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崩壊したって本当? 日本型雇用システムの1つ、終身雇用のメリット・デメリットを解説!

皆さんは「終身雇用」という言葉に、どんなイメージを持っていますか?

もしかすると、過去の遺物という印象が強いかもしれません。

実際、1993年~2005年の「就職氷河期」に高校・大学を卒業した、現在30代後半~40代後半までの方は、そもそも新卒での就職が困難だったこともあり、終身雇用に期待をしていないようです。

一方、それ以降の世代は安定を求める傾向にあり、終身雇用に対する期待が復活しつつあるとも言われます。

今回は「日本人の働き方」を解説するシリーズの第一弾として、終身雇用を解説していきます。

この記事のまとめ
・終身雇用にはメリットもデメリットもある
・現代でも終身雇用の支持率は高い
・働き方の多様化により、緩やかに減少していくかも

終身雇用のメリット・デメリットを正しく知ろう!

終身雇用のメリットとデメリット
その名称からも想像できるように、「新卒での入社から定年を迎えるまで、同じ企業で働き続ける」。それが終身雇用の一般的なイメージです。

自分をより高く買ってくれる企業があれば、転職は当たり前」と考える欧米の傾向と比較して、“日本独自のシステム”と考える人もいます

まずは終身雇用の特徴と、そのメリットデメリットを紹介します。

そもそも終身雇用ってなに?

終身雇用を深く理解するためにも、まずはこちらをご覧ください。

終身雇用(しゅうしんこよう)は、同一企業で業績悪化による企業倒産が発生しないかぎり定年まで雇用され続けるという、日本の正社員雇用においての慣行である。

引用:Wikipedia『終身雇用』より

慣行とは、「以前からのならわしとして、通常行われること」。この意味を加えて読むと、通常、日本企業が労働者を正社員として採用する場合、倒産がない限り、定年までの雇用を前提にしている、ということになるでしょうか。

ちなみに、この終身雇用に「新卒一括採用」と「年功序列型の賃金」を加えて『日本型雇用システム』と呼びます。

終身雇用って日本だけ?

世界には200を超える国や地域があり、すべてを調べることは事実上、不可能

ですが、少なくとも1960年代までは、アメリカでも1つの会社で生涯を過ごす終身雇用が当たり前だったようです。

そしてそれを崩壊させたのは、高度経済成長期の日本企業の躍進に伴い、アメリカ企業の業績が悪化したからなのだとか。

その後、アメリカでは企業が求めるスキルや資格を持った人材を採用する「ジョブ型雇用」へ移行。当然、企業のニーズは流動的なので、長期にわたる雇用が保証されることはなくなりました。

しかし、こういった環境だからこそ、労働者と企業の立場は対等という考えが根付きました。現代のアメリカ人労働者は、自分のスキルをより高く買ってくれる企業への転職を躊躇しませんし、企業も不要となった人材の解雇をためらいません。

一方の日本は、従来どおり新卒一括採用で人材を確保してから、それぞれに仕事を割り振るメンバーシップ型雇用」を継続。

「今、必要なスキル」を持たない社員に対しても年功序列的に賃金を支払うことで、人件費の高騰に悩み続けています。また従業員側も大きな過失がなければ定年まで雇用が保証されるため、向上心や発想力を失ったともいわれます。

ただし、悪いことばかりではありません。新型コロナウイルス流行時、アメリカでは一時的に失業率が大幅に増えたのに対して、日本では雇用が維持されたのは記憶に新しいところでしょう。

それぞれに良し悪しこそあれ、日本企業の躍進により雇用形態を変化させたアメリカが堅調な成長を続ける一方、日本企業は従来の考え方から脱却できず長い不況に苦しんでいるのは、皮肉と言えるかもしれません。

終身雇用のメリットは?

日本において終身雇用が根付いたのは第二次世界大戦後ですが、それ以前にもその原型はあったそうです。

それほどの歴史を持つ制度が、100年後の若者からも一定の支持を得ているのですから、メリットがないはずがありません。

ここでは終身雇用のメリットを、企業側と従業員側、それぞれの方向から紹介いたします。

【終身雇用のメリット】
[企業側から見たメリット]

採用コストの負担を軽減できる
長期的な人材育成を図れる
従業員の生活を安定させられる

[従業員側から見たメリット]
長期にわたる雇用の安定
長期にわたる収入の安定
会社への帰属意識が高まる

企業側から見たメリット

人材の採用・育成にかかるコストは、企業にとって非常に大きなウエイトを占めます。

しかし、新卒一括採用・終身雇用という日本型雇用モデルでは、その負担を大きく軽減することができます。

また、長期にわたり人材を確保できるため、会社の事情やビジョンに応じた育成が可能。今、どんなポジションが必要なのか、今後、企業はどういう道に進んでいくのか。そのときどきの課題に合わせて人材を活用できます。

最後は、従業員が生活の不安なく業務できること。これは労働者にとってもメリットですが、企業にとっても大きなメリットになります。

従業員から見たメリット

雇用と収入の安定。従業員側から見たときに、終身雇用のメリットとして真っ先に挙がるのはこの2つでしょう。

よほどのことがなければ解雇されず、年々、収入も向上していく。その安心感があるからこそスキルアップに励めるし、結婚や出産、自宅購入などのライフステージの変化にも積極的に取り組めるのではないでしょうか。。

また帰属意識や企業への愛着が深まることは、モチベーション維持にも繋がります。

終身雇用のデメリットは?

続いては反対に、終身雇用のデメリットをご紹介。

こちらも企業側と従業員側、双方から見ていきましょう

【終身雇用のデメリット】
[企業側から見たメリット]

人件費を削減しにくい
能力のない社員を解雇できない
向上心のない社員が増える

[従業員側から見たデメリット]
実力に見合った評価がされない
転勤や異動を断りにくい
無理な働き方を強要されることがある

企業側から見たデメリット

終身雇用では、採用や育成に関するコストは低減できても、人件費の調整はできません。特に社員の平均年齢が高い企業では、実力や成果にかかわらず高い給与を支払う必要が生まれます。

また能力やそもそもの意欲に問題があっても解雇には制限があることも併せて、人件費が高騰しやすいことが最大のデメリット。

もうひとつ、そういった環境に甘える従業員が増えてしまうと、社内の生産性が著しく低下することも感がられるでしょう。

従業員側から見たデメリット

一方、従業員から見てもデメリットは存在します。まず終身雇用を前提とする場合、同時に年功序列型の賃金形態になりがちで、特にキャリア初期は能力や成績が給与に正しく反映されない恐れがあります。

また日本型雇用システムでは、転職にネガティブなイメージはつきもの。そのため解雇を恐れ転勤や異動、長時間の労働などを断れず、肉体的にも精神的にも望まない労働環境を強いられるケースもあります。

本当に終身雇用は崩壊した?

近年、「終身雇用は崩壊した」という言葉を耳にします。これは実態に即しているのでしょうか?

終身雇用の崩壊は2019年4月に日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明会長(当時)、同年5月にトヨタ自動車株式会社の豊田章男社長(当時。現在は会長)が相次いで「終身雇用の維持は困難」という見解を示したことが決め手となり広がりました。

一方、労働者の間では、現代でも終身雇用をはじめとする日本型雇用システムへの支持率が著しく高いのも事実。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構が2015年に調査し2024年に発表した「第7回勤労生活に関する調査」で、終身雇用は87.9%という圧倒的な支持を得ています。

現代でもこれほどの支持を集めるにもかかわらず、終身雇用はなぜ崩壊したと言われるのでしょうか。

崩壊の理由①:不況

デメリットでも解説したとおり、終身雇用は総じて人件費の負担が高くなりがち。

日本は1990年代初頭のバブル崩壊以降、継続的な不況に苦しんでいるため人件費の増加を許容しきれず、結果として「崩壊」と言われるようになりました。

崩壊の理由②:キャリアの多様化

こちらもデメリットで解説しましたが、終身雇用を前提とした雇用システムの中では、転職はマイナスイメージを持たれやすくなります。

しかし、労働者が転職に対してネガティブな印象を持っているかと言えば、そうではありません

人事に対して会社の意向が強く反映されやすいことも含めて、ワークライフバランスを重視する現代の風潮とミスマッチを起こしやすいことが、「時代遅れ」という認識が強まった要因の1つでしょう。

崩壊の理由③:競争の激化

この数十年で、ビジネスは大きくグローバル化しました。それは不況に苦しむ日本も例外ではなく、そのため人材獲得の競争も激化しています。

この競争に勝ち抜くためにも、優秀な若手を確保しようと旧来の日本型雇用システムではなく成果主義を打ち出す企業が増えたことも要因。

この流れは、少子高齢化によりますます加速するかもしれません。

実際に「何が」「どう」変わった?

最後に解説するのは、時代による変化。終身雇用が崩壊したと言われる現代と、うまく機能していた1990年代で、雇用形態はどう変わったのか

正社員に限って言えば、実のところほとんど変化はありません。というのも、過去も現代も、日本における「正社員」のほぼすべてが期間を定めない無期雇用だからです。

また労働契約法の施行(2008年)や労働基準法の度重なる改正により、企業の解雇要件は厳しくなる一方。そのせいもあってか、平均勤続年数はむしろ上昇傾向にあるのです。

平均勤続年数の変化

ちなみに、大きく数値を下げている3カ所は理由が明確。まず1999年ITバブルの本格化に伴い、IT企業への転職が増加したことが要因です。また2009年2020年は、前者がリーマンショック、後者が新型コロナウイルスの流行により倒産数が急増したためでしょう。

まとめ:終身雇用は今後どうなる?

終身雇用はこの先、どうなる?
終身雇用には雇用の安定という圧倒的なメリットがあります。それが前提にあるからこそ生活の安定も図れ、長期的な視野で自身が望むスキルアップをめざせます。

反対に企業側の金銭的負担が大きく、労働者に還元されにくいというデメリットも混在しています。

では、終身雇用は今後、どうなっていくのか。

現実的に求める人が多数を占める以上、今すぐなくなることは考えにくいのではないでしょうか。

ただし、働き方の多様化が進行しているのも事実。企業としても、労働力を確保するためにも時代にマッチした雇用形態を模索していくはずです。

その過程で仕事に必要な人材だけを確保する「ジョブ型雇用」が増加していき、終身雇用は緩やかに減少していくのではないでしょうか。実際、すでに世の中には「ジョブホッパー」と呼ばれる、短期間での転職を繰り返しながらスキルアップを図る労働者も増加しています。

そこで次回は「ジョブホッパー」について解説いたします!

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