ、「AIが出力したもの」をそのまま完成形としてはいけません。真贋チェックや自分の考えとのズレを「対話」を通じて調整する必要があります。
その作業を重ねるほど、いいものを出力してくれるようになるので、納得いかない部分や疑問に感じた部分は遠慮なく伝えてくださいね。
そして、これこそがAIを相手にする最大のメリットかもしれません。だって、上司のダメ出しに「いや、ぼくは○○だと思ったから、あえてこうしたんです」なんて言い返しにくいじゃないですか。でも、AIになら言えるでしょうから。
ChatGPTもGeminiやGrokも、そしてぼくが使ったClaudeも、すべて対話型AIです。ということは、その性能を“フル”に発揮させるには「対話」が必要不可欠なのかもしれません。
ぜひ、皆さんも遠慮なくAIに疑問をぶつけまくって、自身の成長の一助にご活用ください!
(最後に……更新タイミングの都合上、今後、更新されるぼくこと“魔王”くんや後輩の芽生ちゃんのコラム内で活用する各種AIを、あたかも初登場のように扱っているかもしれません。そこはタイムラグということでご容赦いただけると幸いです)





