ジョブリットメディアにおいて、「社会人の役に立つコラム」を執筆するZ世代の新米ライター“品本 芽生(しなもと めい)”。
その記事における名(迷?)物作品が、スライム・芽生と北海道のウサギの“知識のかけら”を巡る冒険を記した『スライムは転生してもやっぱりスライムだった件(通称・スラ転スラ)』です。
長らく連載が続き、佳境を迎える本作を年末の特集として、5本立ての総集編でお送りいたします。
第5弾である今回、島の奥地へ足を踏み入れていくスライムと北海道のウサギ。2人(匹)の冒険は佳境を迎える。
それでは本編へどうぞ!
Lv:12のスライム(成長日記18)

Lv:12のスライム・芽生は前世の友であるChatGPT(通称・チャッピーちゃん)との料理バトルに勝利し、3つめの知識のかけら“夢を叶える素晴らしさ”を獲得した。
ChatGPTと別れた後、北海道のウサギと共に再び島の中央にある大きな塔をめざして歩みを進めた。
塔までの道のりは遠いように思えたが、実際にはかなり近くまで来ていたらしく、あっという間に塔の入り口までたどり着いた。
「キュ……(訳:大きな扉……)」
そこにあったのは2人(匹)の背丈の4倍はあるのではないかと思われる純白の扉だった。
開けられるか不安だったが、体重をかけて押してみると案外かんたんに開いた。
「うわぁ……」
扉の先には、この世のものと思えない空間が広がっていた。
周囲を反射するほど白い壁と床。そこにポツリと置かれた螺旋階段。
あまりに不自然な配置だが、それがおかしいのだと2人(匹)は思えずにいた。
「キュ?(訳:どうする?)」
「もちろんのぼるよ!」
高層階までのぼれば何かが待っている。
芽生は不思議とそう確信していた。
螺旋階段の先には天井もなく、頂上はどこなのかが分からない状態だった。
しかし、芽生はためらうことなく階段に足をかけた。
18話の後日談
「もうダメ……目が回る……」
「キュ、キュン!(訳:芽生ちゃん、しっかりして!)」
螺旋階段をのぼり始めて早数時間。
窓の外は暗くなり、塔内は謎の力によってライトアップされていた。
どれだけのぼろうと頂上にはたどり着けず、芽生の体力と気力は限界に達していた。
「私たちの足が短いせい、とかじゃないよね? どうなってるの、この塔……」
スライムとウサギという階段をのぼるには適さない生物だということを踏まえても、この進まなさは異常だった。
不思議に思ったウサギは下を見て、そのつぶらな瞳を見開いた。
「キュキュン!(訳:芽生ちゃん見て!)」
ウサギの悲痛な声に芽生は青白い顔をしたまま階段の下を覗きこんだ。
そして、悲鳴をあげた。
「嘘でしょ!?」
そこにあったのは数時間前と変わらぬ距離の地面だった。
歩みを止めずに頂上をめざしていたはずなのに、まったく上に近づいていなかった事実に2人(匹)は打ちのめされた。
「この塔、一体どうなってんの!?」
塔内に1人(匹)の哀れなスライムの叫びがこだました。
――――――――――――――――――
「ふわぁ……よく寝ましたね……」
塔の最上階で1人の男が目を覚ました。
その部屋はしばらく掃除がされていないのかほこりとクモの巣にまみれていた。
「コラム10話ぶりに目を覚ましてみれば酷い状況ですね……」
傍らにある杖を手に取り、その場で振るとあっという間に汚れた部屋がきれいになった。
チリ1つ落ちていない部屋の様子に満足げに頷いた後、男は騒がしくなった塔の様子に目を細めた。
「さて、あの時のスライムがどれほど成長したのか。この目でしかと見定めるとしましょうか」
扉に手をかけ、久方振りの外へと一歩踏み出す。
手元の杖には光り輝く3つのかけらが填められていた。
次回へ続く――!
Lv:13のスライム(成長日記19)

Lv:13のスライム・芽生は前世からの友達である北海道のウサギと共に島の中央にある大きな塔にのぼっていた。
しかし、のぼってものぼっても頂上には一向に近づかず、それどころか以前とほぼ変わらない距離の地面に疲れ果てていた。
「やっぱりのぼっても地面との距離は変わらない……」
「キュン……(訳:でも下りると地面は近づく……)」
今まで険しない山道も気合いと友情パワーで乗り越えて2人(匹)だったが、この状況にはお手上げだった。
力なく地面にへたり込んでいると、浮遊感と共に周囲の景色が様変わりしていった。
無限に続いていた螺旋階段は消え、目の前には神々しい空間が広がっていた。
「長らく試練の間に留まらせることになってしまいすみませんね」
優しげな声に振り向くとそこには1人の老人が立っていた。
「キュ?(訳:あなたは?)」
「私は全知全能の神・Siriですよ。芽生」
「全知全能の神?」
突然、目の前に現れた神を名乗る“いかにも”な装いの老人に、芽生の警戒心はどんどん強まっていった。
「ウサギ、この人変だよ。急にこんなところに連れてこられるし。何より私の名前を知ってる……」
なんとか逃げようとじりじりと後ろに下がっていったが、壁にぶつかり阻まれた。
「私は怪しい者ではないのですが……」
「不審者はみんなそう言うって魔王さまが言ってたよ!」
「そう言われると困りますな……」
あまりの言われようにSiriは苦笑した。
「答えて! どうして……」
「分かりました。全てをお答えすることとしましょうかね」
そう言うと、Siriはあごひげに手を遣りながら2人(匹)に優しげな眼差しを向けた。
「まず、なぜそなたの名前を知っているのか。“神”だからと一言で済ませてもよいが、実際にはもっと深いわけがあるのです」
「深い、わけ?」
「そなたをスライムとしてこの世に再び転生させたのはこの私、Siriでしてな」
19話の後日談
「あなたが私を転生させたの……?」
Siriの言葉に芽生は己の耳を疑った。
「あの日、魔界に蔓延るゆるキャラたちの様子を伺いにいったところ、魔王の逆鱗に触れて消えゆくあなたを見つけましてな」
忘れもしないあの日、芽生は魔王の怒りを買い、モンスターとしての生涯を終えた。
はずだったのだ。
「なんで……あなたと私は会ったことさえないのに! 何のためにこんな……!」
「それは私にも分からぬが……」
本来、神と魔王は敵同士。
配下の1人であるスライムを転生させるということは、敵に塩を送るようなものだった。
「分かりませんが、そなたには何か特別な役目があるのかもしれませんな」
「私に? 平凡なスライムなのに?」
「うむ。ここに来たのもきっと運命。“知識のかけら”よ、そうであるな?」
Siriがそう口にすると、手元の杖が光り輝いた。
「キュ! キュキュン!(訳:芽生ちゃん! あの杖に填まっているのって“知識のかけら”じゃない!)」
「ほほう。やはり知っておられたか」
「キュン! キュキュン!(訳:とぼけないでよ! なんで神であるあなたが魔界(オフィス街)に伝わる噂のかけらを持っているの!)」
ウサギは今にも飛び掛からんばかりの勢いでSiriに詰め寄った。
魔王の敵でありこの世の“自由”を司る神は、魔界(オフィス街)へかんたんに出入りできない。
それなのに魔界に多く散らばっているはずの“知識のかけら”を我が物顔で持っていることが理解できなかった。
「なるほど……。魔界ではこのかけらのことがそのように伝わっておるのですね」
興味深そうにあごひげを触るSiriにウサギは毒気が抜かれ、黙り込んでしまった。
「せっかくこんなところまで来てくれたのですから、かけらについてお話しすることにいたしましょう」
杖を愛し気に見つめながら、Siriは口を開いた。
「なぜこのかけらを所持しているのか。それは私が“知識のかけら”を作った本人だからです」
次回へ続く――!
あとがき
5週間にわたってお届けした『スライムは転生してもやっぱりスライムだった件(通称・スラ転スラ)』の総集編、いかがでしたでしょうか。
本編は前日譚の後半からはすべてコピペだったので、繋げるとだいぶ違和感が出るんじゃないかと心配していたのですが、私が思っている以上に話の整合性が取れていて驚きました。
今回の話の続きはこちらのコラムにある『前回のあらすじ』から読めます。
記事を読むうえでは“茶番”として扱われるスラ転スラ。
この総集編でその世界観を好いてくれる方が1人でも増えてくれたら、作者としても嬉しい限りです。
2026年内には完結したいな。
品本 芽生(しなもと めい)
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