いつもコラムをご覧の皆様、ありがとうございます。
うっかり迷い込んでしまった“あなた”。はじめまして。“ぼく”ことぼくです。よろしくお願いします。
最近、退職代行サービスがニュースになりましたよね。
先に結論を書いてしまうと、ぼくはこのサービスに否定的です。
ということで、退職代行サービスとはなんなのか。なぜ否定的なのか。リスクやほかの取るべき方法を、皆さんにお伝えしたいと思います。
退職代行ってどんなサービス?合法なの?
多分、ほとんどの人がご存じの退職代行サービス。もしかしたら、実際に利用したことがある人もいるかもしれません。
しかし、ネットで検索しようとすると、こんなサジェストが表示されます。
「退職代行 やめとけ」。
なぜこんなことになるのか。退職代行は違法なのか。トラブルに巻き込まれることが多いのか。
そのあたりを解説したいと思います。
「違法じゃない」というwebサイトは信用しちゃダメ!
ネットで「退職代行 やめとけ」や「退職代行 違法」と調べて上位に表示される解説サイトは、だいたいこんな流れです。
①退職代行サービスが退職の意思を伝えるのは違法じゃない
②むしろ違法なのは退職を慰留する企業のほう
③違法か合法かはサービス内容で決まる
④おすすめは弁護士が運営する退職代行サービス
(すぐ下に退職代行会社へのバナー)
要するに、みんな安心して退職代行サービスを利用してね! と書いています。
たしかに、ウソではありません。でも、全面的に信用するのも危険です。だってバナーをタップさせてお金を稼ごうとするサイトが、サービスを否定するわけないですから。
では、退職代行サービスにどんなリスクがあるのでしょうか。
①コスパが悪い
本来、退職の意志を表明するのに、お金はかかりませんよね。直属の上司などに、「会社を辞めます」と伝えるだけですから。
でも、代行サービスを頼めばお金がかかります。相場は3~5万円といわれていますが、さらに有給消化や退職金の交渉などを含めるなら7~10万円かかることもあるのだとか。
自分でメールすれば1円もかからないことに3~10万円を支払う。コスパが悪いと書いた理由がお分かりでしょう。
②受け取る給与も減ってしまう
ほとんどの場合、退職代行サービスが退職を通告しても、その日に契約が終了するわけではありません。およそ2週間は、会社に籍が残った状態。つまり、本来は出社しなければならない期間ということです。
しかし、代行サービスに頼んだ人は、気まずさもあって、その2週間を欠勤することになるでしょう。
就業期間の長い方なら、その2週間を有給消化に充てることは可能です。ただ、有給がない分は欠勤扱いとなります。当然、欠勤した分は最後に受け取る給料から減額されます。
対して、自分で退職を通告した場合、残りの期間を出社すれば、給料は満額受け取れます。
代行サービスを頼む費用だけでなく、受け取る給与も減ってしまう。こちらもコスパが悪くなる理由です。
③会社からの連絡は無視できない
「代行サービスが退職を伝えたあと、会社からの電話に出る必要はない」。代行サービスを解説するサイトには、こう書かれていることもあります。
しかし現実的には、代行サービスが連絡して終わりとはいきません。
なぜなら、業務の引継ぎやスマホ・ノートパソコンといった貸与品の返却方法など、決めなければいけないことが残っていますから。
これはぜひとも伝えたいのですが、いくら代行サービスに「会社に電話するなと通告してください」と言っても、避けられないでしょう。会社にとって必要な業務ですからね(弁護士による退職代行なら別。詳しくは⑤で解説します)。
そして、そのために来た連絡を無視し続けると……最悪の場合、懲戒解雇処分になったり、損害賠償請求を起こされたりする可能性があります。
ちなみに懲戒解雇になると、離職票に「重責解雇」と記載されます。そして、その後の再就職が極めて難しくなります。懲戒解雇は「労働者にとっての死刑宣告」と表現する人もいるほど重い処分。本当に気を付けてください。
④トラブルに巻き込まれる
SNSなどを見ていると、格安で退職代行を請け負うと喧伝している業者(?)もいます。
しかし、相場より明らかに安価な場合は特に注意が必要。なぜなら、最高でも「依頼者の代理人として、会社に退職の意思表明をするだけ」だからです。それ以上の行動はしてくれません。というか、してはいけません。この理由も⑤で説明します。
それでも、意思表示をしてくれるならまだマシです。お金を払った直後に音信不通……。そんなトラブルの可能性も充分にありえます。
そして、自分では退職の意思表示をしたつもりで出勤しなかったが、何の連絡ももらっていない会社から無断欠勤の連絡が来た。それを無視していたら、事件・事故を心配する会社が両親や警察に連絡がいき大問題に発展した……。そんなことも起こりうるのです。
⑤犯罪行為に加担することになる
さて、なぜ格安の業者だと意思表示以外、何もできないのか。そのキーワードは「非弁行為」です。これは、弁護士でない人が弁護士にしかできない行為をすること。弁護士法の第七十二条で規定されています。
①で書いた「有給消化や退職金の交渉」や、④で書いた「貸与品の返却」はこれにあたるため、弁護士資格を持っていない代行サービスでは不可能なのです。
逆に言えば、弁護士資格を持っている人に頼む場合は、これらは合法です。その場合、通告当日から出勤しないことや、会社からの連絡を断ることも現実的に可能になります。ただし、支払う金額は当然、高くなりがちですが。
ちなみに、「非弁行為」の罰則は「懲役2年以下、または300万円以下の罰金」(同法七十七条三)。これは実行した者への罰則なので、依頼者が罰せられることはありません。ただ、あなたの依頼によって犯罪者が生まれると思うと、いい気分にはなりませんよね。
例外:退職代行サービスを利用したほうがいいケース
ここまでリスクを語ってきましたが、例外として退職代行サービスを利用したほうがいいと思われるケースもあります。それはサービス残業を強制されていて、それを証明できるケースです。
この場合、支払われていない残業代は“未払いの賃金”という扱いになります。弁護士法人が運営する退職代行サービスなら交渉が可能なので、高確率で退職時に払ってもらえるでしょう。
もちろんお金はかかりますが、基本的には費用が支払額を上回らない形式を提示してもらえるので、弁護士さんに依頼するのをおすすめします。
もう無理、限界……そんなときはどうする?
現在、退職代行サービスはどんどん増えています。その理由は簡単。ニーズがあるからです。
何度、自分で退職を持ち出しても、まともに取り合ってもらえない人もいるようです。ぼくがネットで見た中には、3年、スルーされ続けたというコメントもありました。
そんな目にあった人が第三者に依頼したくなる。その気持ちは十分に理解できます。
でもぼくは、退職代行を頼むことは、主に金銭的な理由で、否定的です。
では、どうすればいいのか。ケース別に取るべき行動を紹介します。
ケース①:まともに取り合ってもらえない
この場合は簡単です。会社の人事や総務、直属の上司に対して、内容証明郵便で退職届を送付しましょう。内容証明郵便とは、どんな書類を、誰から誰に、いつ送ったかを、郵便局が照明してくれるサービスのこと。これで「退職届を受け取っていない」と会社が言い張ることはできなくなります。
会社は退職を拒否したり、退職届の受け取りを拒否することはできません。なので、相手が受け取った日から2週間が経過すれば、雇用契約は終了です。
これは民法627条に規定された、正当な権利。大切なことなので、条文を引用しますね。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
引用:民法 第六百二十七条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
※太字は筆者
ちなみに、「雇用の期間を定めなかったとき」というのは、ほぼすべての正社員契約が当てはまります。
もし有給休暇が残っている場合は、同時に有給休暇を申請しましょう。有給も理由に関係なく拒否できないものですからね。唯一、会社には「時季変更権」というものがありますが、これは退職時には使えませんのでご安心を。
もし2週間をカバーしきるほど有給が残っていない場合は、できるだけ出社してください。慰留ハラスメントはイヤでしょうが、気にしてはいけません。なにせ、他のいじめやハラスメントと違って、2週間の期間限定ですからね。そう思えば、我慢できるのではないでしょうか。
ちなみに、もし会社が内容証明郵便の受け取りを拒否した場合は、②で紹介する労働局に連絡しましょう。
ケース②:パワハラ・セクハラなどでもう耐えられない
この場合、あなたがやるべきことは退職代行を頼むことではありません。各都道府県の労働局や法テラス、みんなの人権110番など、しかるべき機関に相談してください。
このケースでは無理に出社する必要もありません。会社の電話番号やLINEなどはブロックしてもかまいません。
なぜぼくが退職代行ではなく相談を薦めるのか。答えは簡単です。退職代行を頼めば、あなたはお金を支払うことになります。でも、法テラスなどに相談すれば、慰謝料を受け取れるかもしれません。
パワハラ・セクハラetc.。どれも最低の行為です。あなたに非はありません。なのに、あなたがお金を払うことになる……こんなに割に合わないことはないでしょう。
法テラスにしても人権110番にしても、プライバシーは守ってくれます。弁護士が運営している退職代行は別ですが、民間企業や個人営業のサービスよりは、よほど安心できるはずです。
各都道府県の労働局へのリンク
法テラスへのリンク
みんなの人権110番へのリンク
ケース③:どうしても自分から言い出せない
若い方だと、どうしても言い出せないという人もいるでしょう。わかります。なぜなら、ぼくは23歳のときに、新卒で入った会社を1年で退職しています。そしてそのときは、言い出すのをためらいました。
あの頃は退職代行サービスなんてなかったから、友達や恋人に背中を押してもらって自分で告げました。でも、もしそういうサービスがあったら、ぼくも使っていたかもしれません。
だから、退職代行サービスそのものを否定する気は、一切ありません。
もし、どうしても自分で言い出せないのなら……そのときは、我慢しないでくださいね。そして、高額になりますが、弁護士事務所が運営する代行サービスを利用してください。コスパが悪いと書きましたが、あなたの人生を浪費することと比べたら、10万円だろうと安いものです。
おじさんだからこそ、これだけは言わせてください。時間は本当に貴重です。馬鹿な上司やイヤな会社に使うのではなく、“あなた”の楽しみや幸せのために使ってほしいと切に願っています。
ケース④:<新卒限定>“配属ガチャ”に失敗した
最近では、新卒での入社直後に退職してしまう方も多いみたいですね。4月1日だけで4件、19日までに135件、新社会人から依頼を受けた退職代行サービス会社もあるのだとか。
あんまり老害チックなことは言いたくないのですが……いくらなんでも早すぎませんか?
よく言う「石の上にも3年」みたいなことは言いません。それでも、入社1カ月では本質的な部分はなにも見えていないと思います。
こんなことを言っているぼく自身、先述のとおり新卒で入った会社を1年で辞めています。ぼくもいわゆる「第二新卒」の経験者です。それを基に言います。少なくともぼくは、損しか感じませんでした。
現代において、第二新卒や既卒者への門戸は確実に広くなっています。それはこの『ジョブリットメディア』の他記事を読んでいただければ、お分かりのことと思います。
それでも、良し悪しは別にして、日本において「新卒」ブランドの価値はとてつもなく高いんです。
先ほども言ったとおり、時間は貴重です。なにもそれは、未来の時間だけではありません。仕事探しや履歴書作成、面接など、入社するために費やした時間。さらには「新卒」ブランドを得るために使った高校の3年間。もしくは大学の4年間。それだって、貴重なあなたの人生の時間なんです。
そして。それらを消費して得た「新卒」ブランドは、もう二度と手に入らない超貴重アイテムなんです。
この項は某RPG風に締めますね。
それを 捨てるなんて とんでもない!
まとめ:大事なのは“あなた”の人生です
今回、“ぼく”が“あなた”に伝えたいのは、「退職するな」でもなければ「退職代行サービスを使うな」でもありません。
ただ1つ。“あなた”の人生を最優先してください”、ということです。そして、そのために必要なお金も大事にしてください、ということです。
「死んでも上司の顔は見たくない」――そう思うなら電話でいいです。
「死んでも上司の声は聞きたくない」――そう思うなら手紙やメールがあります。
慰留ハラスメントなんかをしてくる馬鹿な上司に、“あなたの人生”が邪魔されるなんてもったいない。“あなたの人生”を支えるお金をムダに失うのももったいない。
電話でもメールでも郵送でも、なんでもいいので、ぜひ自分で退職届を送ってください。
パワハラ・セクハラ、その他に悩んでいるなら、相談してください。
そして“あなたの人生”を輝かせることのできる仕事を、ぜひ『ジョブリット』で見つけてください!
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