去年頭、いや、おととしの年末でしたかね? 超有名お笑い芸人の性加害疑惑が週刊誌に掲載されて、いろいろあったじゃないですか。
そして最近、その方と仲のよかった元国民的アイドルのメンバーも性加害が報道されて大問題になっていますね。
ま、大問題といったところで、普段テレビを一切見ない“ぼく”には何一つ影響ないんですけど。
ただね、これに関連して気になる記事を見つけてしまったので、今回は芸能人と呼ばれる人たちの事件に対する一般世論について考えてみます。
各種ハラスメントが問題になっている昨今、一般的な社会人であっても完全に他人事というわけではないと思いますしね。
ぼくや“あなた”が性加害を疑われないためにどうすべきか、知人が性加害を疑われたときどう接するべきなのか。
そんなことまで考えられたらいいなと思っています。
(相変わらず、特にプロットなどをつくらず書いています。ぼくは2025年もこんな感じです)
自分に関係ないことに怒るのは正常? 異常?
最初にお断りしておきます。この文章内に個人名は出しません。出さなくてもお分かりでしょうが、「疑惑」でしかない以上、名指しで糾弾するのは違うと思うので。
なので、引用する記事タイトルや文中に関しても、個人名部分を「元アイドル」に、テレビ局名を「テレビ局」に、それぞれ変更させてもらいます。
さて、ぼくが気になったのは東洋経済オンラインさんのこの記事です。
>東洋経済オンライン『「(元アイドル)と(テレビ局)」叩く人の”正義”に欠けた視点』
もうひとつ、念のために書いておきます。この記事を書いた方は元アイドルに同情的なようですが、これはあくまでこのライターさんだけの話。東洋経済オンラインには元アイドルに否定的な記事もたくさんあります。
ぼくは昔、出版業界にいた人間として、そして物書きの最末端として、「双方の意見を掲載する」という東洋経済オンラインさんの姿勢を支持します。
記事で気になった部分
センシティブな内容だけに、前置きが長くなりました。すみません。
ぼくが気になったのは、記事中のこのあたりです。
現在ネット上には、「他にも被害者がいるからこれだけで終わらせてはいけない」という声が増えています。(中略)これも「その可能性はあるかもしれないし、ないかもしれない」という段階の話。「もしあったとしても、被害者はそっとしておいてほしいかもしれない」という被害者保護の論点を忘れてはいけないでしょう
引用:同記事2ページ8段落目~3ページ1段落目また、(元アイドル)さんの相手女性も、自分の問題が他人に飛び火することを望んでいるかどうかはわかりません。被害者の感情を置き去りにした第三者の暴走は自尊心を満たすための偏った正義感に見えます
引用:同記事3ページ2段落目それ以上に目に余るのは、(元アイドル)さんに対するいきすぎたコメントの数々
引用:同記事3ページ3段落目
前にも書きましたが、ぼくはライター界の最下層に位置する、いわばZ戦士です。でも、16年以上、文字周りの仕事を続けているんですから、文章を見れば「本音はどこにあるのか」くらいなら見抜けます。
そんなぼくは、この方は元アイドルを擁護するためにネット世論を叩きたいのだと確信しました。それが元アイドルに対する同情・忖度なのか、もともと声の大きいネット世論が嫌いなのか、そこまでは分かりませんけど。
執筆者の“ずるい”ところ
この記事でずるいのは、元アイドルに対するネット世論を叩くために「被害者のため」という大義名分を振りかざしているところ。
これってライターとして最低の行為です。
「被害者保護の論点を忘れてはいけない」のはそのとおり。でも、それを意識するのなら、そもそもこんな文章は書いちゃだめでしょう。だって、この書き方で傷つく可能性だってあるんだから。
でも、自分に都合の悪い可能性は無視して、ネット世論を叩くほうだけに利用している。
もう一度書きます。ライターとして、最低です。
本題はここからです
さて、本題。
性加害が悪いのは、言うまでもなく当然のこと。大前提です。ただ、ぼくらにとっては正直、関係ないことでもあるじゃないですか。
そういったことに対してネットで怒りの声を上げることは、果たして「正常」なのか。それとも「異常」なのか。
それを考えてみたいと思います。
良し悪しは別にして、正常だと思う
先に結論から書きます。ぼくは「正常」だと思います。
きっとね、SNSがない時代の人たちだって、こういう胸糞案件があれば怒って、飲み屋とかで愚痴ってたと思うんですよ。ただ、クローズドな場所だから、社会的な問題にはならなかっただけでね。
だから、「無関係なものに対して怒る」という事象自体は昔からあったんだと思うんです。そしてもしこの推測が正しければ、それは人間として「正常」な思考のもと生まれる感情だから今も昔も変わらず繰り返している、ということになるのではないでしょうか。
ま、いいことか悪いことかは別の話ですけどね。
でも、無関係な他人の行為に腹が立ったり、被害者に同情したりする生き物だからこそ、天災や大事件、大事故のときに寄付が集まるんでしょう。悪いことばっかりじゃないと思います。
「暴走」するメカニズム
記事を書いた人が「暴走」という表現をしていました。この人の書いた文章の内容にはまったく同意できないけど、SNSで意見がヒートアップしすぎて暴走化する、という点に限って言えば同意できます。
では、正常な発想で怒りを感じているだけなのに、なぜ暴走しちゃうのか?
多分ですけど、そのメカニズムはこんな感じではないでしょうか。
↓
●あなたの怒りに同意した人が、相手を非難するコメントをリプする
↓
●コメントを見て怒りが増し、より強い言葉を書き込む
↓
●もっと怒っている人が、さらに強いコメントをリプする
↓
●そのコメントに感化され、より怒りが強くなる
↓
●もっと怒ってる人が……(以下略)
こんなループなんだと思うんですよねえ。
じゃあ否定されると落ち着くかというと、そうではありません。むしろ、顔の見えないSNSで否定されると、面と向かって言われるより怒っちゃいますから。
これは知らない人に否定されて腹が立つというよりは、目の前にその人がいない=自分の身に危険は及ばないという安心感から攻撃的になってしまうのかな。
こういうことを考えれば考えるほど、SNSって使い方がむずかしいなと思ってしまいます。
自分&身近な人が被害にあったらどうする?
人間は、理不尽なことに対しては自分に被害があろうとなかろうと怒りを覚えたり同情したりするもの。
そして、SNSではどんな意見にも賛同者が見つかってしまうので、思考が先鋭化しやすい。
この2つが合わさると、気づかぬうちに感情が大きく動きがちになるので注意しよう。
ここまでをまとめれば、こんな感じでしょうか。
じゃあ、自分や身近な人間が性加害を疑われたら、どう対応すべきでしょうか?
一応、言っておきます。あくまで「やってないのに疑われたら」という話です。意図せずともやってしまった場合は、しかるべき罰を受けてください。
自分が疑われた場合
ぼく個人の意見として、性加害とハラスメントは非常に似ていると思います。
自分に悪意がなくても成立してしまう。
相手を深く傷つけてしまう。
もうひとつ、自分も回復不可能なダメージを喰らう可能性がある。
ね、なんとなく似ていませんか?
だからこそ、疑われたときの対応って本当にむずかしいですよね。下手するとこれまで築いてきた信用や名誉、キャリアが一瞬で崩壊してしまいますし。
一般的に、こういう場合の王道は「弁護士に相談する」「裁判をする」あたりかな。
ただ、お笑い芸人のコメントじゃないけど、日本の裁判ってものすごく時間がかかります。当然その間はまともに仕事もできないでしょうから、よほど金銭的に余裕がないと難しい気がします。
しかも、裁判に勝ったからといって周囲が完全に認めてくれるとは限りません。
なんかもう、疑われた時点で詰み。そんな感じもしますね。
じゃあ、どうすればいいんでしょう。
対策①気にしない
ふざけた対策のように見えるかもしれませんが、結局のところ、これがいちばんでしょう。むきになって反論したりすると、「図星だからむきになるんだ」と思われて逆効果になりそうだし。
つらいでしょう。心は痛むでしょう。それでも気にせず騒がず、事件が風化するのを待つ。
ぐっとこらえて真摯に仕事に取り組んでいたら、そのうち周りが「やっぱりあいつは悪い奴じゃないぞ」って思ってくれるはず。そう信じて、耐え忍ぶのがベストな気がします。
対策②普段からまじめに生きておく
これは対策というより“予防”に近いですが、これも大事です。
先ほど書いた「事件の風化」にかかる時間って、その人に対する周囲からの信頼度によって大きく変化するんですよね。
普段から優しく、まじめで、仕事も丁寧な人なら、風化に時間はかかりません。逆にぼくのように普段からいい加減な人間だと、「ああ、やっぱりね」と思われるでしょう。
やっぱりじゃねえよ! 俺はやってねえよ! みんな信じてくれよおおおお!!!
(檻の中から叫ぶ)
実録:痴漢逮捕記
というのもね、ぼく、こういう状態を実際に味わったことがあるんですよ。
実は大昔、出版社で働いていたころ、出勤中に痴漢を捕まえたことがあります。
当事者ということで被害を受けた方と一緒に警察に行ったんですが、こういうときって調書を作っている間、外部との連絡を禁止されるんですよ。皆さん、ご存じでしたか?
まあ、犯人ではないからか監視も緩くて、隙を見て上司に「痴漢を捕まえたので警察にいます。時間かかるかもしれません」みたいなかんたんなメールは送れました。ただ、その後、ポケットの中で鳴り続けている電話には出れなくてね。
すべてが終わって解放されたのは、4時間くらいかかってから。その間、ご飯も食べれないし警察の方が出してくれるお茶以外、飲み物も飲めない。タバコなんてもってのほかです。
途中、1回だけ喫煙所に連れてってもらえたので、そのとき自販機で缶コーヒー買って飲みましたけど、それだけでした。いやあ、あれはつらかった。
(ちなみに缶コーヒーは自腹です。どうやら、食べ物や飲み物をおごって警察に有利な証言をした、と思われないためなのだとか。納得。)
ヒーローのはずが犯罪者扱いに!?
でもね、もっとつらかったのは、会社に戻ってから。本来なら10時始業の会社に着いたのは15時くらいだったんですが、みんなの視線がめちゃくちゃ冷たかったんですよね(笑)。
きっと、メールの内容から「あいつは痴漢で捕まったくせに、ごまかすためにあんなメールを送ったんだ」と思われたんでしょう。
その後、夕方くらいに被害を受けた方が会社までお礼に来てくださったので疑惑は解消されましたが、あれはさみしかったですねえ。
ただ、それもこれも、ぼくの日頃の行いが招いた結果。言うなれば、自業自得ってやつです。
普段の行いって本当に重要だという証拠ではないでしょうか。
身近な友人が疑われた場合
次は自分ではなく、友人が疑われたケース。
でもね、これに対する答えはかんたんですよ。
ぼくだったら噂や疑惑は一切信じません。そいつが自白しない限り、友人を信じます。
というのも、ぼくは友人が多いタイプではない代わりに、数少ない友人は心から信用しているから。
別に、友人が悪いことを一切しないなんて思ってませんよ。人間だもの。間違っちゃうこともあるでしょう。
じゃあ何を信用しているかというと、「ぼくには嘘をつかない」ということ。だから本人が否定するなら、ぼくはそれを信じるだけです。
知人が疑われた場合
上のケースはちょっと特殊かもしれないので、もう少し距離感の遠い人を例に出しましょう。知人、たとえば会社の同僚とか学校の(元)同級生とかですね。こういった人たちが対象なら、対応も変わります。
とはいっても、付き合い方は何も変わらないでしょうね。
だって、どれだけ本当っぽい話でも噂は所詮、噂でしかないので、そっちを信じることはまずないです。ただ、友人のように全面的に信用もしていないので、無条件に冤罪だと信じることもありません。
そもそも同僚って必要なときにしか付き合わないじゃないですか。逆に言えば、業務上、必要であれば付き合わざるをえない存在でもあります。たとえそいつが犯罪者だったとしても、ね。
そんなきわめてドライな発想にもとづき、これまでどおりの距離感で付き合っていくと思います。
まとめ:自分は自分、他人は他人
前に「嫌いな人との付き合い方」というコラムでも書きましたが、結局のところ、期待しすぎるから感情が過度に動くのではないでしょうか。
同僚、上司、部下……そういった身の回りの人相手にさえ「期待しすぎるな」と書いたぼくですから、芸能人相手ならなおさらですよ。
もちろん、お笑い芸人の事件も元国民的アイドルの事件も、ぼくにとっても胸糞でしたよ。SNSに書くほどじゃないというだけでね。
会ったこともない芸能人の醜聞なんて、そのくらいでいいんじゃないでしょうか。
もうひとつ、ぼくみたいにいい加減に生きてちゃだめですよ、ってことも伝えたいです。
だって痴漢を捕まえて、警察に協力して、被害者に感謝してもらった。いわば100%、完全に善行ですよ。それなのに、会社では犯人扱いされていたんですからね(笑)。
あ、一応、社内に数人、ぼくを信じてくれていた後輩がいたことは書いておきます。そして彼らの存在が自分にとって大きかったことも付け加えておきます。
ということで最後に、自分が疑われたときの対策③を紹介して、コラムを閉じましょう。
周囲が自分をまったく信用してくれない。そんな噂や疑惑、想像に流される人しかいない職場だったら、そこにい続ける意味も価値もないですよね。
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