以前、数回にわたって労働者の契約形態について解説した記事を展開しました。
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裁量労働制はやばいって本当? なぜやばいと思われるのか、実はたくさんあるメリットなど、裁量労働制をくわしく分かりやすく解…
そして今回は、そこで紹介していなかった雇用形態を解説します。
それが正社員。
正規雇用とも言われ、大学生や高校生の中には「就職=正社員」と考えている方が多いほど、日本でもっともメジャーな社員形態となっています。
同時に、派遣社員やフリーターとして働く人たちの中には、「次は正社員に!」と考えている方も多いことでしょう。
今回はそんな正社員の定義やメリット、そしてあまり知られていないデメリットなどを詳しく解説します!
正社員が当たり前って本当? 定義と比率を解説!
先ほども書いたとおり、正社員という雇用形態をめざす方は、多いというかほとんどと言っていいでしょう。
そんな正社員を正しく理解するためにも、まずは定義から紹介していきましょう。
正社員の定義とは?
日本には労働基準法や男女雇用機会均等法など各種の法律で労働者を定義・保護しています。
しかし、実は正社員という雇用形態に法的な定義は存在しません。なぜなら正社員も契約社員も派遣社員も、そしてアルバイトやパートタイマーも、すべて「労働者」として同一に扱われるからです。
にもかかわらず、当サイトの兄弟サイトとも言える『ジョブリット』をはじめ求人サイトでは「正社員募集」などと書かれることがほとんど。
では、いったいどういう雇用形態を「正社員」としているのでしょうか。
契約社員でも派遣社員でもバイト・パートでもない=正社員!?
法的な定義の正社員。では一般的にどのような雇用形態を正社員と呼ぶかと言うと、だいたいの場合は下記を指します。
・自社の直接雇用
・雇用期間の定めがない
・フルタイムで働く
この2つの条件を満たした場合、正社員として扱われることが多いでしょう。
逆説的に言えば、期間を定めた契約を結ぶ契約社員、雇用先と就業先が異なる派遣社員、労働時間のうち契約した時間のみ働くアルバイト・パートではない社員が正社員と言えるかもしれません。
ちなみにフルタイムとはその会社が定めた労働日・時間をすべて出勤すること。必ずしも1日8時間とは限りませんし、また土日祝休みなどの休日日数に関しても会社次第となります。
正社員の比率はどのくらい?
「就職=正社員」というイメージさえある日本で、実際に正社員として働く人はどのくらいいるか、ご存じですか?
総務省が発表した『労働力調査(基本集計)』によると、2024(令和6)年12月時点での正規の職員・従業員数(=正社員数)は3,658万人。対してパートやアルバイト、派遣社員や嘱託など非正規の職員・従業員数は2,179万人となっています。これをパーセンテージに直すと正社員が62.7%、それ以外が37.3%となります。・
(出典:総務省『労働力調査(基本集計)2024年(令和6年)12月分』)
この数値を皆さんがどう感じるかは分かりませんが、ひょっとすると、予想よりは低い数値かもしれませんね。
デメリットってあるの? 正社員の特徴を紹介!
「正社員」という言葉の定義がはっきりしたところで、ここからはその特徴を紹介していきます。
めざす方が多いということからもメリットが多いのはお分かりかもしれませんが、実際にどんなメリットがあるかを解説していきます。
同時に、実は正社員ならではのデメリットも存在しますので、そちらもご確認のうえ、ご自身の希望に合った働き方を実現していただければ幸いです。
やっぱりたくさんある!正社員のメリットを紹介
まずは正社員のメリットから紹介していきましょう。
先ほども書いたとおり法的な定義がない雇用形態ですから、必ずしもすべての正社員がまったく同じというわけではありません。しかし、ほとんどの場合は、下記のようなメリットが存在します。
①給与が高い
②福利厚生が充実している
③職を失いにくい
④社会的信用度が高い
上記について1つずつ解説していきます。
給与が高い
一般的に、正社員は他の雇用形態と比べて、給与面が優遇される傾向にあります。
実際に厚生労働省が調査・発表した『令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況』内「雇用形態別」のデータによると、正社員の平均月給が33万6,300円なのに対して、正社員以外は22万6,600円。約10万円もの差があります。
(出典:厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況』内「雇用形態別」)
もちろん、勤続年数の差(正社員平均12.9年に対して正社員以外平均9.5年)も影響しているでしょうが、収入面で優遇されていることは一目瞭然です。
さらに、一般的に非正規社員は賞与が出ない、もしくは少ないことも考えれば、年収ベースで150~200万円程度の差がついてしまうことも少なくありません。
現代では「同一労働同一賃金」という考え方が根付いてはきたため、賞与にかんしても今後改善されていくかもしれませんが、責任の重さなどを考えると完全に同一となることは考えにくいのが実情。しばらくは収入面の格差が存在し続けると考えておいたほうがいいでしょう。
福利厚生が充実している
ある意味では、賃金以上に差が付きやすいのが福利厚生。住宅手当や社員寮、健康診断の補助や各種ワクチンの予防接種、さらには資産形成の補助など、さまざまな福利厚生を用意している企業が増えていますが、これらの恩恵を最大限に受けられるのはやはり正社員となっています。
また非正規社員は資格取得支援制度や外部研修の受講なども制限されることがあり、こういった制度を活用してスキルアップした正社員との給与格差がさらに開いてしまうことも。
福利厚生以外の待遇面でも先述した賞与のほか、退職金や結婚・出産祝い金に入院や葬祭料、香典などの見舞金の支給なども、正社員に限定されることが多々あります。
職を失いにくい
こちらは正社員が享受できるもっとも正当な権利とも言えるかもしれません。
定義の欄でも説明したとおり、正社員と呼ばれる雇用形態は原則、契約期間の定めがありません。ということは、大きな過失やよほど経営状態が悪化しがないかぎり、会社側から解雇される心配がないことになります。
対して契約期間を定めている労働契約の場合、期間終了のたびに失業の可能性があることに。プロジェクト自体の終了や進捗にめどが立ったなど、本人が結果を残しても契約が延長されないこともあるため、長期にわたる安定感を求める方は正社員雇用をめざすべきと言えるでしょう。
社会的信用度が高い
正規雇用されている労働者は非正規雇用の労働者と比べて社会的な信用度が高く、ローンやカードの審査に通りやすいというメリットもあります。
マイホームやマイカーの購入はもちろん、マンション・アパートの賃貸契約にも影響する項目なので、実は非常に重要な要素ではないでしょうか。
特定の企業や組織に属さないフリーランスや個人事業主と比較する場合、この傾向はさらに顕著なものとなるので覚えておきましょう。
意外と多い!?正社員のデメリット!
「正社員にデメリットなんてない!」と思う方もいるでしょう。
しかし、実はデメリットもそれなりに存在しますし、その数は意外と多いと感じられるかもしれません。
①残業や休日出勤が発生する
②転勤や異動を断れない
③長期休暇を取得しにくい
④大きな責任を背負う可能性がある
こちらも1つずつ解説していきましょう。
残業や休日出勤が発生する
正社員として働く場合、就業規則によって定められた残業や休日出勤に対しては「正当な理由」がない限り命令を拒否できません。
むしろ理由なく拒否をしてしまうと、場合によっては懲戒処分を受けたり懲戒解雇の処分をされたりする可能性があります。
ここは特に派遣社員やアルバイト・パートとの差が顕著となる要素でしょう。
ちなみに「正当な理由」の代表例としては、妊娠中や産後1年以内の女性、3歳未満の子どもの養育や家族の介護をしている場合、そして小学校就学前の子を養育していてかつ残業時間が月24時間または年間150時間を超えている場合などが挙げられます。
転勤や異動を断れない
日々の生活においての影響は残業や休日出勤のほうが大きいものの、こちらは生活スタイルそのものが変化してしまう要素。その分、人によっては極端に避けたいと考えるのではないでしょうか。
多くの場合、転勤や異動にかんしても、就業規則によって可能性が示されています。そして労働契約を結んだということは、その規則を了承したと見なされるため、原則的には辞令を断ることはできません。
場合によっては海外への転勤もありえるので、どうしても転勤や異動を避けたい方は、入社前に必ず会社側と条件をすり合わせておきましょう。
長期休暇を取得しにくい
正社員だとGWやお盆、年末年始に長期休暇がもらえるんじゃないの? そうお考えの方もいるかもしれません。
しかし、カレンダー次第で最大9連休を取得できる可能性はあるものの、多くの場合は5連休程度が限界です。
またそれらの時期は多くの方が同時に休むタイミングでもあり、どこへ行っても混んでいるという悲しい事実もあります。
このあとに解説する正社員という責任の重さも手伝って、思うように休暇を取得できないことは大きなデメリットと言えるかもしれません。
大きな責任を背負う可能性がある
最後に紹介するのは、背負う責任の重さの違い。「同一業務同一賃金」という前提があるにもかかわらず正社員と非正規社員で待遇が異なるのは、この要素が大きくかかわっていると言えるでしょう。
ただし、責任が重いのは、裏を返すと「やりがいのある仕事を任されやすい」ということでもあります。
やりがいを感じられなければ仕事を長く続けることは難しく、早期の退職を繰り返せばいつまで経っても収入アップは望めません。
責任の重さをやりがいと受け止めるか、それともプレッシャーと感じてしまうのか。それ次第でデメリットかどうかが決まるとも言えます。
まとめ:働き方は人それぞれ!
ここまで正社員という雇用形態、そしてそのメリットとデメリットを解説してきました。
この記事で皆さんに伝えたかったことはただひとつ。
正社員は必ずしもメリットだらけではないし、好んで非正規という働き方を選ぶ人も増えているということです。
収入を最大化したい、福利厚生などの制度を最大限、享受したい、解雇の心配を極力減らしたい。
そういった、いわば『安定』を求める方にとっては、正社員は理想的でしょう。
一方で、好きなときに働いて好きなときに休みたい、責任の重い仕事はしたくない、収入はほどほどでいい。
こういった方は、正社員よりも非正規で働いたほうが希望に近い人生を歩めるでしょう。
現代では働き方は人それぞれ。
就職活動=正社員をめざすもの、という固定観念は捨てて、ご自身のめざす人生を実現しやすい働き方を選んでいただければ幸いです。
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