時間が過ぎるのは早いものですね。
「上司代行」という個人的に真新しいサービス(?)について書いたコラム。自分としては“ちょっと前”の感覚でしたが、1カ月以上、経っておりました。
そこで敢えて触れなかったことが1つあります。
今回は、真剣シリーズの第5弾として、そのことについてに考え、書いてみましょう。
テーマは「“部下、後輩が成長できる職場”って、どんな特徴があるんだろう?」です。
ミス=経験。そして経験を積まないと成長しない!
上司代行の記事を要約するとこんな感じです。
・管理職になりたくない若者が増えた
・その結果、ミドルマネジメントが不足し、外部に依頼するサービスが流行っている
・「上司代行」の指導(?)により、若手は「ミスを恐れない」というマインドを得られるかもしれない
・でも、結局のところ上司、幹部層の意識が変わらなきゃ意味ないんじゃない?
そのコラム中では成長させやすい環境について、まとめの4つめのような、かんたんな解説に留めたんですよね。
それはなぜかというと、きわめてシンプルな理由。このことだけでコラムになりそうなくらい、書きたいことがたくさんあったからです。
初めて訪れた方のために解説すると、この記事を書いている“ぼく”は、もう16年以上、ライターや編集者など、文字周りの仕事をしています。
でも、フリーランスの経験はありません。ずっとどこかしらの会社のサラリーマンです。
ということは、当然ながら、長いキャリアの中で上司的なポジションにいたこともあります。
そのころの経験はもちろん、転職で役職ありから一般スタッフに戻ったころのことも思い出して、書いていきます。
成長・経験ってどんな意味?
真剣シリーズになると必ず顔を出すのが、“定義づけおじさん”の側面。
まずは「成長」という言葉。そしてそのために欠かせない「経験」という言葉。
この2つの意味をしっかり押さえるところから始めたいと思います。
せい‐ちょう〔‐チヤウ〕【成長】
[名](スル)
1 人や動植物が育って大きくなること。おとなになること。
2 物事の規模が大きくなること。拡大。
今回はこのあと英和辞典も使うため、いつ使うgoo辞書ではなくweblio辞書を使用しています。ただどちらも、大元は小学館のデジタル大辞泉のようなので、特に差異はないでしょう。
そんな注釈はさておいて、意味の話。いやあ、思ったより人間に寄っていない答えでしたね。これは正直、ちょっと予想外かな。
でもまあ、いいでしょう。「物事の規模」にメンタル面やスキル面が含まれると捉えれば、それほど大きな違和感はありませんね。
では、続いて「経験」を見てみましょう。
けい‐けん【経験】
[名](スル)
1 実際に見たり、聞いたり、行ったりすること。また、それによって得られた知識や技能など。
2 哲学で、感覚や知覚によって直接与えられるもの。
仕事で求められる「経験」とは、一般的に意味の1ですかね。
しかし、行動だけではなく見たり聞いたりでも経験になるというのは、正直これまた予想外でした。
ミスってなに? 失敗ってなに?
続いては普段から何気なく使っている「ミス」「失敗」という言葉を正しく把握しましょう。
mistakeとは
意味・対訳 間違い、誤り、ミス、思い違い、誤解、錯誤
しっ‐ぱい【失敗】
[名](スル)物事をやりそこなうこと。方法や目的を誤って良い結果が得られないこと。しくじること。
日本語の「ミス」に対応する英語は“逃す”などの意味を持つ「miss」ではなく、「mistake」のほう。ちなみに前者には「失敗」という意味は含むものの、「間違い」は含まないという違いがあります。
ここから分かるのは、日本語における「ミス」「失敗」とも、予想どおりにいかなかったことを指すこと。
つまり事前になんらかの意思があったのに、結果が意思にそぐわなかった。そんな状態をミス、失敗と呼ぶわけです。
前のコラムで「ミスしたくてミスする奴はいない」と書きましたが、言葉の意味的にもやっぱりありえないということですね。
ミスって悪いことですか?
あらかじめ書いておくべきでした。このコラムで使う「ミス」「失敗」にケアレスミスは含みません。
ということを踏まえて。
思いどおりの結果を得られなかったミス。これって悪いことですか? 怒られなきゃいけないことですか?
もう一度書きますが、最初からミスするつもりでミスする人はいません。
辞書にあるとおり「方法や目的を誤って」ミスしたとしても、基本的にそれは善かれと思っての行動なんですよ。
もちろん、改善の余地はあります。そこを指摘し、代替案を提示するのは上司の役割です。
でもさ、怒るのは絶対に違うよね。
ぼくの思う「経験」
今回のテーマでコラムを書くことを決めた理由の1つに、昔から考えていたぼくなりの「経験」という言葉の定義をご紹介したい、という気持ちがありました。
そしてそれは、辞書の意味とは違っていたことを、今さっき知りました。
でも、違うならむしろ紹介したくなっちゃいますよね。だって、どこかで書いておかなきゃ誰にも伝わらないってことだもの。
ぼくには、経験というものは「普段の自分ならしないことをしたとき得られるもの」という持論があります。もう20年くらい、ずっとこう信じています。
つまり、当たり前にやる行動からは、経験は得られないということ。
以前、英語の話をしたときにちらっと書きましたが、ぼくは高2・高3の2年間、アイルランドという国に留学してました。そこでは当然、日本にいたらできないことをたくさん味わいました。
たった2年。帰省や受験での帰国を除いた正確な滞在期間は1年4カ月程度。それでも、ぼくは性格や考え方、死生観が自覚できるほど大きく変わりました。
たった16カ月しかいなかったその場所は、経験の宝庫だったのです。
「経験」を積むもっともシンプルな方法
最初にも書きましたが、ぼくは成長に経験は欠かせないと思っています。
でも、さすがに部下や後輩に対して、「成長のために留学しろ!」なんて言うわけにはいきませんよね。
じゃあ、会社内、業務内でできる範囲で、もっともかんたんに「経験を積む」方法ってなんでしょう?
ぼくはチャレンジと、そこについてくるミスだと思います。
行動すれば、成功か失敗、どちらかの結果が必ず出ます。それが普段やらないようなチャレンジであれば、失敗の確率は高まります。
でも失敗からは、成功以上に多くのことを学べます。
チャレンジで学べるのは、下記の2つ。
・それに対する結果
これは成功、失敗ともに同じです。でも失敗には、学ぶことが追加されます。
これは1つとは限りません。頭の中で10通りのシミュレーションをしたら、10の経験を積むことができるのですから。
だから、チャレンジを繰り返す。そして失敗して、そこから学ぶ。
それが経験を積む、いちばんかんたんな方法です。
ミスから学べばいいだけ
いくらチャレンジとはいえ、ミスはミスです。評価はされないでしょう。会社に好影響を与えていないんだから、それは仕方ありません。
でも、もしぼくの部下や後輩がミスをしたら。ぼくは大喜びで一緒に改善案を考えます。
もしそれがチャレンジの結果であれば、もっと喜びます。そいつと仲が良く、さらにそいつが酒を飲むなら、普段は開けないような高級シャンパンで乾杯したいくらいに。
ぼく自身、たくさんミスをしてきました。そこからたくさん学びました。そうやって経験を積んだから、“THE無能”だったぼくが、ぎりぎり人並以下くらいまで成長できたと思っています。
ということは、ミスを笑い飛ばしてくれた歴代の上司・先輩のおかげだということでもあります。
成長できる環境とは?
もう、ほとんど解説したようなものですが、まとめ的な意味も込めて、章立てて書きますね。
成長できる環境っていうのは、挑戦させてくれる環境です。そして、その結果のミスが許される環境です。
失敗をせずに成長するなんて都合のいいこと、よほどの有能さんにしかできません。そして、有能さんに合わせた職場づくりは、ぼくは推奨しません。理由はもちろん、そんな職場で真っ先に脱落するのはぼくだからです。
部下や後輩は積極的にチャレンジする。
上司や先輩はチャレンジを後押しする。
結果が出なくても怒らない。代わりに一緒に改善案を考える。
そんな環境さえ整えれば、部下や後輩は勝手に成長していくはずです。
上司はなぜ失敗を怒るのか?
今回のテーマを考えるにあたり、いちばんの謎はこれでした。
ぼく自身、上司と呼ばれる立場の経験はあります。でも、別に部下や後輩の失敗に対して、腹が立ったことはありません。
あ、寝坊とかのケアレスミスは別です。そのときは容赦なく、缶チューハイをおごらせました。ま、あれです。ぼくの怒りなんてこんなもんです。
そんなことはさておき。ネットで調べてみると、こんな意見がありました。
上司も、さらなる上司に責められる。
事象としては理解できます。でもそんなの気になりますかね?
表向きペコペコしながら、心の中で「うっせーよ、ばーか」って思っとけばいいだけじゃないですか。
実際、ぼくはそうしてましたよ。それが良いことか悪いことかは分かりませんが(笑)。
じゃあ、お前はどうしてた?
ぼくは出版社時代、部署異動と同時に主任に昇進しました。
でも、それを取締役に告げられたとき
「異動は大歓迎だけど、役職はやめといたほうがいいですよ。多分、ぼくを昇進させると後悔しますよ」
と無能ながらも愛社精神あふれる返答をしました。
それでもと言われたから、ぼくは主任を引き受けました。
その後、自分も含め誰かが失敗すると、名前は忘れたけどちょっと偉い部長とか取締役に呼び出されました。
でもぼくは、「いや、だから言ったじゃん。後悔するよって」と笑っていました。
だってさ、ぼくのセクションの子たちはみんな有能だったし、がんばってくれてた。
それでもうまくいかないんだから、そもそもそのスケジュール感、予算感で仕事を取ってきた奴が無能なだけです。最初から、どっかに無理があったんですよ。
ま、仕事を取ってきてたの、ぼくなんですけどね。
部下たちはどうなった?
ぼくはみんなに支えられて仕事をしていました。うちのセクションでいちばん失敗する奴って、まちがいなくぼく自身でしたからね。
でももし、そんなぼくに上司としてたった1つでもいいところがあったとするなら、やっぱりミスばっかりしていたことじゃないでしょうか。
上長がミスしまくって、頻繁に取締役に呼び出されてる。でもそのたびに「いや~、怒られちゃったよ」と笑いながら帰ってきて、その後も気にせずチャレンジを繰り返してる。
そんな姿を見ていれば、ミスを恐れることはなくなります。
ぼくは無能だから、チャレンジすると高確率でなにかしらミスします。
でも、彼らはそうじゃない。有能だから、チャレンジしてもミスはあんまりしません。
彼らはどんどん挑戦して、どんどん結果を出した。そして、どんどん成長していきました。
ぼくは、「そうだったらいいな」という希望的観測も含めて、そう思っています。
まとめ:失敗も成功も、どちらも大事!
相も変わらず、ろくにプロットを考えないままにコラムをほぼ書き切りました。
しかし、1つ大事なことが抜けてたので、最後に解説します。
今回、ぼくは失敗の大切さを訴え続けました。でもね、成功も同じくらい、やっぱり大切なんです。
失敗は経験を生みます。
成功は自信を与えます。
どちらが欠けても、成長できないんじゃないでしょうか。
上司ポジションの皆さん、チャレンジさせてください。失敗を喜んでください。彼らがどんどん失敗できるように、あなたが率先して失敗してあげてください。
そして、一緒に改善していってください。そこまでやって初めて「経験」になるんです。
部下ポジションの皆さん、チャレンジしてください。そして失敗してください。そこから学んで、最後に成功を勝ち取ってください。
大丈夫ですよ。ぼくくらい失敗を繰り返した奴なんてそうそういないけど、それでもなんとか生きてます。
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