皆さんは「裁量労働制」という働き方をご存じでしょうか。
これは「働いた時間の長さ」ではなく、「結果や成果」に対して報酬を支払う制度のことです。
しかし、ネットで検索すると、サジェストされるのは「やばい」「デメリット」といったネガティブなものばかり。
裁量労働制は本当にやばい働き方なのでしょうか。
2024年4月に法改正!裁量労働制を知ろう!
「働き方改革」という言葉が一般化しつつある現代。裁量労働制もその1つです。
しかしこの働き方の歴史は古く、1,988(昭和63)年に導入されたもの。そこから複数回のアップデートを経て、多様な働き方を実現する手段の1つになっています。
同時に、多くの批判を浴びる制度でもあるのです。
なんのために、どうする?裁量労働制とは!
そもそも裁量労働制とは、時間に固定されない働き方によって生産性を高めることが目的。たとえば労働時間は、労働基準法で「1日8時間・週40時間」以内と規定されています。また多くの会社では始業・終業時間も定められています。
しかし、勤務時間が決まっているとかえって効率が悪くなる業種もあります。そのような職種では始業・終業時間も含めて労働時間の管理を労働者自身に任せ、自由度の高い労働環境を実現させたほうが、生産性を高められることでしょう。
具体的には、裁量労働制を適用すると下記のような働き方ができるようになります。
労働時間について
裁量労働制では、実際に働いた時間はあまり重視されません。企業と社員の間で定めた時間を働いたものと「みなし」、その分の賃金が支払らわれます。
より具体的に言うなら、通常、みなし労働時間は8時間の場合がほとんど。そして実際に社員が1日10時間働いたとしても、逆に6時間しか働かなくても、支払われる給料は8時間分です。
残業について
裁量労働制に残業代はないのかというと、基本的にはYES。というのも、裁量労働制の考え方は「1日8時間なら、このくらいの仕事量はできるよね」というものだからです。
これがデメリットかというと、そうとも限りません。逆に任された仕事を6時間で終わらせても、8時間分の給料が発生するのですから。
例外:手当について
ちなみに、例外となるのがいわゆる休日手当。裁量労働制であっても、日曜日などの法定休日に勤務した場合は勤務時間に応じた35%の割増賃金が支払われることになります。
また、深夜手当も同じで、22時~翌朝5時までの間に勤務した場合は25%以上の割増賃金が発生します。
いくら本人の裁量で仕事を進めるといっても、深夜や日曜日は本来、休むべき時間。そういうことですね。
もちろん、裁量労働制はすべての職種に適用できません。厚生労働省は、裁量労働制を適用できる業務を、「専門業務型」と「規格業務型」の2つに分類しています。
時間=成果とは限らない業種ばかり!【専門業務型】
厚生労働省が専門業務型裁量労働制の対象業務に分類しているのは、下記の20。全文は長いため、簡略化してお伝えします。
新技術の研究開発/人文科学・自然科学の研究業務
情報処理システムの分析・設計
新聞・出版の取材・編集/ラジオやテレビの取材・編集
衣服や広告などのデザイナー
テレビ・映画を製作するプロデューサー/ディレクター
コピーライター
システムコンサルタント
インテリアコーディネーター
ゲームのシナリオ作成/映像・音響制作
証券アナリスト
金融商品の開発者
(主に研究に従事する)大学教授
M&Aアドバイザー
公認会計士
弁護士
建築士
不動産鑑定士
弁理士
税理士
中小企業診断士
これでもまだ分かりにくいですかね。まとめると、いわゆるクリエイターやテレビや雑誌の編集者、研究者やシステムエンジニア、「士」業など……といったところでしょうか。
これらはいずれも時間よりも成果が重要視されるものばかりなので、裁量労働制の対象になるのも納得です。
大きな自由と大きな責任!【企画業務型】
もうひとつの企画業務型裁量労働制は解説が難しいのですが、こちらも厚生労働省が定める要件を下記にまとめます。
1. 事業の運営にかんするものであること
2. 企画、立案、調査、分析の業務であること
3. 業務遂行の方法を労働者の裁量にゆだねる必要があると客観的に判断できる業務であること
4. 業務遂行の手段や時間配分の決定にかんして、使用者が具体的な指示をしないこと
要するに、事業の運営にかんして自由に決められる代わりに責任も伴う。そういった職種に就く人にだけ、裁量労働制を適用できるわけです。
嫌われているのはなぜ?裁量労働のメリットとデメリット
上記のとおり、特定の業種においては生産性を高めやすい裁量労働制。労働者にとっても、自分のペースで仕事できるのはメリットと言えるはずです。
ではなぜ、裁量労働制がここまで嫌われるのでしょうか。
メリットとデメリットを、できるだけ公平に紹介していきます。
メリット
裁量労働制のメリットは、なんといっても裁量の大きさと自由の多さ。与えられた仕事をどのくらいの時間で、どんなやり方で進めるのか。そのほとんどを自分で決めることができます。
またワークライフバランスを保ちやすいこともメリットの1つ。「定時」という概念がないため、求められる仕事をこなしさえすれば、何時から何時まで働くかも自由です。
デメリット
上記に挙げた2つは、どちらもデメリットにも繋がります。裁量の大きさは労働者への負担に直結するため、繁忙期や締め切り直前などは労働者に多大な負担がかかることがあります。
しかも、どれだけ残業をしたとしても、基本的に残業代はもらえません。さらに仕事が遅いと判断されれば減給や最悪解雇なども考えられます。
つまり、裁量労働制は効率よく仕事をさばける労働者にとっては大きなメリットになります。同時に、そうでない人には大きな負担を感じる働き方かもしれません。
しかし、一般的には「裁量労働制=悪」というイメージがついている印象です。これはなぜなのでしょうか。
制度を悪用する“ブラック企業”が多い
多分、これがいちばん大きい理由でしょう。
裁量労働制は本来、時間に縛られない働き方を実現するための制度でした。しかし、「残業代を支払わなくていい制度」と受け止めて、労働者に不当な働き方を押し付ける企業が、残念ながら多いようです。
中には、裁量労働制にもかかわらず上司から出勤・退勤時間を指定されたり、みなし労働時間にそぐわない仕事量を割り振られたりするケースもあるのだとか。
しかし、これだけは忘れないでください。裁量労働制が悪なのではありません。
制度を悪用する企業が悪なのです。
まとめ:自分に自信があるかどうかで評価が変わる!
裁量労働制という働き方は、時間で成果を測れない業種にとってはメリットの多い働き方です。
しかし、それを活かせるかどうかは、企業次第。そしてもう一つ、あなた次第です。
語弊を恐れずに言えば、実力のある人ほど裁量労働制のメリットを受けられます。しかし新人や実力のない人にとっては、企業次第で劣悪な環境に身を置くことになるかもしれません。
ひとまとめに「裁量労働制=悪」とは決めつけず、企業情報などをよく調べて、そして自身の能力を客観的に測って、働く場所を選んでくださいね。
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