(このコラムは“続き物”です。ぜひ前回のコラムからお読みください)
皆さん、おはこんばんちわ。“魔王”です。
前回、無駄に重ねた“17年もの歳月”だけを武器に新時代のAI『ChatGPT』くんに勝負を挑んだものの見事、返り討ちに遭ったぼくです。
自信を失いました。いや、もともとなかったわ。
>AIの進化がすごすぎる!ライターが『ChatGPT 』と真剣勝負してみた!
もっとも身近なAIのひとつ『ChatGPT』。驚異の速度で進化を続けるこのツールと、長いキャリアを持つベテランライターが…
でもね、こちとら腐ってもベテランライターですからね。ただ負けただけでは終わらせませんよ。
確かに進歩はすごかった。心から驚きました。それでも、勝ち筋も見つけました。
今回はライターという汎用性に欠ける側面はあるものの、AIに負けないために心がけること、そして後輩の育て方を考えてみます。
すごすぎるAIにも“苦手”がある!
あらためて書きます。前回、本気でAIくんと勝負をしてみて、心から驚きました。
あのクオリティの原稿を25秒そこそこで吐き出せるなら、もう99.9%のライターは太刀打ちできないね。残るのは本当に優れた文体を持ち、それがうまいこと世間に認知された、ごくごく一握りの文筆家さんだけですわ。
……と、そうかんたんにいかないのが、クリエイティブ職のおもしろいところ。
勝負に完敗しながらも、ぼくはAIの弱点を複数、しっかりと見抜きました。それを書いていきます。
けっして負け惜しみじゃないからね!
苦手①体験
完敗の腹いせに最初からぶっ飛ばしていきますよ。ChatGPTに限らない“AI”最大の弱点。それは「AI自体は何も体験していない」ことです。
たとえば前回のコラムのテーマ“退職を決断するタイミング”で言うと、AIは「退職したことがない」んです。当たり前ですけど。
ChatGPTというツールのアルゴリズムは分からないので勝手な想像ですが、こちらが指示したテーマを内部的に検索して、上位表示された複数の記事から共通点を見つけて、それを文章にして吐き出してくるのでしょう。
かんたんに言うとね、“まとめブログ”の高性能版でしかないんです。
もちろん、誰かの退職記から実例を引き出してくることはできるでしょう。でも「自分が退職したときにこんなことがあった」というエピソードトークはできません。
“一般論”を調べたい人にはいいけど、そうじゃなく“実例”を求めている人だって多いはず。
それなら、ぼくのようにTHE無能で、しかもかなり偏った考え方をする人格破綻者の経験だとしても、わずかながらニーズはあるはず。
「はず」ばかりで恐縮ですが、これからもぼくは「自分をさらけ出すスタイル」を続けていこうと決めました。
苦手②真贋チェック
ライター、クリエイティブ職から見た最大の弱点は上の「体験」なんですけど、利用者目線だと最大の問題点はこっちでしょうね。
AIくんって、ものすごく不思議なアルゴリズムにのっとって吐き出す情報を取捨選択しているようなんです。
まずはこちらをご覧ください。
【ChatGPTくんに「あのちゃんって誰」と聞くと……】
「あのちゃん」は、日本のタレント・歌手・モデルで、ちょっと不思議で独特なキャラクターで人気のある人です✨
・本名は非公開。1998年生まれ(東京出身)。
・以前はアイドルグループ ゆるめるモ! のメンバーでした。
・現在はソロアーティスト・タレントとして活動していて、音楽活動(ソロや「ano」としての楽曲リリース)やバラエティ番組にもよく出演しています。
・独特の話し方やファッション、ちょっと天然っぽいキャラが「かわいい」「癖になる」と話題。
・2022年にはアニメ『チェンソーマン』のエンディング曲「ちゅ、多様性。」を担当してさらに知名度がアップしました。
テレビでもよく見かけるし、Z世代からの支持がすごいです
知りたいのは「あのちゃんの人物像」?それとも「楽曲やキャラの魅力」について深掘りしたいですか?
多分、聞くたびに毎回、返事が変わりそうなので、嘘を書いてない証明として、スクショも貼っておきます。
さあ、皆さん、ここに大問題が隠れていることが分かりますか?
まず。
Wikipediaによると、あのちゃんは年齢&出身地非公開らしいんです(一部に「2023年にSNSで公開した」とありましたが、公式サイトなどにはないため除外)が、それを平気で書いています。
しかもね、真偽不明ですけど「1998年生まれ」、「東京出身」という情報は、ネットに出回ってる噂とも異なっているんですよね。
正直、テレビをほとんど見ないおじさんのぼくですら知っている超メジャー芸能人の情報さえ、平気で間違えてしまうんですよ。しかも、なぜか自信満々に。
これはね、本当に大問題です。
苦手③統一性
かなり細かい話で恐縮ですが、前回ChatGPTくんが吐き出してくれた文章で個人的に気になったポイントです。
まず、こちらを読んでみてください。
身体が出すサイン
そして最後に、少しユーモラスに言えば、朝の出勤時に、足が自然と駅とは逆方向に向いてしまうなら、それは立派な転職条件だろう。心と体は正直だ。
無理に自分を奮い立たせているうちはまだ耐えられるが、そのうち身体がサインを出す(後略)
気付きますかね?
タイトルや文中に、「体」と「身体」が入り混じっているんです。表記の不統一というのは新人ライターが真っ先に注意されることなんですけどね。
もうひとつ。こちらは画像でご覧ください。
ここに出てくる「生活を守れるだけの労働条件」、「健康を損なわない職場環境」、「成長の余地ややりがい」、「ライフステージとの整合性」、「自分の心身がもう限界だ」って、コラムのキモとして“並列”じゃなきゃおかしい。
にもかかわらず、装飾がバラバラなんですよ。
最初の3つだけなら、「見やすくするために、赤と青を“交互”にしたのか。感心だな」と好意的な解釈もできますが、4つめで急にマーカーを使い、5つめは太字のみとなると、フォローできません。
このへんの“統一性のなさ”は、読み手にはあまり影響がないかもしれないと思いつつ、それでもライターという仕事をするうえでは欠かせない部分です。
AIに負けない後輩の育て方
ということで今度は後輩、ぼくの場合は芽生(めい)ちゃんをAIに負けない子に育てるために、どうするべきか。そのあたりを考えてみましょう。
とはいえね、正直、これまで付き合ってきた後輩くん/ちゃんたちへの接し方と、ほとんど変わらないと思います。
育て方①個性を伸ばす
まあ、なにより大事なのはこれですよね。どんな人にもその人にしかできないことがある。これは将来、AIがどれだけ進化しても変わらないでしょう。
なにも特別なことではありません。
ぼく自身、諸先輩方の原稿を参考にしてではありますが、いろいろな人のいろいろなスタイルをミックスして“魔王くんなりの個性”を出しているつもりなんです。
逆に言えば、諸先輩方がそういう風に育ててくれたってこと。
具体的には、個性を消さない最低限の修正に留めてくれて、スタイルが確立するまで我慢強く耐えてくれたおかげで、今のスタイルを完成させられたと思っています。
何度も書いているようにTHE無能なぼくは、オリジナルの“よりよい育て方”なんて思いつくはずありません。
自分がやってもらってうれしかったことを、後輩にもやってみるだけです。
育て方②ルールだけは叩き込む
個性とは正反対ですが、最低限のルールだけは叩き込まなければいけません。
ライターという職業の場合、さっきAIの弱点でも書いたような「使う用語の統一」とか「ひらく(ひらがな表記)or閉じる(漢字表記)の基準確定」とかもそうだし、もっと基本的な「正しい助詞の使い方」や「正しい句読点の打ち方」も含まれます。
「叩き込む」っていう言葉だけ見るとちょっと乱暴感あるけど、別にきつく叱るとかじゃないですよ。ただ、間違いを見つけたら必ず直させる。それを何回でも何十回でも何百回でも延々、続けるってことです。
これはあくまでぼくの感覚ではありますが、“個性”は草木や花なんです。派手な桜なのか、穏やかな香りで癒す梅なのか、立派にそびえたつ松なのか、それとも春に新緑を輝かせる一方、花実はつけない草なのか……いずれにしてもそれぞれの美しさを持っていますよね。まさに個性じゃないですか。
対して“ルール”は土、土地なんですよ。栄養満点の土壌なら植物はしっかり育つけど、痩せた土地だと枯れてしまう。
ぼくの場合、芽生ちゃんが芽生ちゃんなりの花を咲かせる、もしくは美しい緑の葉をつけさせることができるよう、基本だけはしっかり教えなきゃいけないと思っています。何回も同じ注意をして、やかましい老害だと思われても、ね。
いくら才能、センス、文章力に乏しいぼくでも、その辺は教えられます。むしろセンスがないからこそ、基本的な部分には人一倍、気をつけてきたつもりなので。
そう。無能もときには役に立つんですよ。ときには、なのが悲しいけど。
育て方③自信をつける
「最後にこれかよ?」、「当たり前じゃんか!」って思った方、いるかもですね。
でも、自信を持つことは本当に大事です。特に今回のテーマである『対AI』においては必須の条件と言えるでしょう。
AIとかコンピュータとか、感情のない機械って常に安定していますよね。決められたプログラムやアルゴリズムを崩すことはありません。
でも、人間はそうはいきません。どれだけプロフェッショナルに徹したところで、その日の体調やメンタルによって仕事の出来は上下してしまいます。
風邪とか花粉症とかまで考えれば、常に100%の状態でいることは絶対に無理だと思うので、ぼくらが目指すべきなのは「振れ幅を極力、小さくすること」でしょう。
そして、それを実現させるには自信が必要だと思うんです。
自信さえあればどんな悪条件にも対応できます。もちろん、平常時と比べてクオリティは多少下がるでしょうけど、大きく落ちることはないでしょう。
まあ、悪い言い方をすれば「洗脳」に近いんですけどね。「俺なら大丈夫。どんな状態でもいい仕事ができる」と思い込む。作品をつくり終えたら「俺のつくったものが“いいもの”なんだ」って信じ抜く。
もしかすると、絶対的な正解のないライターという職業特有の要素かもしれません。でも、自信がないといい仕事はできない。ぼくはそう信じています。
お前ごときが自分の原稿に自信を持ってるの? そんな真っ当な意見は聞こえなーい。
注意事項
自信は大事です。でももっと大事なことがあります。
それは“過信しないこと”。
自信と過信を履き違えてしまうと、大問題が起こります。
自信というのは、自分の実力を自らが“正しく”評価すること。間違っても「俺の原稿はすごい!最高だ!」と考えることではありません。よほどの実力者じゃない限り、それは過信です。
でも、先ほど「つくったものが“いいもの”」と書いたじゃないですか。これも嘘じゃありません。持ってなきゃいけない気持ちです。
だって、そう信じていないと1文字たりとも書けませんから。届くかどうかはともかく、全世界に向けて発信する文章なんですよ。さらに言うなら、それがぼくが死んだあとも永遠に残るかもしれない文章なんですよ。気軽に書けるわけ、ありません。
そんな危ういバランスで成り立っているこの職業。
芽生ちゃん、よくこんな仕事を選んだね(笑)。
まとめ:AIを利用できる人になろう!
最後にまとめるならば、AIの進化は本当にすごいけど、まだ弱点もあるということ。
ただクオリティは改善しつつあるし、速度に至ってはもう人間が絶対に勝てないレベルなので、“うまく共生していく”べきだと思います。
ライターという仕事であれば、具体的には下記の2つかな。
そして特に2つめの役割を担ってもらうなら、細かく的確に指示を出す必要があります。ということは、細かい指示が出せるように、こちらが大事なポイントを把握しておかなければなりません。
また先ほども書いたとおり、細かい修正はどうしても必要となるため、校正の感覚も研いでおかなければいけません。
結局のところ、ライターとして優秀であるほど、AIに正しく指示を出せていい文章を吐き出させられるのでしょう。
多分、これはどんな職種でも同じなんじゃないでしょうか。
魔王くんとしても、芽生ちゃんを優秀なライターに育てることが、AIと共存できる人間を育てることと同義だと思うので、これからも「基本の徹底」と「個性の尊重」をテーマに教えていきたいと思います。
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