前回は、年金や税金などお金にまつわる退職後の手続きと順番を解説しました。
仕事を辞めたあと、次の仕事が決まっていない場合、税金や年金など手続きが必要なものが多くあります。同時に、公的な手続きというと難しそうだと感じてしまう方もいるかもしれません。ここでは、特に「お金にまつわる制度」にフォーカスして[…]
その最後で紹介したとおり、今回は日本に数多くあるサポート体制を解説していきます。
長く働いた方であれば、それまでの貯金や退職金で、退職後すぐに生活に困ることはないかもしれません。
しかし、若い方や、倒産やリストラなどの会社都合で急に退職を余儀なくされた場合は、生活を維持するのが困難になってしまうかも。
皆さんは、日本では退職後にさまざまなサポートが受けられることをご存じですか?
申請するだけで○万円!?退職後にある手厚いサポート!
今回、紹介するサポート体制は、下記の6つ。
失業保険(雇用保険)
訓練延長給付
教育訓練受講給付金
育児休業給付金
住居確保給付金
名前から内容を想像できるものもあるでしょうが、1つひとつ解説していきます。
失業保険
正確には雇用保険の一部である「失業等給付」。紹介するサポート体制の中でも、もっとも知名度が高いかもしれません。
しかし、いつから、いくらもらえるのか、知っている人は少ないかもしれません。
前回もかんたんに解説しましたが、給付期間や金額は退職理由や前職の給与、年齢によって異なります。
いくらもらえる?
失業保険として受け取れる金額は、1日あたりの「基本手当日額」と給付日数によって決まります。
ちなみに基本手当日額は直近6カ月の月収と年齢で変化。計算式は省略しますが月収を日割りした金額の50~80%(60~64歳の場合は45~80%)で、日額が低いほど給付率が高く設定されます。
また、金額には下限と上限が設定されているので、極端に低い/高い金額にはなりません。
基本手当日額の下限と上限 | ||
年齢 | 下限 | 上限 |
29歳以下 | 2,295円 | 7,065円 |
30~44歳 | 7,845円 | |
45~59歳 | 8,635円 | |
60~64歳 | 7,420円 |
もうひとつ、賃金日額も解説しましょう。こちらは
という計算式で算出できます。対象となるのは月給のみで、賞与などは含まれません。
何日分もらえる?
実際にもらえる金額は、
という計算式で算出されます。
給付日数は、被保険者であった期間によって決定。ただし倒産やリストラなどの会社都合で退職した場合は優遇されるほか、年齢によっても期間が変わります。
[自己都合退職の場合]
10年未満…90日
10年以上~20年未満…120日
20年以上…150日
[会社都合退職・30歳未満]
1年未満…90日
1年以上~5年未満…90日
5年以上~10年未満…120日
10年以上~20年未満…180日
[会社都合退職・30~34歳]
1年未満…90日
1年以上~5年未満…120日
5年以上~10年未満…180日
10年以上~20年未満…210日
20年以上…240日
[会社都合退職・35~44歳]
1年未満…90日
1年以上~5年未満…150日
5年以上~10年未満…180日
10年以上~20年未満…240日
20年以上…270日
[会社都合退職・45~59歳]
1年未満…90日
1年以上~5年未満…180日
5年以上~10年未満…240日
10年以上~20年未満…270日
20年以上…330日
[会社都合退職・60~64歳]
1年未満…90日
1年以上~5年未満…150日
5年以上~10年未満…180日
10年以上~20年未満…210日
20年以上…240日
いつからもらえる?
実際に支給されるのは、ハローワークへ離職票の提出と求職の申し込みを行った「受給資格決定日」から、さらに待期期間という決められた日数を過ぎたあと。
この期間は、やはり退職理由によって変化します。
会社都合退職…7日
自己都合退職…7日+2カ月
※過去5年間で2回以上、自己都合により退職した方は7日+3カ月
ただし自己都合退職でも、やむを得ない理由により退職した「特定理由離職者」は、会社都合の場合と同様に待期期間は7日となります。
・体力の不足や障害・疾病など、身体の不調による退職
・妊娠、出産、育児等のための退職
・父母の扶養や看護など、家庭の事情の急変による退職
・配偶者や扶養親族と別居生活を続けることが困難になったことによる退職
・結婚による転居や会社の移転など、通勤が困難になったことによる退職
・希望退職者の募集に応じた退職
また、2025年4月に行われる雇用保険の法改正にともない、自己都合退職による待期期間が1カ月に短縮されます。さらに教育訓練を行えば待期期間もなくなるなど、うれしい変化が待っています。
訓練延長給付
詳しくは後述しますが、ハローワークが行っている職業訓練を受講することで、失業保険の給付を延長することができます。
こちらの条件は以下のとおり。
・ハローワークで職業訓練を受ける
・所定給付日数の2/3を終了する前に、職業訓練を開始する
・受講期間が2年以内のコースを受講する
・過去1年以内に公共職業訓練を受講していない
職業訓練とは
キャリアアップや転職に役立つ知識・スキルを身に付けるために行う就職支援制度。それが職業訓練です。
テキストなどの実費を除き、職業訓練は無料で受講できます。また、本当にさまざまなプログラムが用意されていますので、ご自身の望むキャリアプランに沿ったものを選ぶことができるでしょう。
いくらもらえる?
「延長給付」という名称からも想像できるとおり、もらえる金額は失業保険と同額です。
いつまでもらえる?
給付期間は、受講する講座が終了するまで。
では、実際にいくら増額されるのか、計算してみましょう。
※基本手当日額6,000円、給付日数90日
残り40日から180日の講座を受講した場合
延長日数…140日
増額分…6,000円×140日=84万円
手当日額が高かったり、講座の期間が長い場合には、100万円を超えることも。
スキルアップを実現しながら、これほどの給付を受けられる制度。
必要な方はぜひ、ハローワークで申請して活用してください。
職業訓練受講給付金
失業保険の給付期間が終わった方も、求職者支援訓練を受講することで給付金を受け取ることができます。
求職者支援訓練の期間は2カ月~6カ月で、職業訓練と同じく事務系や語学系などさまざまなプログラムが用意されているので、お好みのものを選びましょう。
いくらもらえる?
職業訓練受講給付金は3つの手当で構成されています。
その手当と金額は下記のとおり。
職業訓練受講手当…月額10万円
通所手当…上限42,500円
寄宿手当…月額10,700円
通所手当はいわゆる交通費のこと。居住地から訓練を行う施設までの最短かつ最安料金が支給されます。
また寄宿手当は、受講のために家族と別居する場合に支給される手当。
これら2つは該当者のみの支給となることは覚えておいてください。
いつまでもらえる?
給付期間は訓練の開始から終了まで。
求職者支援訓練の「基礎コース」は2~4カ月、「実践コース」は3~6カ月なので、最長は6カ月となります。
誰がもらえる?
スキルアップをめざしながら給付金をもらえるありがたい制度ですが、誰でももらえるわけではありません。下記をすべて満たした場合のみ、給付を受けることができます。
・本人の収入が月8万円以下
・世帯全体の収入が月30万円以下
・世帯全体の金融資産が300万円以下
・現在の居住地以外に、土地や建物を所有していない
・すべての訓練実施日に出席する
※やむを得ない場合があっても、対象期間の8割以上に出席している
・同世帯に同時にこの給付金を受給している人がいない
・過去3年以内に、不正行為により特定の給付金の支給を受けていない
もっとも問題になるのは、2番め。事実上、家族の扶養に入っている場合は給付できない可能性が高いということです。
育児休業給付金
名前からも想像できるとおり、子どもを養育するために育児休業を取得した場合は、「育休手当」を受け取ることができます。
育休中は給与が少なくなったり、無給になってしまうこともあるため、育休手当を上手に活用しましょう。
誰がもらえる?
育休手当の対象者は、雇用保険の被保険者です。働いていた場合でも、家族の扶養に入っていた場合は受け取ることができません。
また、勤務日数などいくつかの要件が定められています。
・1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した被保険者
・休業開始日の前の2年間で、賃金支払い基礎日数が11日以上ある月が12カ月以上ある
・支給単位期間中の就業日数が10日以下、または終業時間が80時間以下
いつまでもらえる?
育休手当は子どもが1歳になる誕生日の前日まで支給されます。
ただし、1歳になる前に復職した場合は、復帰日の前日までとなります。
もうひとつ、気になるポイントは1歳になっても保育園が見つからない場合。
「認可保育所への申し込みを行っているが、入所できない」ときは、必要書類を提出することで最長2歳の誕生日の前日まで育休手当の給付を受けることができます。
いくらもらえる?
育休手当の支給金額は、休業開始時の賃金によって変わります。失業保険ほど細かい計算はないので、どなたもある程度正確にシミュレーションできるでしょう。
とてもかんたんに言うならば、下記のとおりです。
180日まで…給与の67%
181日以降…給与の50%
つまり、月給30万円の人であれば、最初の半年は20万円、その後の半年は15万円ほどとなります。
より詳しく知りたい方は、ハローワークの資料をご覧ください。
住居確保給付金
退職や倒産などで収入が減少し、家賃の支払いが困難になった方を支える制度が住居確保給付金。平たく言えば、家賃の補助を受けることができます。
こちらはさまざまな条件がありますので、できるだけかんたんに解説します。
誰がもらえるの?
本給付金を受給するには、さまざまな要件を満たさなければなりません。
すべてを紹介すると複雑になってしまうため、本記事では1人暮らし(1人世帯)のケースをご紹介いたします。
・退職後、2年以内
・賃貸物件に住んでいる
つまり、持ち家のある人が住宅ローンの返済のために本制度を利用することはできません。
また、上記にくわえて収入、資産、求職活動等、、3つの要件をすべて満たす必要があります。
[収入要件]
・直近の月の世帯収入が「基準額(※)と家賃の合計」以内であること
※基準額は各自治体によって異なりますが、8万円前後です
※くわしくはお住まいの自治体のホームページでご確認ください
[資産要件]
・世帯の預貯金が「基準額の6倍」以内、かつ100万円以内であること
[求職活動等要件]
・ハローワークで月2回以上の職業相談、もしくは自治体で月4回以上の面接支援を受けていること
住居確保給付金のいいところは、規定以下であれば、アルバイトなどで収入を得ていても家賃補助が受けられること。
ちなみに、資産要件には基準額によって変わりますが、おおよそ50万円前後と捉えておいてください。
いくらもらえるの?
住居確保給付金は、住んでいる賃貸物件の家賃と同額が支給されます。
ただし、住んでいる市区町村ごとに上限額が決められていますので、必ずしも家賃全額が支給されるわけではありません。
地域ごとの上限額は、各市区町村のホームページでご確認するしかありませんが、関東・都心部の上限額を例として掲載しておきます。
東京都港区…69,800円
神奈川県横浜市…52,000円
埼玉県さいたま市…45,000円
このように、家賃の上限は基準額以上に大きな差があります。
また、繰り返しますが、上記はあくまで1人暮らし(1人世帯)の場合。世帯人数が増えるほど、上限額は上がります。
いつまでもらえるの?
住居確保給付金の支給期間は原則3カ月。金額とは異なり、支給期間に市区町村による違いはありません。
ただし、3カ月の間にハローワークでの求職活動を誠実に行っていた場合は、2回まで延長が可能。つまり、原則3カ月最長期間は9カ月となります。
まとめ:制度を使って安心して再就職をめざそう!
急ぐあまり本来の希望とは異なる企業に入社したり、焦りから面接で上手く受け答えできなかったりと、お金に余裕がないと就職活動に大きな影響を与えてしまいます。
これらの制度を上手に活用して、本来の希望を叶えてください。
また、困ったこと・分からないことがあれば、お近くのハローワークで相談するのをおすすめします。
所員の皆さんは、多くの求職希望者と触れ合ってきたプロ中のプロ。皆さんの希望や現状に沿った制度・訓練を紹介してもらえます。
最後に、『ジョブリット』には学歴・経験不問の求人が多数、掲載されています。
ハローワークでの仕事探しと並行して、こちらもぜひご活用ください!
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