皆様、おはこんばんちわ。“魔王”です。偉くも強くもすごくもないけど、魔王だったら魔王なんです。
よろしくお願いいたします。
前回、図らずもぼくが本当はいかに真面目で、世の中や社会、そこで生きる人たちのことを真剣に考えているすばらしい人間なのかを露呈させてしまいましたね。
こういうの、なんて言うんでしたっけね。能ある馬鹿は爪を噛むでしたっけ。
まあ、そんなキャラ崩壊するようなすばらしすぎる原稿を書いてしまった反動として、今回は後輩の原稿内容をいじるという、人間のクズにぴったりのコラムにしようと思います。
題して「仕事における“センス”ってなんだろう?」です!
この世の真理:センスはパクるもの!
将来、小説を書きたいという大きな夢を抱いてこの世界に飛び込んできた後輩・芽生(めい)ちゃんが前回書いたコラムはこちら。
ざっくり言うと…
・周囲に倣うことでセンスを磨ける
・でも場の空気を読みすぎて自分を消しても意味がない
・センスは伸ばすものだ!
という感じですかね。
うんうん。新人らしいホワイトでフレッシュな感想です。
じゃあこれをフレッシュとは程遠い、こげ茶色に腐りきったおじさんが考えるとどうなるでしょうか。
天才はセンスの塊!
世の中には「天才」と呼ばれる人たちがいるじゃないですか。
クリエイターに限定しても映画監督、アニメ監督、映像クリエイターなど職業はさまざまですが、こういう人種に共通しているのは「センスがいい」ってことだと思うんです。
当然、ぼくが生業としている文字の世界にも、そういう方がいらっしゃいます。
ぼくもとても身近なところで、本当に「天才だ!」と痛感させられたライターが思い当たりますしね。
そういう人たちの原稿には、それぞれ“その人なりのおもしろさ”があるんですけど、共通点もやっぱりあります。
それは「さささっと読めちゃう」ってこと。
今回はその代表例として、ぼくが今年(2025年)初頭に書いた“悲しい話”で紹介した、とある先輩を挙げたいと思います。
とはいえ、先輩が書いた原稿をここに載せるわけにはいかないので、そのすごさが極力かんたんに伝わるように書いていきますね。
馬鹿な若造でも理解できた!笑えた!
あえて名前は伏せます(じゃないとぼくが何者か、かんたんに特定されちゃう笑)が、その方は特定のジャンルの専門誌に、専門的ではない“おもしろ原稿”を書くことを生業としていました。
そしてね、その原稿がね、本当に抜群におもしろかったんです。
でも、同じ世界に入り、同じ雑誌で仕事をしてからや、その後、自分もライターという同じ職業に就いた今では、それだけではない感想が生まれました。
ぼくが初めて先輩の原稿を読んだのは19歳のころ。そのころはただただ純粋に、めちゃくちゃおもしろかったです。これだけで、もう充分すごいことです。
でもね、ぼくが雑誌編集として文字周りの仕事を始めて、文章の作り方の基本を学んだあとは、違うすごさに気づきました。
それは、文章力の高さ。
ネタ振り、回収、裏切り。単純なワードチョイスや言い回しだけではない、計算し尽くされたおもしろさを“理論的に”理解したあとは、すごいとかの言葉だけでは言い表せられない感動を覚えたんです。
そして本当に最近、これを書くために家にある雑誌を読み直してみたところ……ページの使い方まで上手だったんだなあと新たな“気づき”を得ました。
でもね、いちばん大事なことなんですけど、いつ読んでも「圧倒的におもしろい!」という事実だけは不変なんですよ。
19歳の単なる読書好きなおバカさんも、30代の雑誌編集者も、40過ぎのおじさんライターでも、1つの文章を同じように理解して同じポイントで笑っちゃう。
仮にも17年以上、文字の世界で生きているぼくには、その“すごみ”が心の底から理解できます。
天才の作品は“真似”しやすい!
そしてね、とてもありがたいことに、天才がつくる作品は「模倣」しやすいんですよ。
「〇〇さんといえばこれ!」みたいな特徴がはっきりあるから、そこさえ押さえておけばかんたんに“〇〇風の作品”がつくれちゃうんです。ま、「ただの劣化コピーだろ」と言われればそれまでですが。
でも、元が良すぎるから、インスタントな笑いや感動くらいは伝えられるんですよねえ。ありがたや。
これはきっと、他のジャンルでも同じじゃないかな?
たとえば、ジ〇リ風のイラストをかんたんに制作してくれるAIツール、ありますよね。あれもそういうことだと思うんです。
ぼくらの世界ではそういう特徴を「文体」と呼びます。文章のクセ、くらいの意味ですけど、“真の文体”を持つ文筆家は世の中にそうはいません。
そしてぼくは、そういう独特の文体を持つ文筆家に、果てしない愛情と羨望を持っています。
凡人が成長するために必要なこと
もちろん、ぼくのような凡人にはそういう作品はつくれません。逆立ちしたって勝てません。
でも、……別に勝たなくてもいいよねw
本当に太刀打ちできないような天才なんて、ほんの一握りだしさ。
ぼくはこれまでのキャリアの中で、いろんなクリエイターとすれ違ってきました。9割以上の人は、明らかにぼくより才能がありました。
でも、ぼくはぼくで、ぼくなりの居場所を見つけることだけはできたんですよ。
じゃあどうやって闘ってきたのか。
キーワードは2つ。「開き直り」と「パクり」です。
開き直ることの大切さ
できないものはできない!
そう言い切ることで、ぼくはなんとかこの世界を生き抜いてきました。
前々回のコラムで書いた「“たすけて”を言うのはあきらめたのではなく、あきらめないためだ」に近い感覚です。
できないものはできない。やれないことはやらない。
その代わり。
できることで勝負する。
きっと、多くの皆さんも「万能」ではありませんよね。ぼくのような“THE無能”であればなおさらです。
そして、ぼくは老い先短い“おじさん”です。皆さんより時間は残っていません。
それならば。
17年もぼくなりに真剣にやってきたのにまだ苦手なこと、できないこと。そんなのに固執するよりも、できることでどう会社に貢献するかを考えたほうが建設的です。ぼくにとっても、会社にとっても。
憧れて追いかけてやっと辿り着いたライターという仕事を、ぼくはまだあきらめたくありません。そしてそれを実現するためには「無理なものは無理!」と開き直る必要があったんです。
すべての芸術は模倣から始まる!
こんな言葉、なんか聞いたことありますよね。具体的に誰の言葉なんだろうと思って調べたら、ルソー(19世紀のフランスの画家)やらトルストイ(19世紀の帝政ロシアの小説家)やら、果ては日本の芸能人・清水ミチ子さんやら、いろんな説が出てきました(笑)。
そんな中、Google AI様は古代ギリシャの哲学者・プラトンの言葉だと返してきました。明らかに時代がもっとも古いので、この説を採ることにしましょう。
とにかく、ぼくはこの言葉を信じています。
というか、ぼくごときは誰かの何かをパクらなければ、おもしろい文章なんて書けません。パクったところで大しておもしろくないんだから。
“パクり”方にこそ“センス”が現れる!
一般的に、日本人は「パクり」を嫌います。ぼくも嫌いですよ。“丸パクり”はね。
でも、ぼくで言えば好きな文筆家の作品から一切、影響を受けるなって言われても、そんなの無理に決まっています。意識的か無意識的かはともかく、絶対に影響されます。
だって、文字が好きで、本を読むのが好きで、文章を書くのも好きでこの仕事をやっているんですよ。
じゃあ、なぜそれらを好きになったのか? 答えは当然、大好きな作家たちに出会ってきたからなんです。
そんな“好き”の根幹にあるものから影響されるな! なんてできるわけないじゃないですか。
同時にね、こんな拙い文章でもね、いろいろな作家、ライター、文筆家の文章に影響されまくった文章でもね、やっぱりこれは“魔王くんオリジナル”の文章なんです。
“魔王”流「オリジナル」論
すっごくわかりやすく言います。
特定の誰かの文章だけを直接パクるのはダメです。丸パクりです。やってはいけません。
でも、Aさんのネタの振り方、Bさんの回収の仕方、Cさんの裏切り方、Dさんの文章構成……それをミックスしたら、それはもうその人のオリジナルなんですよ。
だって、“誰の”、“何を”、“どう”混ぜ合わせるか。その塩梅はその人にしか思いつかないものだから。
そして、そのブレンド方法、ブレンド具合こそ、その人の“センス”がもっとも発揮されるポイントです。
“丸パクり”するような奴はセンスがないし、その人なりのオリジナリティを感じられるようにミックスできる人はセンスがいい。
結局のところ、“センス”っていうのは影響を受けた作品をどう理解・分解・再構築するかにかかっているんだ!
ってな感じで考えているんですけど、これで納得してもらえますか?
センスを磨くならパクりまくれ!
ぼくが芽生ちゃんに伝えたいことは、タイトルに書いたこと、それだけだったりします。パクるってワードだけ聞くと怒られそうだけど、ライターに必要な要素がその過程に詰まっているから。
まず、パクりたいと思えるほど好きな作家を見つけなきゃいけません。ってことは、それ以上に多くの人の文章に触れなきゃいけません。
また、効果的にパクろうと思ったら、その作家の文章を死ぬほど読み込んで「自分が感銘を受けた部分」を見つけなきゃいけません。
なにより、長期的にパクり続けるためには、いくつもそういう部分を見つける必要があります。じゃないとすぐにネタ切れしておしまいです。
そして、それら別々のパーツを1つの文章、作品に組み合わせるには相応の文章力が必要になってきます。
たくさん本や文章を読み、自分好みの作家を何人も見つけて、その人たちの“センス”が顕著に出ているポイントを何個も探し出して、それらを組み合わせても自然な形に収められるだけの文章力も身に付ける。
ね、どれもライターに必要でしょう?
・本をたくさん読む(マンガでもラノベでも小説でも、なんでもOK)
・好きな作家を見つける
・「“なぜ”その作家が好きなのか」を考える
・「その作家の“どんなところ”が好きなのか」を考える
・好きな作家を増やす
・それぞれのいいところを自分なりに“パクる”!
・たくさんの作家の”いいところ”をミックスしても破綻しない文章力を身に付ける
……。
「前回の真面目なコラムに対する反動はどうした?」って思った皆さんへ。今回のコラムのキモはここからですよ(笑)。
ぼくの自分勝手な“パクり=オリジナル論”を「そうかもしれない!」って思った方、きっといますよね。そういう方は詐欺にひっかからないように気をつけてください。
ぼく、途中からずーっと「開き直っている」だけですよ(笑)。
そう、無能なぼくが文字周りの仕事を17年も続けられている理由は、結局のところ「堂々と開き直っていられる」から。これに尽きるんです。
騙された皆さん、ありがとう。
このコラム全体を使った“裏切り”こそ、誰からパクったわけでもない、魔王くんオリジナルのセンスです。
最後に。
芽生ちゃんが騙されていないことを期待しています。
仮にもライターとしての一歩を踏み出したんだから、文章の“裏”くらいかんたんに読み取れるようにならないとね♪
(でも多分、騙されてると思います。なぜか分からないけど、妙に自信がありますw)
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