いきなりですが、ちょっと衝撃的なニュースを見ましてね。
いや、違うかもしれません。もしかしたら、“ぼく”がおじさんだから知らなかっただけで、令和を生きる若い“あなた”には当然のことかもしれません。
でも、びっくりしちゃった以上、書くことにしますね。
皆さん、上司代行サービスってご存じですか?
まず、衝撃を受けた記事をご覧いただき、そのあと、このコラムを読んでいただければ幸いです。
マネー現代:若手社員の8割近くが「管理職になりたくない」…リーダーが育ちにくい時代の「上司代行」の可能性
「上司代行」という言葉をご存知だろうか? その名の通り、第三者が上司の役割を担うことを指す。なぜ上司までをわざわざ外部か…
記事を読んで感じた2つの疑問
時間のない方もいるでしょうから、内容をかんたんに要約しましょう。
・若手社員の約8割が、管理職になりたくないと思っている
・会社側は、ミドルマネジメント層が不足している
・未来のリーダーを育成する「上司代行」サービスが人気になっている
つまり、管理職になりたがらない若者が増えたせいで、ミドルマネジメント、要は部長や課長あたりが足りない。そのせいか社外から優秀な人材を呼んで、未来のリーダー育成を任せる会社が増えているんだそうです。
これは、あくまでぼくの個人的な意見ですよ。管理職になりたがらない若手の気持ちは、まあ分かります。やったことないと不安でしょうし。
そうなると当然、管理職が足りなくなります。ということは、その人たちは忙しくなるでしょう。若手育成に時間が取れなくなる場面もあるかもしれません。
ここまでのロジックは、ぼくの悪い頭でも理解できます。
ただね。だからといって社外の人に未来のリーダーを育成してもらおうという気持ちは、まったく理解できません。
ということで、問題を2つに分けて考えてみます。
若手の方へ:とりあえず、なっとけばいい!
管理職になりたくない若手が多い。そのことは、ぼくも実感として理解できています。
でも同時に、「もったいないなあ」という気持ちもあるんですよね。
だって、はっきり言って大したことないんですから。
一応言っておくと、ぼくにも管理職の経験はあります。その過去を振り返って考えてみましょう。
ぼくが経験した管理職
あくまで、ぼくの場合。出版社のWEBサイトを作る部署で、主任という役職に就いていたことがあります。
主任と聞くと、大したことなさそうですよね。
でも小さな会社だったから、上には(いろんな部署の)部長がいて、その上には取締役と社長しかいませんでした。
ぼくは真っ当な会社のことは詳しくありませんが、課長あたりに相当しそうな気もします。だから、ぎりぎりミドルマネジメントと言えなくもない。そう信じ込んで書き進めます。
じゃあ、ぼくはそこで何をしていたかというと……特別なことは何もしていません。
役職なしの編集部員時代と変わったのは、会議が増えたことと、見積りや請求書の作成をやらされるようになったくらいでしょうか。
一応、部下もいましたよ。でも、ぼくはバカなので、後輩と部下の違いがわからないんです。相手が別部署の後輩でも聞かれたら答えるし、相手が部下でも聞かれなきゃ出しゃばったりしません。正直、接し方という部分では部下も後輩も変わりませんでしたね。
あ、もう一つ、違いがありました。ボーナスの査定項目は変わりましたね。
役職のないときは、自分の成果だけが評価対象でした。でも、役職がつくと、部下たちの成果に比重が置かれるんですよね。幸い、ぼくは特に大きなマイナスを味わったことはないですけど。
だからね、そんなに重く考えなくて大丈夫ですよ。デメリットなんて、特になかったもん。
その割に、メリットはしっかりありましたからね。
管理職のいいところ
まずね、給料が上がります。大した金額じゃないけど、上がらないよりは上がったほうがいいに決まってます(笑)。
とはいっても、普段の給料に大きな変化はありません。役職に応じた手当が数万円(記憶では月2万円)付くだけですから。でもね、ボーナスは結構変わりましたよ。ベースとなる金額がそこそこアップしたので。
仕事内容はそれほど変わらず、もらえるお金は増える。個人的には大満足でした。
あともうひとつ、めちゃくちゃ大きいメリットがあります。それは、転職に有利になること。
特にね、30歳を超えてからの転職だと、役職経験の有無で難易度が大きく変わります。
経験上、これは間違いないですね。
なにがいいって、一度でも役職に就いておけば、直近の会社で役職がなくても評価してもらいやすいんです。
今って、転職が当たり前の時代じゃないですか。
そこで間違いなく有利になるポイントですから、なっておいて損はないと思うんですけどね。
ネットで調べたデメリット
この章で書くことは、ぼくの経験談ではありません。「なぜ若者が管理職をいやがるのか」をネットで調べたときに目についた要素です。
さらに言うなら、これから紹介することはすべて、ぼく自身は味わったことありません。
まず、若者は管理職に対して「忙しい」、「つらい」というイメージを持っているみたいです。
でも、多分だけど、あんまり変わらないですよ。少なくとも、ぼくは変わりませんでした。出版社が元から死ぬほど忙しいだけかもしれませんが(笑)。
次に目についたのは、「セクハラ・パワハラが怖い」というもの。今の時代っぽいですね。
でもね、これはもっと関係ないと思います。だって、上司にならなくても時間が経てば先輩になり、後輩が増えていきます。同時にセクハラ・パワハラの恐怖は勝手についてきちゃいます。
どうせ、その恐怖からは逃げられません。それならば、管理職になってお金をもらっておいた方が得だと思います。
あと、「自分には適性がない」と感じている人も多いみたいです。
これは、ぼくにもちょっと分かります。ぼくに管理職が向いてるわけないもん。
でもね、昔から立場が人を育てるっていうじゃないですか。やってみて、ダメならやめる。そのくらいでいいと思いますよ。
最後に、「プライベートを犠牲にしたくない」という人もいます。
でもさ、これって逆じゃないですかね? むしろ、仕事を断りにくい下っ端のほうが、プライベートとの両立がむずかしい気がします。管理職になれば、仕事のペースはある程度、自分でコントロールできるようになりますよ。
若いあなたに伝えたいこと
トップマネジメントになるというのなら、話は違うと思います。当時の出版社で言うと、名称は忘れたけどちょっと偉い部長とか、あと取締役とか。つまり、幹部とか上層部と呼ばれるポジションなら別です。
でも主任とか係長とか課長くらいなら、とりあえずなっちゃえばいいと思います。
一回、経験しておけば転職で有利になる。それに年収も社会的信用度も上がります。
そのくらい、軽い気持ちでいいんじゃないかな。さっきも書いたけど、やってみて嫌だったら辞めればいいだけですし。
皆さん、深く考えずに管理職を引き受けてみてくださいね。
会社へ:変える順番を間違えてませんか?
ぼくね、どうしても理解できないことがあるんです。それが、記事のこの部分です。
(前略)しかし、大企業となった今の会社には、失敗が許されない空気感や、前例の踏襲の連続など、新たな挑戦ができない雰囲気が確立されてしまっていました。
そこで、挑戦や失敗ができる場づくりのために、上司代行を導入したのです(後略)
何度読んでも、腑に落ちません。
失敗が許されない空気感、前例の踏襲、新たな挑戦ができない雰囲気。これは真っ当な世界で働いた経験のないぼくでも想像できます。
ただね、それを上司代行で解消できるとはまったく思えないんです。
今の管理職の意識を変えればいいだけでは?
その会社の雰囲気に飲まれていない外部の人間が、若手に社風にないことを教える。それ自体は、効果があるでしょう。
でも、若手が挑戦・失敗できるようになったところで、管理職が変わらなければ意味がないですよね。すぐに挑戦・失敗を恐れるようになります。なんだったら、一度試してからあきらめる分、より深刻になるんじゃないかな。
要するにね、変える順番がおかしいんですよ。
最初に変えなきゃいけないのは、管理職を含む上層部の意識だと思います。彼らが変わらないと、挑戦・失敗をできる環境なんて作れるはずがないんだから。
それプラス、いちばん大事なこと。もし、上層部が変わったら、という場合ね。
その上層部が若手に挑戦・失敗を促せばいいだけでしょう。
敢えて、お金を払って外部から上司代行なんか雇う必要ないじゃないですか。
「一般論」と「社内の理論」は違う
基本的にね、一般的に優秀だとされる上司像と、個々の会社に必要な上司像って、けっこう違うと思うんです。だって、部下や会社が抱える問題点なんて、千差万別ですから。
もちろん、その上司像が悪い風潮を作り上げる一因になっていることはあるでしょう。でも同時に、いいところもあるはずなんです。じゃないと、会社がうまく回らなかったはずですから。
悪いところは直す、いいところは残す。そんなこと、短期間だけ雇われた代行上司にできるんですかね?
それとも、あれですか。
敢えて言いますけど、“たかが”一般論だけで会社の雰囲気が劇的に変わるほど、多くの会社は根本的にダメな奴を上司にしちゃってるんですか?
そんな仮定のもとに話をすると、ぼくの会社が上司代行に頼ったら、その時点で「この会社には未来がない」と判断して転職活動を始めるでしょうね。間違いなく。
上司の立場は?
あと、やっぱり気になるのが、上司の立場ですよね。
だって、“一般的な”心構えを教えるためだけに、内情を何にも知らない外部の人にお金を払う。そんなのやられたら、上司はたまらないですよ。
普通の上司なら、それまでに教えてたことばっかりでしょうからね。
まあ、第三者に言われたからこそ、素直に聞けるっていうのはあると思います。
でもそれって、上司に対してバイアスかかってますよって言ってるようなものですし。
そりゃあ、中にはいるんでしょう。酷い上司って奴も。
でも、ほとんどは違うと思います。相性こそあれ、平等に部下のことを考えている上司ばっかりですよ。だって、さっきも書いたけど、役職者になると部下の成果=自分の評価なんですから。
会社の実情を把握している第三者が必要なのでは?
ぼくはね、上司の立場も苦労もなんとなく分かります。同時に、若手が持つ不満・不安も分かります。
ところで。
たとえば、外国だとよくメンター制度を導入しています。メンターっていうのは、相談相手、指導者。そんな意味の英語ですね。
外部のメンターを会社で雇って、仕事・プライベートを問わず相談してもらう。そういうかたちなら十分に意味があると思います。
上司代行との違いは、その人を長期にわたって雇うという点。だからある程度、会社の実情や問題も分かっている人が多いです。
あと、あくまで相談相手だから、プライベートの質問とかもウエルカムなんですよ。そこも代行上司とは違いますね。上司の場合、基本は仕事に全振りでしょうから。
いくら長くかかわっていても、メンターはあくまで外部の人間です。当然、守秘義務もあります。誰がどんなことに悩んでいるか、報告されることはありません。
上司や管理職とは違う角度で、メンターならではの立ち位置から社員をサポートする。仕事だけじゃなく、悩み全般を聞いてくれる。
色んな意味で、こういった形を取ればいいんじゃないかな? と思うわけです。
まとめ:最終的には、組織全体が変わらないと無意味
全体的に上司代行に批判的になっちゃいましたけど、試みとしてはとても面白いと思います。
それに、前にも書いたと思いますが、必要なものだから流行るわけですからね。現代社会が抱える問題への解決策としては、間違ってもいないのでしょう。
でも、どうしても思っちゃうんですよ。
部下からのボトムアップを促すなら、上司や上層部が変わらなきゃいけない。
そして、上司や上層部が本当に変わったなら、もう上司代行は必要ない。
そう思っちゃうんです。
たしかに上司や上層部を変えるための劇薬としては、効果がありそうだなとは思います。ただ劇薬ですから、扱い方を間違えると危険ですけど。
とにかくね。
若手の皆さん、いい意味で、管理職なんて大したことないです。特に、課長くらいまでは。その割に、メリットは大きいです。だから、もしチャンスがあったら、一回やってみてください。
そして、会社が上司代行なんて使わなくてもいいような、若手の気持ちが分かる上司になってください!
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