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やりがい搾取とは? 陥りやすい人や業界・職場を解説!

前回は「社畜」という言葉を紹介しました。そして今回紹介するのは、その類義語ともいうべき「やりがい搾取」です。

搾取という言葉が入っていることからもわかるように、こちらもいい言葉ではありません

では、実際にはどんな言葉なのか。何が悪いのか。陥りやすい業界や職種はあるのか。そして、どんな人が搾取されやすいのか。

それらを分かりやすく紹介いたします。

熱意・意欲につけいる悪行!やりがい搾取の問題点!

やりがい搾取とは?
当サイトのコラムでも紹介されていましたが、2000年代に入ってから、仕事を重要視する人の割合は大きく下がっています

言葉を変えれば、“仕事にやりがいを感じている人”は年々減っているのでしょう。

それでも、仕事へのやりがいを感じながら、熱意をもって働いている人もいます。

そんな人たちの意欲や熱意を悪用し、いいように利用するのが「やりがい搾取」。とても許せるものではありません。

まずは「やりがい搾取」の問題点を正しく把握しましょう。

そもそも「やりがい」ってなに?

先述のとおり、人の熱意を悪用する「やりがい搾取」。それを避けるためにも、まずは日常的によく使う“やりがい”という言葉の意味を考えてみましょう

インターネット上の国語辞書であるgoo辞書によると、辞書上の表記「遣り甲斐」とはこんな意味だそうです。

そのことをするだけの価値と、それにともなう気持ちの張り。
出典:デジタル大辞泉(小学館)

引用元:goo辞書『遣り甲斐』

また同じくインターネット上の辞書、weblio辞書ではこのように説明されています。

事に当たる際の充足感や手応え、張り合い。
出典:実用日本語表現辞典

引用元:weblio辞書『やり甲斐』

両方を合わせて考えると、ものごとに対して意欲的に取り組める状態が、「やりがい」を感じているということ。

そして、当然のことではありますが、仕事に対してやりがいを感られることは、とてもいいことです。

要注意!「やりがい搾取」は年々増加中!

しかし、その熱意を悪用する企業が明らかに増加しています。

令和5年度のデータだと、労働基準監督署による監督指導が行われた事業所26,117カ所のうち、なんと44.5%にあたる11,610事業所で違法な時間外労働が行われていたそうです。

(ちなみに前年度は42.6%、令和3年度は34.3%。)

また「サービス残業」と呼ばれる、賃金不払残業も、7.0%の事業所で確認できたとのこと。

このように、年々増加している「やりがい搾取」の被害に遭わないためにも、問題点を正しく認識しましょう。

有給休暇は正当な権利です!「やりがい搾取」の具体例!

多くの場合、「やりがい搾取」の典型例とされるのは下記の3つです。

・過剰な残業の強制
・有給休暇の拒否
・正当な賃金の不払い

具体的な行為なので、かんたんにですが1つずつ解説します。

具体例①過剰な残業の強制

前回の記事「社畜とは?」でも解説したとおり、残業時間には上限が設定されています。

その数値は「月45時間まで」、かつ「年間360時間まで」です。

1カ月あたりの平均出勤日数は19.5日ですから、1日平均2時間20分を超える場合、違法となる恐れがあります(例外あり)。

体調不良などによる臨時的な人員不足の危険性を考えれば、本来、平均残業時間は1日2時間以下であるべきです。

頻繁に2時間を超える残業を(事実上)強制されている場合、「やりがい搾取」になっていないか注意が必要です。

具体例②有給休暇の拒否

この記事を読んでくださっている方の中には、有給休暇を思いどおりに取得できないと悩んでいる方もいるかもしれません。

しかし、有給休暇は労働者に与えられた正当な権利です。ごく一部の特例を除いて、企業側は拒否できません。

ちなみにこれは、どんな理由であれ拒否できません。そもそも、本来は理由を伝える必要もありません。

それでも、「やりがい搾取」を意図的に行っている企業では、申請の際に理由の記載を強要し、なにかしらの理由をつけて取得させないようにしています。

いい仕事をするには、いい休養が必要です。それを理解していない会社にお勤めの方は、転職などの対策を講じる必要があるでしょう。

具体例③正当な賃金の不払い

どんな企業にも繁忙期は存在します。その期間中は普段よりも残業が増える、休日出勤が発生するなどもあるでしょう。

しかし、労働に対して正当な賃金を支払わない場合は、話が異なります

ここで特に注意したいのは、残業や休日出勤に伴う手当。前者は25%以上、後者は35%以上を割り増して支払う必要があります。また、残業が深夜(22時~翌朝5時)に及ぶ場合は、割増率は50%になります。

まったく支払われないのは論外ですが、これらの数値がきちんと守られているかにも注意してください。

フリーランスは特に危険!「やりがい搾取」されやすい業界・職種を紹介!

やりがい搾取されやすい業界
「やりがい搾取」はどの業界でも起こりえます。ただ、やはり“されやすい”業界や職種も存在します。

せっかく希望通りの業界・業種に就いたと思ったら、「やりがい搾取」の被害に遭った。

そんなことのないよう、事前にしっかりと把握しておいてください。

「やりがい搾取」されやすい業界5選!

ジョブリットメディア編集部が「やりがい搾取」されやすい業界に認定したのは、下記の5つです。

念のため書いておきますが、これらの業界への就職を避けましょうということではありません。当然ですが、これらの業界でもほとんどの会社は、真っ当に運営しています

そちらをしっかりと把握したうえで、以下をご覧ください。

【やりがい搾取されやすい業界】
(ジョブリットメディア編集部調べ)
福祉・介護業界
保育・教育業界
IT・メディア業界
ゲーム・アニメ業界
飲食業界

ここからは業界ごとに「やりがい搾取」されやすい理由を解説します。

福祉・介護業界

なぜ福祉・介護業界は「やりがい搾取」に陥りやすいのか。それは、慢性的な人手不足に悩んでいるからです。

そのため、労働者1人ひとりにかかる負荷が高くなり、残業や休日出勤が発生しやすくなっています

保育・教育業界

こちらも同じく人手不足が深刻化している業界です。

また、労働者が高い使命感を持っているケースが多いことも、「やりがい搾取」を生みやすい要因にもなっているでしょう。

子どもが好きで保育士になった。そう言えることはすばらしいのですが、その気持ちを悪用されないよう注意してください。

IT・メディア業界

こちらは“好きな人以外が飛び込んでこない業界”という特徴から、「やりがい搾取」を生みやすくなっています

また、どちらもパソコンさえあれば場所を問わずに作業できる職種が多い業界。単に残業が長いだけではなく、帰宅後や休日にも仕事から離れられないというケースも頻繁に見受けられます。

ゲーム・アニメ業界

IT・メディア業界と同じく、こちらも趣味が高じて就職した結果、その意欲を悪用されやすい業界。

さらに、これらの業界は“納期”がはっきりと決まっていることも要因の1つ。残業が増えやすい環境と、徹夜さえいとわない熱意。双方が共存するのがこの業界の特徴です。

飲食業界

こちらは、これまでに紹介した業界とは違う特徴を持っています。

上の4業界は、どちらかというと若手や役職を持たない一般スタッフが搾取されやすいのに対して、飲食業界で危険なのは店長などの役職者です。

飲食業界ではアルバイト、パートスタッフへの依存度が高いため、急な休みなどが重なると、役職者をはじめとする社員への負担が増大してしまいます。

特にチェーン店や商業施設内の店舗では、人手不足による休業はほぼ不可能。不測の事態が起きないよう、人材の確保や急な欠勤に対する善後策を講じておく必要があります。

「やりがい搾取」されやすい職種3選!

続いては「やりがい搾取」されやすい職種をご紹介。これらの職種は業界にかかわらず、過剰労働が発生しやすい特徴をもっています。

ただし、こちらもあくまで“されやすい”というだけ。ほとんどの企業は法律や常識を守っていることは、お忘れなく。

【やりがい搾取されやすい業界】
(ジョブリットメディア編集部調べ)
サービス業・接客業
営業職
各種クリエイター

サービス業・販売業

ここで紹介するのは、すでに解説した飲食業界のことではありません。個人に売上ノルマが課される販売業のことです。

そもそもノルマがある仕事はワーカホリック(労働中毒者)を生み出しやすい特徴があります。ノルマをクリアした際に達成感を得られるからです。

何度も書きますが、やりがいを感じて働くことは悪いことではありません。むしろ社会人の理想です。

しかし、自分が「やりがい搾取」に該当しないか、ときどき振り返ってみる必要はあるでしょう。

営業職

こちらもノルマを課されがちな職種の代表例。達成感を悪用されやすいという意味では、販売業と同じ特徴を持っています。

もうひとつ、営業職ならではの特徴は、お客様の都合に振り回されやすいことと、それを“当たり前だと感じやすい”こと。

お客様の都合で終業後や土日に訪問することもあるでしょう。それ自体を「搾取」だとは言いません。ただし、あまりに頻発するようであれば、会社と一緒に対応策を考える必要がありそうです。

各種クリエイター

もっとも「やりがい搾取」されやすい職種。それはデザイナーやイラストレーター、アニメーターなどのクリエイターです。

趣味の延長として仕事に就く人が多く、業務量が多くても苦に感じにくい特徴があります。

また予算や納期に限りがあることから、長時間労働にもかかわらず低賃金で働かされてしまうこともあります。

さらに問題なのが、先輩社員のほとんどがそれを“乗り越えてきた”という事実。そのため相談しても「昔はもっとひどかった」と言われて終わってしまうこともあります。

自身が望んで就職しているため、転職や退職を考える人は少ないでしょう。しかし、磨いてきたスキルを正しく評価してくれる会社を探すことも、ときには必要かもしれません。

こんな人は要注意!「やりがい搾取」されやすい人の特徴!

やりがい搾取をされやすい人の特徴
熱意のある人ほど、損をする。そのことはここまででお分かりいただけたと思います。

しかし、「やりがい搾取」されるのは、必ずしも意欲や熱意のある人だけではありません。

最後にどんな人が被害に遭いやすいのかを解説します。

これらの項目に複数当てはまる方は、ぜひ友人や家族からどう見えているか、確認してみてください。

あなたはいくつ当てはまる?やりがい搾取チェックリスト

あなたが「やりがい搾取」の被害に遭っていないかを簡易的にチェックするために、リストを作成しました。

素直な気持ちで回答してみてください。

【やりがい搾取チェックリスト】
□仕事が終わらなければ残業は仕方ない
□仕事が終わらないのは自分の能力不足が原因だ
□能力不足で残業しているのだからサービス残業も当然だ
□誰かが休んだら残業してでも自分がフォローする
□トラブルがあれば休日出勤も当然だ
□自分で選んだ仕事だから給料が低くても仕方ない
□多少の体調不良でも出勤するのは社会人として当然だ
□有給休暇を取得できないが会社も大変だから仕方ない
□上司が新人の意見を聞き入れないのは彼の能力不足が原因だ
□頻繁に上司から仕事を任されるのは期待の表れだ

皆さん、いくつ当てはまりましたか?

正直な話、1つでも当てはまったなら、被害に遭わないように注意が必要です

一見、どれも正しそうに見えるかもしれません。しかし、これらはすべて「やりがい搾取」を目論む企業側の“詭弁”なのです。

また、あなたが当てはまらなくても、会社が上記のような社風を持っている場合も注意が必要です。そもそも「やりがい搾取」の問題は、被害を受けている本人が「搾取」を自覚していないケースが多いからです。

それらを踏まえたうえで、どんな人が被害に遭いやすいかを見ていきましょう。

初めて正社員になった若者/第二新卒者

社会経験の乏しい若者は、経験豊富な上司・先輩の言葉をそのまま信じてしまう傾向にあります。

また、労働基準法を詳しく理解している方も少ないでしょう。もし、ある程度知っていても「社会ではこれが当たり前だよ」と言われてしまうと、反論も難しいでしょう。

さらに、同年代の友人たちに相談しても「ウチも同じだよ」となってしまいがち。結果として、「やりがい搾取」に気づくのが遅れてしまいます

そうならないためにも、少しでも怪しいと思ったら、本記事を見直してみてください

「誰かの役に立つ」ことが好きな人

他人の役に立ちたい。そう思えることはあなたの長所です。その人柄ゆえに、周囲に人が集まることも多いでしょう。

しかし、その気持ちを悪用するのが「やりがい搾取」です。

他人を大切にするのと同じくらい、自分自身も大切にしてあげてください。

はっきり“NO”を言えない人

こちらも日本人の美徳といえる特徴です。しかし、本当にいやなこと、無理な場合はきっぱり断ることが大切です。

「NO」を伝えることで、依頼してきた人との関係悪化や上司からの評価の低下を心配するかもしれません。しかし真っ当な企業なら、そんな理由で低評価を下すことはありえません。

疲れを感じていたり、すでに予定が入っていたりする場合は、理由とともにはっきりと断りましょう

転職したての人/学歴やキャリアに自信のない人

これらの人は、つい「がんばっている姿を見せよう」と思いがち。もちろん、まったく悪いことではありません。ただし、それにも限度があるはずです。

がんばることは大切ですが、がんばりすぎないことも大切

その気持ちは忘れずに、しっかりと休養を取りながら、自身のめざす目標に向かって進んでください。

各種休職/休暇からの復職者

出産、育児、介護など、近年は休職体制を整えている企業も増えてきました。これ自体もいいことです。

しかし、その恩義があるからか、復職者は必要以上の業務量を断りにくい傾向にあります。

特に注意していただきたいのは子育てや介護と仕事を両立している方

子どもや親のためにも辞められない。そんな気持ちから過剰労働を受け入れてしまうケースが目立つため、注意が必要です。

まとめ:スキルに対して正当な報酬を得るのが社会人です!

業務に応じて手当をもらうのは当たり前!
いかがでしょうか。ご自身は「やりがい搾取」されていないと断言できますか?

会社から給与をもらって仕事をしているなら、年齢やキャリアを問わずみんな“プロ”です。

そしてプロである以上、がんばって働くのも成長をめざすのも当然です。

しかし、忘れないでください。

自身が任された仕事量に対して正当な報酬を得ることも、プロとして当然です。

繰り返しますが、「やりがい搾取」は意欲のある人ほど被害に遭いやすいものです。しかも被害者は「やりがい」を感じているため、自分自身では判断できません。

少しでも「あれ?」と思うことがあれば、本記事を読み直してください。また、友人や知人、社会経験豊富な両親などに相談してください。

そしてもし、被害に遭っていると感じたら。

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善意につけこむ「やりがい搾取」に要注意!
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