皆さんは退職を経験したことがあるでしょうか。
厚生労働省が発表した「令和5年 雇用動向調査結果の概況」によると、1年間に離職した正社員は12.1%とのこと。
これはあくまで1年間の統計であり、実際に「退職(転職)をしたことがある人」の数字ではありません。
ひと昔前と比べれば、転職への抵抗感は少なくなった言われる一方、まだまだ転職を「できれば避けたいもの」と考える人も多いそうです。
しかし、実際に退職を避けられない人がいるのも事実。
そして、そんなときに頭を悩ませるのが退職の伝え方ではないでしょうか。
いつ、誰に、どうやって伝えれば円満に退職できるのか。
今回は、正しい退職の伝え方を紹介していきます!
前回は、円満に退社するための正しい退職の伝え方を解説しました。そして、その記事でも解説したとおり、本来、企業には退職を引き止める権利はありません。しかし、企業側としては貴重な人材の離職を避けたいと考えるのも当然のこと。となれ[…]
いつ、誰に、どうやって?正しい退職の伝え方!
退職したい。でも、どうやって伝えればいいのか分からない。
そんな悩みを持つ人は、意外と多いのではないでしょうか。
基本的には、何度も経験することではないため、慣れるというのも難しいでしょう。
今回は希望どおりの退職を叶えるために重要な3つのポイント。
「いつ」、「誰に」、「どうやって」を解説していきます。
理想は何カ月前?退職は<いつ>伝えるべき?
「いつ」伝えれば、スムーズに退職できるのか。ここでは法律上の回答と現実的な回答、その2つを紹介しましょう。
まず、法律上の回答は2週間。これは民法627条1項より規定されています。
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
しかし、現実的に2週間で円満に退職するケースはきわめて稀。それは有給休暇の消化や業務の引き継ぎに時間がかかるからです。
では、現実的な期間はと言うと、1カ月半~2カ月前に伝えるのが理想と言われます。
揉めることも厭わないのであれば、2週間での退職も不可能ではありません。ただし、円満退社をめざすなら、おすすめできない方法です。
できれば1カ月半~2カ月、事情があって急ぐ場合でも1カ月は猶予を持っておきましょう。
退職時期に影響する要素①有給休暇
時期に影響する要素でもっとも大きいのは、やはり有給休暇。残り日数が多ければ多いほど、早めに伝えるべきということになります。
理想と言われる2カ月前に伝えたとしても、有給休暇を上限である40日残していては、ほぼすべてが有給消化に消費され、引継ぎ作業の時間は取れません。
反面、1カ月前に伝えたとしても、有給休暇を1日も残していなければ、出勤日をすべて引き継ぎ作業に使えます。
キャリアや役職にもよりますが、引継ぎ用に出勤日を2~4週間(出勤日数にして10~20日)ほどは確保しておきましょう。
退職時期に影響する要素②役職
先ほども書いたとおり、引き継ぐ仕事の量が多いほど、引き継ぎに必要な日数は増えます。
そして当然のことですが、役職が高いほど引き継ぎ量は増えるはずです。
ちなみに、一般的な引き継ぎ期間は一般スタッフであれば2週間~1カ月程度。しかし部長や課長などの役職者では、3カ月以上かかることもめずらしくありません。
少しでも引き継ぎ期間を短くしたいなら、転職活動中から引き継ぎ用の資料作成に着手しておきましょう。
退職時期に影響する要素③繁忙期
どの会社にも繁忙期・閑散期が存在します。そして当然ながら、繁忙期中の退職は歓迎されません。
そのため、スムーズな退職を望むなら、繁忙期は避けるほうが無難です。
上司からの強い引き止めや上層部との無駄な争いは、ストレスを増やすだけ。
精神の安定のためにも、繁忙期を外したスケジューリングを心がけてください。
部長?課長?人事部?退職は<誰に>伝えるべき?
続いては「誰に」伝えればいいのか。この答えは業界や業種、職種、役職などにかかわらず共通と言えます。
正解は、直属の上司。
断っておくと、対象者の役職は関係ありません。例えば係長や主任、副主任といった、いわゆる管理職ではないとしても、最初に伝えるのは直属の上司です。
このルートを間違えてしまうと、直属の上司は管理能力を疑われることになりかねません。
その結果、上司から強い引き止めにあうこともありえるでしょう。
特に直属の上司が管理職でない場合、時間がかかってしまうかもと考え、部長や課長に直接相談してしまう方もいるようです。しかし、急がばまわれの言葉どおり、正しいルートをたどるほうが、結果的に退職までの期間を早められることが多くなります。
その後の流れ
企業によって多少の違いはありますが、退職を申し入れてからの流れも基本的に共通です。
まず、上司と退職の理由や希望する退職日を話し合うことになります。
その後、上司は管理職や上層部と相談し、正式な退職日を決定。そして人事部(ない場合は総務部など)から本人に連絡が入り、提出すべき書類が渡されると同時に、パソコンやスマートフォンなどの貸与物の返却方法が通知されます。
ちなみに、書類の提出が遅れると退職日に影響することも。また、貸与物を返却しないと窃盗もしくは横領として刑事罰に問われたり、最悪の場合は労働者の死刑宣告とも言われる懲戒解雇となる場合もあるので、注意してください。
メールでもいい?退職は<どうやって>伝えるべき?
ここまでをまとめると、できれば希望日の2カ月前までに、直属の上司に伝えるのが正解ということ。
では、もっとも肝心なポイントに移ります。それが方法。つまり「どうやって」伝えるかについてです。
これも一般的な答えは1つ。まずはメールや電話で上司に話し合いの場を設けてもらい、後日、クローズドの場で直接退職を告げましょう。
ちなみに、メールや電話の時点で退職の意思を伝える必要はありません。
とだけ伝えればOKです。
その後は、上司が会議室などを予約してくれるはずです。
打ち合わせを断られたらどうする?
基本的に、2人きりでの話し合いをお願いした時点で上司は用件を察しています。そのため、断られることはほとんどありません。
ですが、時期によっては「今、忙しいから後日でも大丈夫?」と返事が来ることも。その場合、「大変申し訳ないのですが急ぎの用件ですので、極力早めに設定していただけると助かります」と送り、早めの打ち合わせを促しましょう。
前述のとおり、報告日は退職日に影響しやすい要素。極力早く、報告することをおすすめします。
会議ではどうやって伝える?
実際に退職を伝えるのは、クローズドな場。上司も用件はなんとなくわかっているので、早い段階で「どうしたの?」と聞いてくるはずです。
伝え方に定型文はありませんが、丁寧な言葉遣いを意識して、下記のように伝えましょう。
繰り返しますが、打ち合わせを要求してきた自店で上司はだいたい用件を察しています。
ただ、貴重な人材の流出をよろこぶ上司は少ないので、理由を確認してから希望日の聞き取りに移行することがほとんどでしょう。
詳細の伝え方①転職先が決まっている場合
ここからはケースバイケースでの対応が必要です。
まず、すでに転職先から内定をもらっている場合は、その旨を素直に伝えましょう。
次が決まっているとなれば、上司も無理に引き止めることはできません。よほど日程に無理がない限り、スムーズに引き継ぎ作業や有給消化の調整に入ることになります。
ちなみに、このとき企業名を聞かれたら、答えても答えなくても問題ありません。ただし同業他社の場合は例外で、伝えないほうが無難です。
その場合は「詳細は控えますが、前々から志望していた会社と縁ができまして…」とお茶を濁すのがいいでしょう。
詳細の伝え方②転職先が決まっていない場合
こちらは上司からの引き止めが容易に想像できるケース。
伝え方としては、「皆様のおかげで勉強をさせていただきまして、新たに○○にチャレンジしたいと決意するに至りました」あたりが無難です。
それでも引き止められたら
「将来、後悔しないためにも、今動くことを決断しました」
と伝え、考えを変える意思がないことを明言しましょう。
むしろここで言葉を濁すと、さらなる引き止めにあってしまいます。弱気にならず、退職の意思が固いことを伝えてください。
事前に考えておくこと
転職先が決まっていない場合、こう言われがちです。
「君の意思はよくわかった。ただ、本当に退職を決めるのは、転職先を決めてからでも遅くないのでは」
もちろん、離職を引き止めるための言葉ではあるものの、あなたを思ってのことであるのも事実。なぜなら、転職がうまくいく保証などないことを、上司はよく知っているからです。
しかし、退職を決めているあなたにとっては、うれしい言葉ではありません。
この返答にどう返すか。こちらにも定型文はありませんが、一例を記載します。
こちらを参考にして、あなたなりの返事を事前に考えておいてください。
「過分なお言葉をいただき、本当にありがとうございます。しかしながら、優しさに甘えてしまうと決意が揺らぎ、のちのち後悔することになることも分かっています。退路を断って挑戦したいと思いますので、申し訳ございませんが退職の手続きを進めていただきたく、お願いいたします」
まとめ:時間に余裕があるほど揉めない!
1つひとつ説明すると長くなりましたが、実は非常にシンプルな話です。最後にかんたんにまとめておきましょう。
いつ→理想は退職希望日の2カ月前
誰に→直属の上司
どうやって→メールや電話で打ち合わせを依頼したのち、直接伝える
上記を理解したうえで、あくまで円満な退職をめざす場合は、できるだけ時間にゆとりをもって報告しましょう。
一般的には2カ月程度、役職が高かったり有給休暇が30日以上残っている場合は3カ月程度あれば、すべてスムーズに進むはずです。
しかし、無理やりに引き止められるケースもありますよね。
そんなときの対処法については、次回、ご紹介したいと思います。
最後になりますが、皆さんが退職に際し、不要なストレスを受けないことを願っています。
そして、『ジョブリット』で新たな活躍の場を見つけられることをお祈りしています。
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