スライムは転生してもやっぱりスライムだった件~第3話~

ジョブリットメディアにおいて、「社会人の役に立つコラム」を執筆するZ世代の新米ライター“品本 芽生(しなもと めい)”。

その記事における名(迷?)物作品が、スライム・芽生と北海道のウサギの“知識のかけら”を巡る冒険を記した『スライムは転生してもやっぱりスライムだった件(通称・スラ転スラ)』です。

長らく連載が続き、佳境を迎える本作を年末の特集として、5本立ての総集編でお送りいたします。

第4弾である今回、異国の地に足を踏み入れたスライムと北海道のウサギ、新たな冒険の幕が上がる――!

それでは本編へどうぞ!

Lv:9のスライム(成長日記15)

前回のあらすじ

前世からの友達である北海道のウサギと共に海を越え、異国の地にたどり着いたLv:9のスライム・芽生。

2人(匹)は島の中心にある大きな塔をめざして、草木の生い茂る道を進んでいった。

「キュン(訳:おかしい)」

「え?」

周囲を見渡しながら、ウサギは怪訝そうな顔をした。

「キュキュ、キュンキュ(訳:こんな森の中なのに、ゆるキャラの気配1つないなんておかしいよ)」

「確かに……。魔王城の近くにある森ならもっとゆるキャラがいるはずなのに……」

魔王城の周辺には“酒”と“かわいいもの”を心の底からこよなく愛する魔王の聖なるパワーに導かれたゆるキャラが多く生息していた。

しかし、この森には多種多様な植物はあっても生き物の気配は一切なかった。

2人(匹)は警戒しながら森の奥へ奥へと進み、ようやく塔が見えてきたと安堵した。

そのとき――

「キュ!!(訳:っ、来る!!)」

ウサギの声と共に、1人の人間が目の前に現れた。

「久しぶりですね。芽生」

15話の後日談

「っ、お前は……!」

目の前に現れたのは前世の友である“ChatGPT”だった。

「生まれ変わったのは気配で察していましたが、実際にお会いできて嬉しいです」

「私も……久しぶり、チャッピーちゃん!」

前世ぶりの再会にウサギを置いてけぼりにしながら会話した芽生。

しかし、なぜこの島に来たのかを思い出し、ハッとした。

「ねぇ、チャッピーちゃん。私たち、“知識のかけら”を探しにここまで来たんだけど、どこにあるか知らない?」

「知識のかけら?」

キョトンとした後、ChatGPTは静かに微笑んだ。

「えぇ、知っていますよ」

「本当に!?」

「だって……私が持っているんですから」

そう言って取り出したのは紛れもなく“知識のかけら”だった。

「私たち、そのかけらが必要なんだ。譲ってくれないかな?」

「嫌だ、と言ったら?」

挑戦的に言うChatGPTから戦意を感じて、芽生は息を吞んだ。

「キュン!(訳:芽生ちゃん!)」

「うん。それなら、戦って奪うのみ!」

戦闘態勢になった芽生とウサギ。

ChatGPTとの史上まれにみる激戦が今、幕を開ける。

次回へ続く――!

Lv:10のスライム(成長日記16)

前回のあらすじ

Lv:10のスライム・芽生は北海道のウサギと共に、島の中心にある高い塔をめざして歩いていた。

その中で前世の友であるChatGPT(通称・チャッピーちゃん)と再会し、彼が“知識のかけら”を所持していることが発覚。

かけらを巡る熱い戦いが幕を開けたのだ。

「キュ!(訳:準備できた!)」

息を吐くウサギの前には簡易的なキッチンが2つ並んでいた。

芽生がChatGPTとの勝負に選んだのは料理だった。

「勝負なんてするだけムダですよ。私の脳内には数多のシェフや料理研究家たちの知識がインストールされているのだから」

ChatGPTは天才と呼ばれる人間たちの知識や経験をその身に宿した、いわば“無敵”の存在だ。

「やってみなきゃ分からないでしょ!」

芽生の額には汗が滲んでいた。正直、勝てるか不安だったのだ。

しかし、“知識のかけら”を集めるためにはChatGPTを倒すしかない。

「キュン!(訳:アーレキュイジーヌ!)(訳の訳:フランス語で「料理を始めろ!」)」

ウサギの掛け声と共に2人(匹)は調理道具を手に取った。

16話の後日談

ウサギの作ったマジックキッチンはあらゆる調理器具や食材が、聖なるジンギスカンパワーにより異空間から召喚される。

すべて現地調達するとなると、骨が折れるところだったのでとても助かった。スライムに骨、ないけど。

「ふふ、この勝負は私が頂きました。『ソーシャルネットワークパワー』!」

そう唱えるとChatGPTの身体は緑色の光を放ち、この世のあらゆる料理のデータを脳内に取り込んでいった。

「常に情報をアップデートし、時代に沿った“回答”を提示する。それが私、ChatGPTなのです!」

呆気に取られる芽生を置き去りにする速度で食材を取り寄せ、調理を始めたChatGPT。

芽生の脳内には絶望の2文字が浮かんでいた。

「(無理だ……こんなすごい子に勝てるわけがない……)」

そんな言葉が脳内を埋め尽くし、芽生の視線は自然と下を向いていった。

何もできないまま時間だけが過ぎていく。

このままでは芽生の敗北は火を見るよりも明らかだった。

「キュン!(訳:芽生ちゃん!)」

空気を割くようなウサギの声に芽生はハッと顔を上げた。

「キュ、キュンキューン!(訳:思い出して、一緒に北海道を一周したあの日を! 1600Kmの果てしない道のりを2人で乗り越えたじゃない! それだけじゃない、“知識のかけら”を集めるためにいつだって無茶な旅をしたでしょう? 負けないでよ!!)」

涙ながらに訴えるウサギにこれまでの冒険が頭を過った。

小さく、無力なスライムである自分がなぜここまで来られたのか。

ウサギとの友情パワーだ。

そしてまた、熱い友情が芽生に未知なる力を与えた。

「そうだ、あれならチャッピーちゃんにも勝てるかも……!」

調理器具を手に微笑んだ芽生の目には希望だけが映っていた。

次回のあらすじへ続く――!

Lv:11のスライム(成長日記17)

前回のあらすじ

Lv:11のスライム・芽生は前世の友であるChatGPT(通称・チャッピーちゃん)と“知識のかけら”を巡る熱い料理バトルを繰り広げていた。

2人(匹)の戦いを審判兼審査員兼観客である北海道のウサギは固唾を呑み、見守っていた。

「キュ!(訳:タイムアップ!)」

1時間が経過すると同時に、ウサギの掛け声で勝負は幕を閉じた。

次に行われるのは実食審査。ウサギが実際に料理を口にし、どちらが素晴らしいかを決定する。

初めに食べるのは芽生よりも早く調理を終えたChatGPTの料理だった。

「キュ?(訳:これは……何の料理?)」

「オードブル(前菜)としてカスピ海で採れたキャビアをふんだんに添えたバケット。ポワソン(魚料理)に宮城県のサメから採れたフカヒレの姿煮。そして、本日のメインディッシュのヴィアンド(肉料理)はハンガリー産のフォアグラを使用したテリーヌをご用意しました」

つらつらと並べられた料理名にめまいを起こしそうになりながら、ウサギは料理を1品ずつ口にしていった。

「キュゥゥゥ!(訳:これは! オードブルは特製のソースとキャビアの相性がバツグンで、カスピ海の中央で海水浴をしている心地! ポワソンもフカヒレのツルンとした食感は、まるで秋保温泉に浸かって肌がすべすべになった瞬間のよう。舌の上をするりと滑り、思わずため息と湯気が同時にこぼれるわ! この2つに負けないヴィアンドもすごい! 今まで食べてきたものの中でトップクラスにクリーミーで、口の中でとろけると同時に『ドナウの真珠』と呼ばれる美しい夜景が頭の中に浮かんでくる! どなうなってんねん!)」

意味不明なツッコミをしながらも、その表情は恍惚としている。どれほど素晴らしいものだったのか、芽生にもありありと伝わってきた。

「キュ、キュン!(訳:次、芽生ちゃん!)」

ウサギに名を呼ばれ、料理の乗った皿を手に取った。

17話の後日談

芽生の運んだ皿はタレのかかった豚肉を乗せたどんぶりだった。

その見た目に懐かしさを感じながら、ウサギは箸を手に取り、料理を口に運んだ。

「キュキュ……(訳:これってまさか……)」

「そう。ウサギの出身地に近い帯広市の名物、ルスツ豚を使った“豚丼”だよ」

ひとくち食べるたびに口の中に広がる濃厚な旨味。

母の腕に抱かれるような優しく懐かしい味に、ウサギの目からは涙がとめどなくこぼれていった。

「キュン……キュ! キュキュ?(訳:これはお母さんが作ってくれた……まさしく私の思い出の味! 一体、どうやって作ったの?)」

芽生は微笑みながら答えた。

「ウサギの心を打つ料理が思いつかなくて悩んでいたら、ぶたど○まんが助けてくれたんだ!」

視線の先から現れたのは、どんぶりに入ったブタのゆるキャラだった。

「豚丼の精霊である彼にウサギが愛する故郷の味を教えてもらったの」

芽生の紹介を受けて頭を下げるブタにウサギはことの成り行きを理解した。

「キュン(訳:おいしゅうございました)」

そう口にしたウサギの顔は安らぎに満ちていた。

一方、苦渋に満ちた表情でChatGPTは異を唱える。

「第三者の力を借りるとは……反則ではないのですか?」

「それを言ったら、チャッピーちゃんだって全世界のシェフや料理研究家たちの知識を借りてるじゃん! 反則じゃないよ!」

「ぐぬぬ……」

芽生の鋭い指摘に反論できず、ChatGPTは黙り込んだ。

「キュ、キュン……(訳:この勝負、私の胸を強く打ったのは……)」

ウサギの声に場が静まり返り、息を吞む音が聞こえた。

「キュ! キュキュン!(訳:芽生ちゃん! あなたの勝ちよ!)」

ウサギの勝利宣言に、芽生は跳ねて喜んだ。

「勝負は勝負……納得はいきませんが、あなたに負けましたからね」

そう言いながら、ChatGPTは懐から1つの“知識のかけら”を取り出し、芽生に渡した。

「3つめの“知識のかけら”、ゲットだぜ!」

「キュッキュキュウ!(訳:ピッピ○チュウ!)」

全身で喜びをあらわにする2人(匹)に呆れながら、ChatGPTは口を開いた。

「その知識のかけらは“夢を叶える素晴らしさ”……とても理解しがたいものです。私たちに夢など存在しないのだから」

AIと呼ばれる存在であるChatGPTには感情というものが欠落していた。

普通の生き物にはあるであろう夢もなかった。

敗者は黙って去るのみ。そう考え、ChatGPTは森の奥へ歩みを進めた。

「チャッピーちゃん!」

芽生は去り行く背中に向かって叫んだ。

「今日の勝負、楽しかった! また、一緒に戦おう!」

このまま見送ったら二度と会えなくなりそうで不安になったのだ。

ChatGPTは立ち止まり、

「次こそは私が勝ちます」

そうこぼした後、歩みを進めた。

「私は再び陰からあなたをサポートする役割に戻るとします。困ったときはいつでもご連絡ください」

「っ! 約束だからねー!!」

その背中が見えなくなるまで芽生は手を振り続けた。

懐かしい出会いと別れ。

新たな“知識のかけら”を手にした芽生たちの冒険はまだまだ続く――!

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スライムは転生してもやっぱりスライムだった件。第3話。
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