世の中ってなんでもそうですけど、ぼくこと“魔王”くんが棲息する転職市場にも、やっぱりトレンドというものがあるわけです。
そして、2025年の転職市場のトレンドのひとつに「アルムナイ採用」がある……と個人的には感じています。
実際、ここ最近だけでも、以下のような記事を見つけましたし。
>東海テレビ「「出戻り」側の決断には葛藤も…トヨタなど大手でも広がる『アルムナイ採用』一度退職して触れた“外の文化”への期待」
『「出戻り」側の決断には葛藤も…トヨタなど大手でも広がる『アルムナイ採用』一度退職して触れた“外の文化”への期待』…
>東洋経済ONLINE「出戻り社員「アルムナイ採用」が増えた切実な事情」
>週プレNEWS「人材不足で”アルムナイ採用”が拡大中! 出戻り社員に立ちはだかる苦難とは?
人材不足を背景に、今や企業の3割がアルムナイ採用を採用している退職した元社員を再び採用する"出戻り採用"を、企業の3割超…
でもね、こうして記事の一覧を見ているだけだと、ちょっと不安になりませんか?
3つのうち2つは社員側の“葛藤”や“苦難”をタイトルに入れているし、もうひとつは企業側の“切実な事情”ですから。
どれも、もろ手を挙げて大歓迎! という感じじゃなさそうです。
そこで今回はアルムナイ採用とはなんなのか。企業と求職者、それぞれにとってのメリットとデメリットはあるのか、あたりを考えてみたいと思います。
実は昔からあった「アルムナイ採用」

多分ですけど、ほとんどの日本人にはなじみがないであろう「アルムナイ」という言葉。これは英語の「Alumni」をカナ表記にしたものですが、聞こえる音的には『オロムナイ』が近いと思います。
そして意味は……久しぶりに辞書から引用しましょうか。
【Alumniとは】
意味・対訳 alumnusの複数形。(男子)卒業生、 同窓生、 校友
これはほぼほぼ間違いなく、米国英語ですね。イギリス・アイルランドでこんな言葉、聞いたことないですから。
そして本来は男子卒業生だけを指す言葉のようで、女性卒業生は「Alumnae(発音的には『オロムネィ』)」……なんですけど、辞書の例文を見る限り、厳密に使い分けられてはいないのかも? 自分自身が聞いたことのない言葉なので、あくまで推測ですけど。
そんでまあ、なんとなく記事のタイトルとかからも予想できていたかもしれませんが、アルムナイ採用とは一度、会社を辞めた人を再度雇用する、いわば「出戻り採用」のこと。このほか「カムバック採用」みたいな名称も使われていた印象がありますが、とにかく採用形態としては真新しいものではありません。
ただ、この制度を採り入れる企業が、大手を中心に増加中なんだそうです。
企業のメリットは?
記事を読んでいて感じたメリットは主に4つ。
①採用コストを削減できる
②教育コストを削減できる
③ミスマッチのリスクが低い
④リーダーとしての活躍を期待できる
採用・教育コストの軽減、そしてミスマッチリスクの低減。これらは完全にアルムナイ採用ならではのメリットだと言えそうですね。
どれだけ優れたキャリアや実力を持った転職者でも、どれだけ事前に企業研究を深めたとしても、百聞は一見にしかずの言葉どおり、働いてみないと分からないことは多々ありますので。
ただ、この3つはどちらかというと「リスク軽減」なのに対して、ひとつだけ「リターン重視」な要素があります。
リーダーとしての期待
正直、ぼく個人が考えたら絶対に思い浮かばなかった要素です。なので東洋経済ONLINEの記事をそのまま流用することにしましょう。
「多くのアルムナイは、当社を離れていろんな経験を積み、一回り成長します。そういう優秀な人材が当社に復帰し、リーダーとして経営改革を主導してくれることを期待しています」
すごいですねえ。
ぼく自身、3回退職していますし、もうすぐ20年になろうという会社員生活で、退職していった同僚たちも山ほど見てきました。
その中で一体、何人がこのメリットに当てはまるでしょうか……?
労働者のメリットは?
先に企業にとってのメリットを紹介しましたが、労働者にとってもこの制度はありがたいもの。
では具体的に、どんなメリットが思いつくか、こちらは3つほど挙げてみましょう。
①馴染みやすい
②キャリアの再スタートが可能
③労働条件を交渉できる
一度でも転職を経験したことのある人ならお分かりでしょうが、転職って本当に気が重いんですよ。新たな会社で新たな人間関係を築かなければいけないんですから。それに、以前の会社でうまくいったからといって、実績も信頼もゼロの新しい職場で同じことができるとは限りませんし。
年齢・キャリアを重ねるほど、不安も大きくなる……というのが、40代での転職を経験した自身の素直な感想です。
そういった部分の負担を大きく軽減できることが、労働者から見たアルムナイ採用の最大のメリットではないでしょうか。
あともうひとつ、労働条件を交渉しやすいことも大きなポジティブ要素。
ヘッドハンティングでもない限り、転職をすると収入が一時的に下がるものですが、アルムナイの場合、過去の実績から条件面を交渉できる可能性があります。
というか、正直に言ってしまえば、この部分がなければ、わざわざ一度辞めた会社に出戻ろうとは思えない気がします(笑)。
企業のデメリットは?
このコラムではいつも書いていることですが、世の中に「メリットしかない!」なんてこと、ほとんどありません。ほぼすべての事柄には、メリットとデメリットが共存しています。
企業側のデメリットとして考えられるのは以下の3つ。
①キャリアシステムの再構築
②既存社員の不満
③問題再発リスク
まず、アルムナイ採用をスタートさせる場合、昇進・昇給などキャリアにかかわるシステムの調整・再構築が必要になると思われます。アルムナイ、既存社員ともに納得できるシステムを構築するマンパワーというかコストは結構、重いのではないでしょうか。
また東洋経済ONLINEと週プレNEWSが取り上げていたように、特に年長者・役職者を中心に「出戻り」に対する嫌悪感を持つ社員が現れる可能性もあります。
もうひとつ、退職したということは、何かしらに不満があったということ。その不満は本当に解決・解消しているのか。決して小さくないリスクをはらんでいることも忘れてはいけません。
労働者のデメリットは?
もちろん、労働者にとってもデメリットはあります。
①周囲への配慮/遠慮
②過去とのギャップ
③問題再発リスク
まず出戻りという行為自体に自身が遠慮してしまい、労働環境を窮屈に感じてしまう可能性。というか、ぼく自身がもし過去の企業にアルムナイとして復帰したら、間違いなくこれがいちばんネックになるだろうと感じます。
まあ、ぼく自身はまだ転職に不寛容だった時代に社会人初期を送った関係で、そう思っちゃう部分もあるかもしれませんけど。
あと過去とのギャップを受け入れることができるか大きいでしょう。たとえば自分の後輩だった社員が直属の上司になっている、とか。こっちにかんしては“THE無能”の称号を持つぼくは気にしませんが、プライドの高い人だと、素直に受け入れられないかもしれません。
それに、いろいろな事情があって変更されたであろう社内システム/フローに対して、「昔の方がよかったんじゃない?」とナチュラル老害みたいな発言をしちゃう人もいそうですよね。
最後は、やっぱり問題再発リスク。過去に退職した理由が人間関係や評価への不満だった場合、それが本当に解消されているのかどうか、労働者にとっても不透明です。
アルムナイ採用が有効なケース
正直、アルムナイ採用が企業と労働者にとってWin-Winになるかどうかは、辞め方によって変わると思うんですよ。
いちばん分かりやすい例は、結婚・出産を機に退職した人が、一定期間を経て復職するパターン。このケースであれば、よほど在職当時の人間関係が悪くない限り、本人にとっても会社にとってもいいことづくめだと思います。あと、記事に出てきた、配偶者の転勤に伴っての退職とかも同じパターンですね。
要するに、不満を持っていたから辞めたのではなく、環境の変化によって退職を選択した、という場合は有効に働くケースが多そうだと感じます。
一方で、それ以外の理由、かんたんに言えばなんらかの不満を持って辞めたケースや、他にもっと良さそうな会社を見つけて辞めたケースでは、よほど本人が“キレイ”に辞めていないと、スムーズに受け入れてもらえない気がします。
アルムナイ採用を考える?
ここまでは記事を参照にしながら、アルムナイ採用に対する「一般論」みたいなのを書いてきました。
じゃあ、実際に魔王くんが過去に在籍した会社に戻る可能性があるかどうかを考えてみましょうか。
正直、ぼくの場合はまずありえないですね。
過去に何度も書いているとおり、ぼくはずっと幸せな社会人経験を送ってきました。だから今でも勤めていた企業を悪く思う気持ちはありません。
でもね、会社に不満がないのに辞めているってことは、辞めるべくして辞めているってことじゃないですか。
出戻りという選択肢が頭をよぎったことはありませんし、今後もないでしょう。
ライター特有の例外パターン
ただね、社員という形態で出戻る気持ちは一切ないけど、外注ライターとして原稿依頼があれば、それは積極的に引き受けると思います。
ギャラなんていくらでもいいですよ。
出版社にしても、ひとつ前の求人メディアにしても、無能なぼくを成長させてくれた愛着ある会社ですから。恩返しみたいなものです。
ぼくはライターというちょっと特殊な仕事をしているので、そういうことも結構、現実的に起こりえるんですよね。
もちろん、今もサラリーマンライターである以上、社長の許可を取ってから…という話にはなりますが、多分、社長もダメとは言わないでしょうし。
ということで、P社さんとA社さん、原稿依頼、待ってます!
まとめ:大企業とベンチャー企業なら有効かも?

正直、日本におけるアルムナイ採用の現状とか、あとそれぞれのメリット・デメリットを考えれば、大企業じゃないと成立しえないような気がします。あとはベンチャー企業みたいな、ファミリー感満載の少数精鋭体制の企業とかかな。
ただ、トータルの話として、個人的にはこういう新しい(?)採用手法も、ありだと思います。
これもいつも書いていることですが、とにかくぼくは「選択肢は多いほうがいい」と思っているので。活用する・しないは、それぞれが判断すればいいだけですから。
ちなみに。
「労働者のメリット」部分で書いたとおり、キャリアを重ねたあとの転職って、多分、お若い皆さんが想像するよりハードルが高いんです。
周囲との関係を積み上げることと、期待どおりの結果を出すことを、同時進行で進めなきゃいけないんですからね。そのプレッシャーたるや、半端じゃありません。
ぼく自身、今の会社ではそれなりにうまくいったような気がしていますけど、ひとつ前の会社では失敗しています。
会社がぼくに何を求めていたのか、面接の時点で分かっていました。でも、5年働いて、そこに関する成果は残せませんでした。
まったく関係ないジャンルでそれなりの結果を残したので、会社に損はさせていない……と、少なくとも本人は希望的にそう観測しています。ただ、30代後半の年長者を拾ってくれたのに、もっとも期待されていた部分で何もできなかったことは、今でも強く悔やんでいます。
今、転職を考えている方。特に、ある程度のキャリアを持っていいる方。ぜひアルムナイ採用も含めた多くの選択肢から、もちろん「転職をしない」ということも選択肢に入れながら、よーく考えて最良の方法を選んでください!
そしてよければ、「ジョブリット」という求人メディアもその選択肢の1つに入れていただければ幸いです!
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