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残業とは? 定義や法定内残業と時間外労働の違いを解説!

社会人として働く人たちのほぼ全員が避けたいでも避けられないもの。それが「残業」ではないでしょうか。

労働基準法など公的には「時間外労働」と呼ぶほか、「超過勤務(超勤)」と呼ばれることもあります。

知名度という意味では非常にメジャーなこの言葉。しかし細かい定義「割増賃金が発生する残業」と「しない残業」の違いなど、細かい部分までご存じという方は、意外と少ないのでは?

そこで今回は、日本人の働き方を解説するシリーズの第3弾! 残業の定義ありがちな「残業代のトラブル」について解説します!

この記事のまとめ
・残業には「法廷内残業」と「時間外労働」がある
・このうち割増賃金が発生するのは「時間外労働」のみ
・“労働者”以外や管理職は残業の対象外
・18歳未満はいかなる理由があっても残業禁止

トラブル回避のために!残業を正しく知ろう!

残業はつらい
残業というと、皆さんはどんなイメージをお持ちでしょうか。

一般的には、終業時間を超えて働いた時間、という答えが多いかと思われます。

同時に、超過した時間分は手当がもらえることから、大変だけど稼ぐために必要な働き方、という答えもあるかもしれません。

もちろん、それ自体は間違いではありません。ただ残業に当てはまる働き方は他にもありますし、手当の発生しない残業もあります

まずは「残業」という言葉を正しく知るために、定義を確認していきましょう。

残業の定義とは?

先ほども書いたとおり、残業は法律など公的な場面では時間外労働と呼ばれます。そして、本来の意味と一般的なイメージの差は文字の違いに現れています。

できるだけかんたん、かつ正しく知るために、まずはWikipediaの解説をご覧ください。

時間外労働(じかんがいろうどう)とは、労働基準法等において、法定労働時間を超える労働のことをいう。

引用:Wikipedia『時間外労働』

この解説にも出てくる「法定労働時間」という言葉。

残業の概念を理解するために欠かせない重要な言葉なので、きちんと紹介いたします。

法定労働時間とは?

法定労働時間とはその名のとおり、法律で定められた労働時間(の上限)のこと。

労働基準法では下記のように明記されています。

使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
②使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

出典:労働基準法 第三十二条(労働時間)

つまり法定労働時間は1日最大8時間、1週間で最大40時間。その時間を超えて働いた分を「時間外労働」と呼びます。

「残業」という言葉が“勘違い”を生む!

一般的に使われる残業という文字からは「終業後にも“残”って“業”務をする」とイメージされがち。

しかし、法的には文字どおり、(法定労働)時間外に働いた分、という意味です。

そのため、終業後はもちろん、始業前に業務した時間も含まれます

ちなみに、この「所定労働時間」と「法定労働時間」の違いが、もうひとつ面倒な勘違いを生む要因にもなっています。

所定労働時間とは?

所定労働時間とは、企業ごとに決められた「従業員が働く時間」のこと。より分かりやすく言えば「9時~18時(うち休憩1時間)」のような、いわゆる「定時」と呼ばれるものです。

現実的に日本の企業では所定労働時間自体が8時間というケースが多く、この場合は時間外労働=残業なのでややこしいことはありません。

しかし、中には所定労働時間が7時間30分などと設定している企業も存在します。

そしてその場合、時間外労働=残業=稼げるという図式は崩れます

法定内残業と時間外労働の違い

所定労働時間が7時間30分の会社で8時間30分働いたとしましょう。

この場合、一般的な感覚は「1時間の残業」。当然、残業代も1時間分もらえると感じるかもしれません。

しかし、実際には「時間外労働」が30分、そして「法定内残業」が30分となるのです。

法定内残業と時間外労働のいちばんの違いは、割増賃金の有無

先ほども紹介した労働基準法の第37条では、時間外労働には割増賃金(25%以上)を支払う必要があると定めています。

しかし、法定内残業は割増賃金の対象外です。

つまり「残業」を誤解していると、思ったより金額が少なかった、というケースが起こりうるのです。

実際、30分だけの違いなら大きな差はありません。しかしこれが毎日となると、20日勤務で10時間分、月給30万円の人だと5,000円程度の差になります。

決して安い金額ではないので、正しく理解しておいてください。

残業の上限は?

そもそも、なぜ労働基準法は労働時間を規定しているのか。それは同法の第1条に明記されています。

労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
②この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

出典:労働基準法 第一条(労働条件の原則)

人間らしく生きていくためには、労働時間は8時間が限界。少なくとも労働基準法は、そう規定しているということです。

そして、今回ご紹介する内容のなかで、もっとも意外に思われるかもしれないこと。

そういう発想のもとに作られているからでしょう。労働基準法では、時間の長短を問わず、時間外労働を禁止しているのです。

それでも、皆さん残業をしていますよね。もちろん、それには法的根拠があります。

それが通称、「36協定」と呼ばれるものです。

36(サブロク)協定とは?

企業側と労働組合(組合がない企業では、労働者の過半数から信任された代表者との間で締結する「36協定」。これを結んでいないと、残業や休日出勤自体は違法行為となります。

なぜ36協定と呼ばれるのか。それは先ほどから引用している労働基準法の第三十六条で規定された条件を満たすための協定だからです。

本来ならばこちらも引用すべきですが、長いので要点だけを抜き出します。

【36協定による時間外労働時間の上限】
①1年間の上限は
360時間以内
②1カ月の上限は45時間以内
※①・②とも対象は時間外労働(残業)のみ。法定休日労働時間(休日出勤)は含まない

あれ? 俺/私の会社ではもっと残業することあるよ?

もしかすると、そんな感想を持った方もいらっしゃるかもしれません。

ここからが複雑なのですが、この例外措置の36協定には、さらなる例外が存在するのです。

例外①“特別条項付き”36協定

業種によっては繁忙期とそれ以外で、業務量が大きく変化することがあります。

そして、そんな状態が予見できる企業では“特別条項付き”の36協定を結ぶことができます。

【特別条項付き36協定の時間外労働の上限】
①1年間の上限は
720時間以内
②1カ月の上限は100時間未満
③複数月の平均残業時間は80時間以内
※①の対象は時間外労働(残業)のみ。法定休日労働時間(休日出勤)は含まない
※②・③の対象は時間外労働(残業)と法定休日労働時間(休日出勤)、双方を足したもの
※ひと月45時間を超える残業は年6回まで

特別条項を付けている場合、どの単位でも上限時間が大幅に引き上げられます。ただし労働時間が長くなりすぎることを防ぐために、②と③にはいわゆる休日出勤分も含めるようになっています。

さらに、1カ月で残業時間が80時間を超えた場合は医師の面接指導を受ける必要があったり、勤務間のインターバルを11時間設定する必要があったりと、さまざまな制約があります。

もうひとつ、分かりにくいの③の「複数月の平均」という表現。

こちらは1年・12カ月のうち、連続する2~6カ月のどこを取っても、平均80時間を超えてはいけないということです。

例外②“労働者”以外

36協定は労働基準法に基づいて結ばれるものなので、その対象は労働基準法が定める「労働者」に限定されます。

では、どんな人が労働者に該当するのか。それは労働基準法の第九条によって規定されています。

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

引用:労働基準法 第九条

この条文からも分かるとおり、雇用形態については特に言及されていません。つまり正社員、契約社員、アルバイト、パートなどの形態にかかわらず、すべて対象となります。

一方、企業に「使用される者」という表現があるように、企業との雇用関係にない下記の人たちは含まれません。

【「労働者」に含まれない人】
会社の役員
業務委託/請負
(要注意)派遣社員

役員は使用される者ではなく使用する側とみなされることから対象外となります。

また業務委託請負契約は「使用する者とされる者」という関係ではなく対等の立場で契約を結ぶもの。そのため原則的には「労働者」に当てはまりません。

ただし、委託者(企業)が受任者(実務者)に対して業務の進め方や作業時間などを指示していたり、成果にかかわらず時間給で賃金を払う場合は労働者とみなされることもあります。

注意が必要なのは派遣社員。この場合、実際に働く企業ではなく派遣元の事業者との雇用関係にあるため、本来は対象外。ただし、そもそも派遣元と36協定を結んでいるはずなので、実際の働き方に大きな変化はありません

例外③管理監督者

一般的に「管理職」と呼ばれる立場の人たち。彼らは役員とは異なり労働者ではあるものの、36協定においては労働時間の制限を受けないとされています。

多くの場合、課長以上が管理職、というイメージが強いかもしれません。しかし厚生労働省によると、管理監督者は役職ではなく職務内容や責任、勤務態様、賃金などで決まるとされています。

そのため、どの役職から管理監督者とみなすかは企業ごとに異なります。

【管理監督者の定義】
・労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること
・上記のような責任と権限を有していること
・現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること
・賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること

参考:厚生労働省「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」

シンプルに解説するなら「経営者と一体的な立場」であるかどうかで判断されるということです。

これに当てはまらない場合はいわゆる「名ばかり管理職」となり、役職名や賃金にかかわらず「労働者」と同じく36協定の対象となります。

例外④18歳未満

契約形態や役職、賃金に限らず、18歳未満の労働者時間外勤務や休日労働、深夜労働が認められていません

こちらも労働基準法で定められています。

(前略)満十八才に満たない者については、これを適用しない。

引用:労働基準法 第六十条

ちなみに、この部分については例外が一切ありません

たとえ合意があったとしても、本人からのお願いだったとしても違法となりますので、注意してください。

まとめ:何より身体を第一に考えよう!

残業についてのまとめ
紹介してきたとおり、労働基準法が定める1日の勤務時間は8時間まで。本来、それ以上の労働は想定されていません。

そして繁忙期やトラブルの対処のために、例外的に残業を可能にするのが36協定なのです。

この基本を押さえていれば、「残業するのが当たり前」という風潮がおかしいということがお分かりいただけるのではないでしょうか。

ちなみに、厚生労働省が毎月調査している「毎月勤労統計調査」によると、2023年の正社員の平均残業時間13.9時間/月

1カ月の平均出勤日数は19.6日なので、1日平均に直すと42.5分ほどとなります。

もちろん、時期や原因により多い時期・少ない時期はあるでしょう。ただ、少なくとも毎日1時間以上の残業が常態化している企業は、「残業が明らかに多い」と判断できるかもしれません。

先ほども書きましたが、労働基準法が1日の労働時間を8時間までとしているのは、人間が人間らしく生きるため

企業側も労働者も、その定義をもう一度考えて、残業を削減していってほしいと思います。

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