昔、むかしの話です。
当たり前のことですが、今では“おじさん”になった“ぼく”にも新入社員だった時代がありました。
そしてそのころ、よく言われたものです。
「怒られるのも、仕事のうちだよ」
「怒るのも愛情のうちだから」
「怒ってもらえるだけ、感謝しなきゃ」
当時の本音を書くと、反発する/納得いかない、ではなくて、言葉の意味が分かるような分からないような感じで、妙にもやもやしたことを覚えています。
あれから20年以上が経ち、ぼくもある程度年を取りました。同時にキャリアも積んでしまい、部下(今はいないけど)や後輩に対してある程度指導的なことをしなきゃいけないこともあります。
そこで、こんなことを考えました。
「怒る」と「叱る」の違いってなんでしょう?
あなたはどれを選ぶ? 怒ると叱るの違い3説!
「怒る」と「叱る」。この違いを知るのはかんたんですよね。いつものようにWikipedia先生や国語辞典様を調べて定義づければいいんです。
ですが、今回はその前にまず、ぼくが感覚的に「こういう違いじゃないか?」と思うものを書いてみます。
といっても、きわめてシンプルです。
怒る…ダメなところ、気に食わないところを感情的に注意する
叱る…理論だててダメなところを注意する
要するに、感情的に注意するのが「怒る」で、理論的に注意するのが「叱る」。そんな感じじゃないかなと思っています。
皆さんはいかがですかね?
怒るってどういう意味?
さて、ここからはインターネット上で調べられる国語辞典から、それぞれの言葉の意味を調べてみましょう。
まずは「怒る」からチェックしてみます。
ちなみに、引用元はインターネット上の「goo辞書」さんですが、どうやらgoo辞書自体、小学館が発行している大辞泉のデジタル版からの引用みたいですね。
おこ・る【怒る】 の解説
1 不満・不快なことがあって、がまんできない気持ちを表す。腹を立てる。いかる。
2 よくない言動を強くとがめる。しかる。
引用:goo辞書『怒る』
お、これはぼくの感覚と大きくずれてはいませんね。
ただ、2つめの意味を見ると、感情だけではなく“強弱”も関わってくるのかもしれません。
そして、お気づきでしょうか? 2つめの最後に「しかる」とありますね……。もしかしてこれ、まるっと同じ意味なのでは?
やばいです。このままだとこのコラムが成り立たない可能性があります。
叱るってどんな意味?
とめどない不安に駆られつつも、お次は「叱る」について。潔く、こちらも「goo辞書」さんから引用します。
しか・る【る/×呵る】 の解説
目下の者の言動のよくない点などを指摘して、強くとがめる。
引用:goo辞書『叱る』
やっぱり「怒る」とほとんど変わらないですね…。
一応、“叱る”には「よくない点を指摘」とあるので、“怒る”の「不満・不快なこと」や「よくない言動」よりはわずかながらも理論的かもしれません。
いや、やっぱり大差ないですね。
なにより、唯一の違いかもと期待した「強弱が違う」可能性も、一瞬のうちに消える始末。
ま、いいか。想定どおりにいかないのもライブの魅力ですよね。ね!
(“ぼく”は一般的に必要とされる下調べやプロット作成を一切行わずにコラムを書いています)
困ったから“教育のプロ”に聞いてみよう
とはいえ、あまりに事前の想定と違いすぎるので、今度はインターネットで「怒る 叱る 違い」と検索してみました。
すると、ベネッセ教育総合研究所さんのコラム? 記事? が表示されました。
ベネッセさんと言えば『進研ゼミ』で有名な教育関係のトップランナー。いわば「教育のプロ」ですから、このテーマの調べ先としては最適ではないでしょうか。
ということで、下記記事から一部を(勝手に)引用させていただき、コラムを続けていきます。
ベネッセ教育情報『「叱る」と「怒る」はこんなにも違う?! 子どもの上手な叱り方』
プロが語る「怒る」と「叱る」の違い
早速ですが、本文から一部を引用いたします。
「怒る」と「叱る」は、このような違いがあります。
怒るは、感情的に自分のイライラや怒りをぶつけるもの。
叱るは、相手のためを思いアドバイスをしたり注意をしたりするもの。
要約するなら、「怒る」は自分本位、「叱る」が他人本位ということ。これはぼくの感覚とも、それからほぼ同じだという辞書の解釈とも少し違う見解ですね。
助かった! これでコラムを続けられる!(心の声)。
結局、どれが正しい?
ここまで3つの意見が出てきました。では、どれを信じればいいのでしょう?
正直、ぼくはベネッセさんの見解がいちばん正しいかなと思います。あ、念のために書いておくと、忖度ではありませんよ。
そもそも、感覚なんてあてになりません。しかも、それがぼくの感覚だったら当然、真っ先に消去すべきです。
辞書っていうのは、言葉「本来」の意味を解説するもの。そして、言葉の意味は時代によって変化していき、最終的には本来の用法から外れることもめずらしくありません。
もともとは辞書どおり大きな違いはなかったとしても、現代ではベネッセさんのような意味だと受け止める人が多いのではないでしょうか。
それにね、ぼくが昔言われたことと、「自分本位」っていうワードがぴったりなんですよ。
「怒るのも愛情」
もしそれが正しかったとしても、それは相手の一方的な感情でしかありませんからね。
正しい「叱り方」がわかりません
以前どこかのコラムで書いたような気もしますが、ぼくは怒ることがとても苦手です。
いや、一般生活は違いますよ。むしろ怒りっぽいです。この記事を書いている当日の朝、あからさまに迷惑停車をしている車を見て腹が立ち、(丁寧に)窓を叩いて文句を言っちゃったくらいですから。
でも、会社だと怒れないし叱れないんですよね。
注意をするということも「叱る」の一種であるとすれば、ごくたまにそういうこともあります。
でも、周りからは「“ぼく”くんは後輩(部下)に甘すぎる!」と叱られていたので、多分まったく足りてないんだと思います。
叱れない理由
ここでは叱れない理由を、ぼくと一般的なケースに分けて紹介します。
まず、ぼくが後輩や部下を叱れない理由はおおよそこんな感じです。
・自分に自信がない
・自分が言わなくても誰かが言うと思っている
・叱るタイミングがむずかしい
続いて、インターネットで調べた叱れない人の特徴は下記のようなものでした。
・嫌われたくない
・部下に辞められると困る
・正しい叱り方が分からない
この中から、言い訳や感想を書いていきます。
ぼくが叱れない理由について
ここは言い訳みたいなものなので、かんたんに。
まず「自分に自信がない」。これがほぼすべてみたいなもんです。
だって、ぼくごときが叱っても、「お前に言われたくねーよ」と思うことでしょう。それが当然です。
また、楽天家と言われることの多いぼくが気づくことなんて、すでに他の人から注意されているかもしれません。同じことを2度、3度注意されたら、逆効果にしかなりませんよね。
タイミングが分からないというのも、同じ理由です。
一般的な理由:辞められると困る
いやあ、なんとも悲しい理由ですね。このたった8文字に、部長や課長など、ミドルマネジメント層の悲哀が詰まっています。
これはきっとあれですよね。人手不足もあるでしょうけど、後輩や部下が退職するとさらなる上長から怒られちゃうのかな。
今は転職が当たり前の時代なんだから、退職自体は仕方ないはず。
でも、平均年齢が高いであろうトップマネジメント層には、それが分かっていないのかもしれません。
一般的な理由:正しい叱り方が分からない
あ、これはぼくにもよーーーく分かります。
もしかしたら、ぼくも完全に世間離れしているわけではないのかもしれませんね。
ということで、「正しい叱り方」を教育のプロことベネッセ大先生の記事から要約します。
必見!正しい叱り方5選
・その場ですぐに
・短くシンプルに
・目を見て低い声で
・余計なことを持ち出さない
・人格は否定しない
ちなみに。
記事タイトルからとっくに気づいていた方もいるかもしれませんが、これ、子どもへの叱り方を解説した記事です。
でも、会社でもほぼこのまま流用できる気がしますね。
一般的な理由:嫌われたくない
唯一、ぼくの感覚にはないことだったので最後に回しました。
というのも、ぼくは嫌われることを一切、怖がりません。だって、好かれるポイントなんて1つもないぼくは、元から嫌われているに決まってますから(笑)。
だけど、逆に、ここだけはぼくからアドバイスできます。
ぼくが叱るときはどうしてる?
さっきも書きましたが、ぼくは会社にいるとき限定で、叱るのも怒るのも苦手です。
でも、いくらぼくでも部下に対して、たまには叱らなきゃいけないときはありました。年に3~4回くらいだったかなあ。もっと少なかったかも?
そんなとき、どうしてきたかをちょっと思い出してみましょう。
2人きりのときを狙う
ベネッセ大先生の言うこととちょっとずれますが、ぼくは「その場ですぐに」は叱りません。叱れません。
もちろんできるだけ早く、というのは心がけてますよ。じゃないと、ぼくが忘れちゃうし(笑)。
ぼくの場合、取材の帰り道やお昼休憩など、叱る相手と2人きりになったタイミングで話を始めます。
逆に言うと、取材でコンビを組む相棒か2人きりでご飯を食べに行くくらい親密な相手じゃないと、ぼくは叱らないということでもあります。
仲良くない奴のことなんて、ぼくには知ったこっちゃありませんからね。
ほら、ぼくに好かれるポイント、ないでしょう?(笑)
極力、短い時間で伝える
ここはベネッセ大先生のポイントを守れてましたね。ぼくが叱っている時間なんて、5分もないと思います。
お昼ご飯を食べながら、というケースを例にします。
叱り始めるのはオーダーをしたあと。
そして、食べ物が届くまでには必ず終わらせます。
だって、叱りながら食べてもおいしくないし、叱られてるほうも同じでしょうからね。
ただ、これを実践しようと思うと、「その場ですぐ叱る」ができないんですよ。短時間で終えようと思ったらある程度、事前のシミュレーションは欠かせません。
うーん、ベネッセ大先生のアドバイスをすべて守るのは、ぼくにはむずかしそうです。
自分の経験談を伝える
叱るときに必ず気を付けているのは、自分の感覚に頼った話はしないこと。ぼくは自分自身を一切、信用していないので、「こうしたら、こうなる」なんて予測は口が裂けても言えません。
ぼくが伝えるのは経験談。特に失敗談ですね。これだけは、他の人より圧倒的に大量にストックしていますから。まったく自慢になりませんね。
「俺も前にこんなことがあって、こうしたらこんな失敗に繋がった。だから気を付けたほうがいいよ」
これは近い状況のエピソードほど効果的だと思うので、豊富なストックの中からもっとも似ているものをチョイスするようにしています。
先輩たちの対策を教える
もう一度書きますが、ぼくは自分をまったく信用していません。
逆に言うと、先輩たちから教わった対処法のうち、ぼくごときが実践してうまくいったものは、ほぼ確実に万人に通用するすばらしい方法だということです。
だから、「前の会社に○○さんという人がいて、その人からこんな方法を教わったよ」と伝えます。
シンプルな話、叱るだけじゃ意味がないと思うんですよ。たとえそれが、本当に相手のことを想って、相手の立場で話したとしても。
ただ、こんな性格ですから、必ず最後にこう付け加えます。
「俺の言うことはあてにならないから、自分でいいと思う方法があったらそっちにしな。絶対、そっちのほうが正しいよ♪」
まとめ:怒るのは自分に余裕がないから?
ここまで書いてみて、ふと思いました。
怒るのって、自分に余裕がないからなんじゃないか。もしくは、承認欲求が強すぎるんじゃないか。
自分本位な感情をぶつけるなんて、相手がもっとも親しい(はず)の家族でも嫌がられる行為ですよね。それを部下や後輩にするなんて、ちょっと異常だと思いませんか?
ということで、今回は「怒る」と「叱る」の違いを考えました。
ちょっと、いや大いに想定とずれましたが、ベネッセ大先生のおかげでなんとかゴールにたどり着けました。
答えは多分、「自分本位」か「他人本位」かです。
皆さんも、叱るときはぜひ意識してください。
時間は平等です。今、若い方でも、そのうち先輩になり、上司になります。叱らなきゃいけない場面も、きっと訪れます。
そんなときはぜひ、相手の立場になって、「こうしたら響くだろうな」という叱り方を考えてほしいと思います。
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