前回の記事では日本の経済を牽引する大企業について解説しました。
その記事でも書きましたが、日本に337万以上ある企業のうち99.7%は中小企業に分類されます。
では、中小企業で働くのは負け組なのでしょうか。メリットはないのでしょうか。
そんなことはありませんよね。
今回はあまり知られていない中小企業ならではの特徴と魅力を紹介します!
ピンからキリまでさまざま!日本を支える中小企業を解説!
日本には現在、企業が約337.5万社約336.5万社は中小企業です。
まずは前回のおさらいも兼ねて、中小企業を定義していきます。
中小企業の定義をかんたんに紹介!
中小企業経営規模が中小規模の企業を指します。
そうなんです。あくまでも経営規模の話であって、知名度や影響力、存在感などの分類ではありません。
では、経営規模は何で判断するのか。中小企業基本法では、「資本金」と「従業員数」によって、分類しています。
【資本金】
まず、資本金については、下記に当てはまる企業が中小企業となります。
製造業その他……3億円以下
卸売業……1億円以下
小売業……5,000万円以下
サービス業……5,000万円以下
注意が必要なのは、業種によって金額が大きく異なることと、このあと紹介する従業員数も関わってくること。
ちなみに、法律が定める中小企業者の定義は、資本金と従業員数のうちどちらか一方を満たすこと。すべての中小企業がお金がないとは限りません。お忘れなく。
【従業員数①中小企業基本法】
ここに関しては、正社員だけではなくアルバイトやパートまで含めて、常時使用する人数で判断されます。
製造業その他……300人以下
卸売業……100人以下
小売業……50人以下
サービス業……100人以下
また、ここではより経営規模の小さい「小規模企業者」についても定義されています。以下の人数に当てはまる企業は、資本金にかかわらず小規模企業と定義されます。
製造業その他……20人以下
卸売業……5人以下
小売業……5人以下
サービス業……5人以下
【従業員数②厚生労働省】
もうひとつ。法律的な定義ではないものの、厚生労働省は各種統計を発表するうえで、下記のような分類をしています。
常用労働者1,000人以上……大企業
同100~999人……中企業
同10~99人……小企業
業種ごとに分けていないため法律の定義とズレることもありますが、1つの参考にしてください。
【上場の有無】
こちらは定義とは関係ありません。ですが、中小企業の経営者が自社を成長させるために、よく使われる手段です。
2022年4月に東京証券取引所(東証)の市場区分が再編され、グロース市場(旧:マザース市場)やTOKYO PRO Marketなど、中小企業がより上場しやすい市場形態となりました。
上場すれば資金調達がしやすくなり、ブランド力や知名度の向上が見込めます。またそれに伴い、優秀な人材を確保しやすくなることもメリットです。
新規上場や上場維持には労力もコストもかかりますが、それでもめざす企業が多いのは事実。会社選びの要素の1つとして、将来を含めた上場思考の有無をチェックするのもいいでしょう。
定義まとめ:従業員数が少ない分、小回りが利く中小企業!
知名度や社会的な信用は大企業に劣るものの、中小企業にもメリットは十分にあります。
特に業務のスピード感は、中小企業のほうが優れているケースがほとんど。大企業の場合、稟議や大勢いる株主の意向を取りまとめるのに苦労することもあります。しかし、中小企業は決裁が必要な仕事でもスピード感をもって取り組めます。
また従業員により幅広い仕事を任せることも、人によってはメリット。裁量権も大きい傾向があり、さまざまな仕事に責任をもって取り組みたい人は、中小企業の方が活躍しやすいでしょう。
中小企業で働くメリットとデメリット
日本企業の99.7%を占める中小企業。当然、労働者の多くが中小企業の従業員です。
ということは、中小企業で働くことにメリットもあるはずです。逆に、デメリットもあることでしょう。
それらを1つずつ解説していきます。
中小企業で働くメリット
メリットを紹介する前に、お断りしておきます。大企業とは異なり、中小企業は本当に多種多様です。
これから紹介する内容は「一般的にはこうだ」「平均するとこうだ」ということであり、すべての会社に当てはまるものではありません。
そこをご理解いただいたうえで、ご覧いただければ幸いです。
さまざまな業務を経験できる
先ほども少し書きましたが、ここに触れないわけにはいきません。
多くの中小企業では、1人の社員が複数のプロジェクトに参加します。また複数のポジションを掛け持ちすることも、めずらしくはありません。
これは、部署やポジションにより業務の内容が固定化されやすい大企業とは大きく異なるポイントです。
たくさんの仕事に携われる分、成長スピードも速くなりがち。さらに、実際の経験をもとに自分に合った仕事を見つけられることも魅力でしょう。
社内でのキャリアアップをめざすにしても、転職をするにしても、自分の特性を理解できていれば、失敗の可能性は低くなります。
出世や昇給のスピードが速い
近年は少しずつ変化しているものの、大企業は年功序列になりがちです。またライバルも多く、結果を出しても企業全体に与える影響は小さいため、出世しにくい環境が揃ってしまっています。
一方、中小企業では従業員の総数も少なく、経営規模も大企業と比べれば小さめ。そのため、結果が企業に与える影響は大きく、若手でも責任者に指名されやすい傾向にあります。
特にベンチャー企業やスタートアップ企業ではこの傾向がより顕著。年齢やポジションにかかわらず自分の力を試したい人にとっては、むしろ理想的な環境です。
業務の決定・実行スピードが速い
こちらも先ほど少し書きましたが、決定権を持つ役員や株主が多い大企業では、どうしても稟議に時間がかかってしまいます。
しかし、中小企業にはその特徴は当てはまりません。そのため顧客の声を大企業よりも早く反映できるメリットがあります。
世の中の流れに敏感に対応できる分、柔軟な発想を持っていれば、ビジネスチャンスをものにしやすい環境です。
アットホームな環境で働ける
転職サイトなどで「アットホーム」というと、ブラック企業を想像してしまう現代。しかし、中小企業の場合は、本当にアットホームな環境で働くことが可能です。
これは経営規模が小さく、現場と経営者層の距離が近いことが要因。同時に、部署同士の交流も盛んでコミュニケーションを取りやすく、人間関係の悩みを持ちにくいこともメリットです。
転勤・異動が少ない
全国に支社・支店を持つ大企業とは異なり、中小企業はそこまで多くの支社を持っていないケースがほとんど。当然、転勤の可能性も低くなります。
引っ越しを伴う異動となれば生活環境はすべて変化し、人によっては大きなストレスとなります。また家族に与える影響も大きいため、避けたいという方も多いでしょう。
中小企業で働くデメリット
中小企業にもメリットが多くあることがおわかりいただけたでしょうか。
もちろん、中小企業で働くデメリットも存在します。しかしそれは、大企業も同じ。メリットとデメリット双方を見比べてご自身に合った会社を探してください。
大企業よりは収入が少なめ
真っ先にデメリットとして挙げられるポイントでしょう。
厚生労働省の調査では、企業規模別の平均年収は下記のとおりです。
【男性】
大企業……386万7千円
中企業……341万6千円
小企業……319万8千円
【女性】
大企業……274万6千円
中企業……262万5千円
小企業……248万4千円
(出典:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」第4表)
これを見ると、特に勤続年数の長い男性には大きな差があると言わざるを得ません。
これにくわえ、福利厚生や手当の面でも中小企業は劣っていることも多く、退職金などを含めた生涯年収では、さらなる差がつく可能性もあります。
ただし、これはあくまで平均値。業界や業種、中小企業でも規模や売上など、さまざまな要素で変化します。もちろん、個人差が大きい部分でもあります。
年収を会社選びの重要ポイントに設定している方は、口コミサイトなどで志望企業の状況を調べることをおすすめします。
会社の将来性に不安がある
一般的に、中小企業は資金力に劣るとされます。そのため大企業と比較すると、景気の変動などにより倒産やリストラのリスクが高くなってしまいます。
ただし、現代は「終身雇用は終わった」という時代。大企業でもリストラを実施するところは多いのが実情です。
現時点の事業規模や資本金額などだけで判断せず、今後の見通しをチェックしておくことをおすすめします。
人手不足に陥りがち
長い歴史と豊富な人材育成経験により、社員への教育体制が整っている大企業に対して、中小企業は育成面でも遅れを取ることが多くあります。
さらに、知名度でも大企業に劣るため人材確保が難しく、人手不足に陥る可能性が高いのだとか。
限られた条件下で業務を回すがゆえに、メリット「業務の幅が広い」も産まれるわけですが、タイミングによっては残業過多になってしまうケースがあるかもしれません。
こちらも口コミサイトなどで実情をチェックしておきましょう。
まとめ:中小企業を一括りにせず、志望企業をチェックしよう!
大企業と同じく、中小企業にもメリットとデメリットがあります。そして、どちらで働くべきなのかというと、人それぞれで変わるとしか言えません。
特徴としては、中小企業は大企業以上に企業間の差が激しい傾向にあります。
中には、大企業以上の福利厚生を揃え、待遇面にも力を入れている企業も多く存在します。逆に、満足な給与や賞与を用意することすら困難な企業もあります。
いい中小企業を探せるか。悪い中小企業を避けられるか。その分岐点となるのは、事前の調査でしょう。
ただ、間違いなく言えることがあります。99.7%を占める中小企業を視野に入れれば、就職/転職の選択肢は大幅に増えます。
自分の実力を発揮したい。年齢や社歴にかかわらず、成果を正しく評価してほしい。そういう野心や実力を持っている人には、中小企業の方が向いているかもしれません。
また転勤を避けたい、世の中の流れをいち早く仕事に取り入れたい、などの希望も、中小企業の方がかなえやすいでしょう。
就職/転職活動で大切なのは、あなたの希望に沿う企業を選ぶこと。
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