ジョブリットメディアにおいて、「社会人の役に立つコラム」を執筆するZ世代の新米ライター“品本 芽生(しなもと めい)”。
その記事における名(迷?)物作品が、スライム・芽生と北海道のウサギの“知識のかけら”を巡る冒険を記した『スライムは転生してもやっぱりスライムだった件(通称・スラ転スラ)』です。
長らく連載が続き、佳境を迎える本作を年末の特集として、5本立ての総集編でお送りいたします。
第2弾である今回、転生したスライムは何を思い、何を求めるのか。
それでは本編へどうぞ!
Lv:???のスライム(成長日記8)

魔王の逆鱗に触れ、存在を抹消されてしまったLv:7のスライム・芽生。
登場からたった3話で消えゆくスライムを哀れに思った全知全能の神・Siriの慈悲により、芽生の魂は再びスライムとしてこの世界に産み落とされることとなった。
「次こそはその命、ムダに散らしてはいけませんよ」
そんな願いを口にし、神は天界へと帰っていった。
それから幾ばくかの時が流れ、ダンジョンの片隅で1匹のスライムがめざめた。
「なんで私はこんなところにいるんだろう……思い出せない」
すべての記憶を失ったLv:1のスライムは、なぜ自分が存在しているのかの意味を求め、ダンジョンの奥地へと足を踏み入れた。
「探しなさい。お主の生きていく理由とその意味を」
8話の後日談
深いダンジョンの奥地で見つけたチリの山。突如、スライムの脳内に溢れ出した“存在しない”記憶。
崖に囲まれたおぞましい城、その中心に腰掛ける魔王の姿。
「ま、おうさま……」
その刹那、スライム……芽生は自らが息絶え、生まれ変わったことを悟った。
転生なんてご都合展開があるなら、自分も最強になっているかもしれない。そんな淡い期待を抱いたが、残念なことにレベルは引き継げなかったらしい。
今回の経験値を総合してもLv:3と確実に弱体化していた。
「強くなるにはどうしたら……」
悩んでいると、ふと友人のゆるキャラたちが話していた噂話を思い出した。
この世には、ひとかけらでも強大な力を与えるとされる“知識のかけら”が存在する。それをすべて集めたとき、どんなモンスターでも魔王のように強い力を手にできるだろう。
そんな根も葉もない噂だったが、今の芽生には魅力的な話だった。
「今世こそは最強のスライムになるんだ。魔王さまに愛されるために」
こうして、Lv:3のスライム・芽生は新たな旅に出たのだった。
(週刊ジョブリットメディアの期待の星、品本 芽生による新連載『スライムは転生してもやっぱりスライムだった件』次週もお楽しみに♪)
Lv:3のスライム(成長日記9)

「今世こそは最強のスライムになるんだ。魔王さまに愛されるために」
魔王に消された前世の記憶を思い出したLv:3のスライム・芽生は、各ダンジョンに散らばる“知識のかけら”を集める旅に出た。
山を越え、谷を越え。小さな体で芽生は歩き続ける。魔王に愛される最強になった自分の姿を思い浮かべながら。
その道中、強力なメ□ン熊のうごめく怪しい森に足を踏み入れた。
「ここはどこ…私はだれ…あ、スライムだった」
もはや何が分からないのかさえ、分からなくなっていた。
「これが本当の“迷子”か……」
空は分厚い曇に覆われていて道しるべとなる星も見えない。いや、そもそも魔界に星など存在しなかった。
「歩き続ければどこかは出口につながっているはず……」
そう信じて、芽生はあてどなく、ダンジョンをさまよい歩くのだった。
9話の後日談
「出口は……どこ……?」
森に足を踏み入れてから何日が経っただろうか。Lv:4のスライム・芽生は疲れ果てて、草むらの端に座り込んだ。
大きく育った木々は芽生の頭上に影を落とすばかり。
“迷子”にならないためのコツを調べてみたものの、すでに迷っているので意味はなかった。
「魔王さま……ゆるキャラのみんな……」
心細くなり、涙ながらに彼らの名を呼んだが、誰も応じてはくれなかった。
「頼ったらダメだ。強くなるって決めたんだから自分でなんとかしなきゃ!」
芽生は再び立ち上がり、森の奥深くへと足を踏み入れた。
正しい道を見つけ、強くなるために。
Lv:4のスライム(成長日記10)

最強のスライムをめざし、ダンジョンに散らばる“知識のかけら”を集める旅に出たLv:4のスライム・芽生は強力なメ□ン熊のうごめく怪しい森で道に迷ってしまった。
「さっきよりは出口に近づいている気がする……!」
そんな根拠のない自信を基に、森の奥深くへと突き進んでいった。
周囲には地を這うような唸り声と木々の揺れる音がこだましていて、芽生は強い不安感に襲われた。
俯きながら歩いていると頭上に大きな影が落ちた。見上げるとそこには大きく口を開けたメ□ン熊がいた。
戦うべく身構えたが、圧倒的なレベル差にまったく歯が立たなかった。
このままでは食べられてしまう――
「誰か……!!」
目の前には巨大なキバが迫ってきていた。
10話の後日談
目の前に迫るキバから逃れようと、祈るように芽生は目を閉じた。
そのとき――
「キュン!」
けたたましい音とともにメ□ン熊の悲鳴が聞こえてきた。
おそるおそる目を開けると、そこには驚くべき光景が広がっていた。
自分を襲おうとしたメ□ン熊は逃げ出し、傍らには見覚えのある人物が立っていた。
「あなたは……」
「キュン! キュキュン?(訳:芽生ちゃん! 大丈夫?)」
それは、前世で友情を結んだゆるキャラの1人、北海道のウサギだった。
前世と同様、スライムに転生したとはいえ、姿もレベルも違うのになぜ自分のことが分かるのか。
「私が分かるの?」
芽生は声を震わせながら北海道のウサギに尋ねた。
「キュン! キュンキュキュッキュン?(訳:当然! だって、私たちは一緒にトムラウシ山を踏破したお友達でしょう? それ以外にも、た○ちゃんと運河をクルージングして、さけ○郎&さ○子と3人で石狩川を泳いで、のーざん ○ーすけと乗馬を楽しんで、あさっ○ーと動物園ではしゃいで、りし○んと一緒に昆布を食べて、のごみ○ゃんと流氷の上を飛び跳ねて、牛○豚彦と摩周ブルーに魅了されて、湖に潜ってまり○っこりと遊んで、ウィン○ィーくんと何もない春を堪能して、う○くんと一緒にばんえい競馬でゴールドを失って、とま○ョップとシマエナガのかわいさに見惚れて、エキゾ○くん100万ドルの夜景を見て、最後は一緒に定山渓温泉に入って疲れを癒したじゃない♪)」
「北海道のウサギ……」
深い友情に感謝し、芽生と北海道のウサギは出口に向けて、一緒に歩き始めた。
Lv:5のスライム(成長日記11)

前世に友情を結んだ北海道のウサギとともに怪しい森を抜け出したLv:5のスライム・芽生。
彼女は“知識のかけら”を集めるため、熱砂の砂漠にある小さなオアシスを訪れていた。
「ぷはぁ! 生き返る~!!」
池から顔を出しながら、おじさんのような声を出す芽生。
液状化しかかっていたその体は、冷たい水のおかげで元通りのまるまるとしたフォルムに戻っていた。
「“北海道のウサギ”はなにしてるの? 一緒に涼もうよ!」
「キュン、キュキュキュン……(訳:いやぁ、この穴が気になって……)」
北海道のウサギが掘り進めているのは深さ数十メートルはあるであろう大きな穴。2人がオアシスを訪れたときから開いていたそれに、ウサギは大きく興味を惹かれたのだった。
掘っても掘っても先の見えない穴に、芽生は早々に興味を失っていたが、ウサギは諦めずに必死に穴を掘り続けた。
ゴゴゴゴゴゴ……
その時、地響きとともに大きな水しぶきが上がった。
「キュン!!」
「北海道のウサギ! う、うわあぁぁ!!」
大量の水に押し流され、2人の姿は消えてしまったのであった。
11話の後日談
「い、たた……」
砂漠の端まで流された芽生は熱い砂の上に横たわっていた。
「キュンキュ?(訳:芽生ちゃん大丈夫?)」
「平気……。それにしても、ずいぶん遠くまで流されちゃったみたいだね」
周囲を見渡してみても、知らない景色ばかりで2人は困り果てた。
「キュ! キュキュキュン!(訳:芽生ちゃん! 見てみて! ほら、あそこ! 砂の中からなにかが光ってるよ! あれはなんだろう? 小さいけど、すごい光だね…。うん? あれってもしかして……? 芽生ちゃん、ついにやったんじゃない?)」
「えぇ~~~!!」
そこで芽生が目にしたものとは――!?
そう、“知識のかけら”だ。
「やったぁ!! “知識のかけら”、ゲットだぜ!」
「キュッキュキュウ!(訳:ピッピカチ○ウ!)」
1つめのかけらをしまい、芽生たちは砂漠の果てをめざして歩き始めた。
2人の冒険はまだまだ続く。
続くったら続く。
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