皆様、いかがお過ごしでしょうか。
このコラムが公開される3日前、8月15日は終戦記念日でしたね。
国内外を問わず、国籍を問わず、年齢や性別を問わず。多くの涙が流れた第二次世界大戦が終わってから、ちょうど80年の節目です。
終戦記念日というのは、本来いくつもあってしかるべきです。日本国内だけでも、多くの戦争や内戦があったわけですから。
それでも8月15日を終戦記念日としているのは、日本が能動的にかかわった(今のところ)最後の戦争が終わった日だからなのでしょう。
80年間、この記念日が8月15日から動かなかったことを、ぼくは心から嬉しく思います。同時に100年の節目となる2045年も、その後2145年になっても3045年になっても、ずっと変わらないでほしいと心から願っています。
さて。
いつもは親サイトである『ジョブリット』の流れを汲んで、仕事や転職といったある種の“人生の転機”に際して「わずかでも役立ったらいいな」という発想のもと、コラムを書いています。
しかし今回は80回目の区切りですから、終戦記念日にちなんでもう少し「根本的」なことを書いてみたいと思います。
「現在地」と「目的地」を知らないと何もできない!
まえがき的に先述したとおり、今回書くことは“直接的には”仕事や転職に関係しません。
今回のテーマは、あえて名づけるならば「生きていくために必要なこと」。アクセス数稼ぎに必死などこぞのニュース系メディア風に変えるならば、「“生きる”ために欠かせない、たった2つのこと」となるでしょうかね。
いきなりですけど皆さん、NHKで放送されている朝ドラ『あんぱん』はご覧になっていますか? これを書いている“魔王”ことぼくは見ていません(なら聞くな)。
後輩の芽生(めい)ちゃんが勝手につくった設定を律儀に守るなら、ぼくが棲んでいる“魔王城”にはテレビこそあるものの、ほぼ使われない無用の長物となっているからです。
(念のため、NHKの受信料はきちんと払ってます。今のテレビが壊れたら払わなくていいぞ、やったー! と思い始めてから10年以上経ちましたが、未だに壊れる気配がありません。日本製は頑丈ですね。こういうのを“過ぎたるは及ばざるがごとし”と言うのでしょう)
でもね、今回書きたいことと『あんぱん』、正確にはドラマの主人公である「やなせたかし」さんは密接に関連します。
やなせたかしさんとは?
あまりに有名すぎて、そして偉人すぎて、ぼくごときが解説する必要を感じませんが、念のため超かんたんに書いておきます。
やなせさんは1919(大正8)年2月6日、東京都生まれ。マンガ家、絵本作家、詩人として活躍されました。代表作は1988(昭和63)年の放送開始から今に至るまで子どもの心を掴んで離さない『アンパンマン』(原作)のほか、同アニメのテーマ曲『アンパンマンのマーチ』『勇気りんりん』、ぼくらの世代は幼稚園~小学校でよく踊りながら歌っていた『手のひらを太陽に』(いずれも作詞)など多数。
後年も多くの病気と闘いながらも、制作活動を継続。2013(平成25)年10月13日に94歳で亡くなる直前まで、劇場版アニメの舞台挨拶に参加されていました。
やなせさんの哀しい前半生
そんなやなせさんの前半生は、とても幸せと言えるものではありませんでした。
このあたりは『あんぱん』で詳細に描かれているようなので、ご存じの方も多いかもしれません。ご覧の方は、ドラマを見ていないぼくより詳しいでしょう。
とはいえ、知らない方に説明しておかないとコラムの内容上、差しさわりがあるので、こちらも簡潔に記載しておきます。
他人の半生を縁のない人間がうかつに語るものではないと百も承知、二百も合点していますが、そういう意図なので悪しからずご了承ください。
1941(昭和16)年 大日本帝国陸軍へ入営(22歳)
1944(昭和19)年 弟・千尋さんが21歳の若さで戦死(25歳)
1946(昭和21)年 復員(27歳)
ちなみに、千尋さんはやなせさんと同じく非常に優秀な方だったようで、京都帝国大学(現在の国立・京都大学)法学部卒業。将来は弁護士になることを夢見ておられたそうです。
血を分けた大事な弟を若くして喪ったやなせさんの無念たるや……。
ここまでにしておきます。これ以上、何かを書けば、誰かの心を冒とくしてしまうことになるかもしれません。
アンパンマンの特徴
アンパンマンという国民的作品も解説は不要ですよね。
ご存じのとおり、アンパンマンは悪役の“ばいきんまん”を倒す、いわばヒーローです。
ただ、あんまり強くはありません。得意技は「アンパンチ」と「アンキック」で、強力なビームや武器は使えません。
また、アンパンマンは他のヒーローにはない特徴を持っています。
そう。お腹が減って困っている人がいると、自分の顔をちぎって助けるんですよ。そうすると自分はますます弱くなっちゃう。でも絶対に見捨てません。見捨てられません。
誰かを助ける人は、誰かに助けられる
アンパンマンには他にも、独特なちょっと情けない特徴があります。
それは「顔が濡れると力を出せない」というもの。
人間には誰にでもなにかしら弱点がある。弱点をつかれたら当然、弱い。
でも……。
必ずジャムおじさんとバタコさんが助けに来ますよね。新しいあんぱんを持って。
これ、ぼくたちの世の中と何も変わりません。
そりゃあ、アニメじゃないから毎回、必ず、タイミングよく、というわけにはいきませんよ。でもだいたいの場合、助けてもらいながら生きてきたはずです。
“等身大”のヒーロー
アンパンマンって、「あんぱん」という普遍的で日常的な食べ物をモチーフにしたヒーローだけに、本当に“等身大”なんですよね。
ウルトラマンや仮面ライダー、エヴァンゲリヲン、鬼滅の刃……今も昔も子どもを魅了するヒーローはたくさんいるけど、その多くはどこか“超人的”か“機械的”じゃないですか。
でもアンパンマンにそういうキャラクターは出てきません。相手の“ばいきんまん”やドキンちゃんだって、どこか愛くるしい“普通の”悪い子ですし。
ぼく自身、子どものころは特に何も思わず「そういうアニメであり、そういうキャラなんだ」と受け止めてました。馬鹿ですねえ。
でも、今は違う感想を持っています。
特別優れているわけではないけど、他人を助けたい。そのためなら、自分が傷ついてもかまわない。
もしかすると戦後日本には、そういう人が実在したのかもしれません。そして、やなせさんは、そういう方に助けてもらったことがあるのかもしれません。
つまり、やなせさんが本当に困り果てていたときに心の中で追い求めていた、もしくは目の前に現れてくれた“名もなきヒーロー”を昇華させたのがアンパンマンなのかもしれない。
海老のダンス……じゃない、エビデンスはありません。ただ個人的に、そんな気がしてならないんです。
なんのために生きているの?
すみません。ここまできて、ようやく本題です。
やなせさんご本人が作詞されたオープニングテーマ『アンパンマンのマーチ』には、こんな歌詞があります。
なんのために 生まれて
なにをして 生きるのか
こたえられない なんて
そんなのは いやだ!引用:『アンパンマンのマーチ』(作詞:やなせたかし)
これ、すごくいい歌詞ですよね。哲学的でもあります。さすが詩人としてもすばらしい作品をいくつも遺したやなせさんです。
(というか、この曲の歌詞は全般、本当に深く考えさせられるような歌詞なんです。ここにすべてを掲載すると合法音楽ヤクザJASRAC様に怒られそうなのでやめますが、皆さん、心の中でうたってみてください。もしうろ覚えなら、調べてください。大人になってから読むと、本当にびっくりします)
さて。皆さん、歌詞の中の質問に答えられますか?
生きていくために必要なこと
なぜ生まれて、なにを求めて生きる“べき”なのかは、多分、人類がずっと抱えてきたテーマです。当然、ぼくなんかに答えは分かりません。
でも、どうやって生きるのかを考えるために、絶対に欠かせないことなら分かります。
それは「現在地」と「目的地」の2つ。
すごくかんたんな例を出します。休日、あなたはどこかへ出かけようとしています。
さあ、スマートフォンの地図アプリを開いて、これで準備万端……ですか?
違いますよね。「目的地」を入力しないと、ルートが示されることはありません。目的なく適当に街を歩く。それはそれで楽しいものですが、普通の感覚ではその状態を「徘徊」と言います。そう、老人の得意技。ということは15年後のぼくの得意技ですね。
ちなみに、地図アプリでは自分の位置はGPSで勝手に把握していますが、これを紙の地図にすると「現在地」の話も分かりやすくなります。
目的地が分かっていても、自分がどこにいるのか分からない。「現在地」が把握できていない状態ですね。このまま歩き出すと……はい、迷子のできあがりです。
客観的な視点が大事!
人生には地図もGPSもありません。目的地(夢と言い換えてもOK)までの距離や、自分がどの程度まで近づいているのかを、誰も教えてくれません。誰も正しく把握できないのだから、当然です。
でも、自分の現在地と目標への距離をなるべく客観的に判断して、必要な勉強や鍛錬を重ねて夢へとたどり着く。
それが人間が“生きていくために必要なこと”なのではないでしょうか。
ここで重要になるのが、途中の通過点を正しく設定すること。これは飛行機や船の操縦に似ています。
飛行機の飛行ルートには「ウェイポイント」と呼ばれる通過ポイントがあります。しかし、陸上であればなにかしらが建っているものの、海上では単なる「仮想のポイント」なんですよ。なんにもありません。ただ海が広がっているだけ。
でもそれは、きちんとした理論に基づいて算出された“正しい”ポイントです。そこを間違えずに飛んでいけば、飛行機は必ず目的地へと到着できます。
ぼくは船には詳しくありません(飛行機も大して詳しいわけではない)が、理論的に考えるならば、きっとそれに近いことをやっているはずです。というか、歴史を考えれば、船の運航に使っていたテクニックを飛行機に流用した可能性のほうが高いはずですし。
ここで重要なのは、単にいきなり目的地へ向かうのではなく、その途中に仮想の経過ポイントを設定し、最終的にゴールへたどり着くという流れ。
そして、その経過ポイントを設定するには、正しい知識と客観的な視点が必要になるはずです。
まとめ:とにかくアンパンマンはすばらしい!
今回は80回目の終戦記念日にかこつけた特別編ということで、特にボケも笑いも入れずに書きました……よね?
やなせたかしという、ぼくとは違う時代に生まれた他人から見ても哀しい前半生を送った方が、現実的な夢と愛を描いたアンパンマンという作品を生み出した。
そしてその作品が時代を超越して、子どもに大きな影響を与え続けている。
その事実は、背景を知っていても知らなくても、とにかくシンプルにすばらしいのです。
最後に。
今回、この記事を書くにあたり、久しぶりにアンパンマンを見ました。幼少期と何一つ変わらない感覚で楽しめました。夢中になって見ていた“あの頃”に戻った気分さえ味わえました。
何歳になっても、何年ぶりに見ても、心から素直にすばらしいと感じられる。
クリエイターという世界の末端で生きているぼくにとって、その事実こそが最高にうらやましいのです。憧れるのです。
ぼくの“人生の目的地”には、アンパンマンとドラえもんが並んで立っている!
まだまだ果てしなく遠いな(笑)。
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