今日、2026年2月3日、退職代行サービス『モームリ』の運営会社、株式会社アルバトロスの代表者とその妻が、逮捕されました。
去年10月に同社が家宅捜索を受けたとき、私は『非弁行為とは? 退職代行サービス「モームリ」と、弁護士事務所の違いを解説』という記事を書きました。
2025年10月22日、警視庁は退職代行サービス「モームリ」を運営する株式会社アルバトロスを、弁護士法違反の疑いで家宅捜…
ここで正しい退職の仕方や非弁行為の解説などは、ほとんど書き切ったようなものです。
ただ、求人サイトのブランディングサイトという性格上、転職に必要不可欠な「退職」に関するニュースを無視するわけにはいきません。
まして、それが退職代行サービスの代名詞と言っても過言ではない『モームリ』のニュースであればなおさらです。
そこで今回は、今後の退職代行サービスはどうやって生き残っていくのか、皆さんはそれまでどうやって退職していけばいいのか、そのあたりを考えていきたいと思います。
なぜ逮捕された?

とはいえ、まずは執筆時点の報道から、ことのあらましをチェックしておきましょう。
今回は朝日新聞の「「退職代行モームリ」代表らを逮捕 報酬目的で法律事務を紹介の疑い」という記事を引用いたします。
警視庁は3日、本人に代わって退職の意思を伝えるサービス「退職代行モームリ」の運営会社代表の谷本慎二容疑者(37)=東京…
この記事では2人の供述が3つ、書かれていました。
①「弁護士法違反になるとは思っていなかった」
②「全てオープンにやっている」
③「弁護士との間でお金の受け渡しはない」
いずれも上記記事より引用
このうち、②については逮捕や容疑とはあまり関係ないですね。オープンかどうかの問題ではないので。
①は法律上、認められません。刑法第三十八条第3項に下記のように記されているからです。
(故意)
~中略~
3 法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。
そして、アルバトロス社が家宅捜索され、代表とその妻が逮捕されたのは、まさしく③の部分です。
今回の容疑について
去年10月のコラムでも書きましたが、アルバトロス社をはじめとする民間の代行サービス会社には、できることとできないことがあります。
それについても記事から引用しましょう。
弁護士法は、弁護士資格を持たない人が報酬を得る目的で、法律にかかわる交渉を第三者に繰り返しあっせん(非弁周旋)することや、弁護士があっせんを受ける(非弁提携)ことを禁じる。
上記記事より引用
朝日新聞の記事には「アルバ社は、二つの弁護士法人から1件1万6500円の紹介料を得ていた」とありますから、まさしく非弁提携にあたる行為をしていたことになります。
えーと……現段階ではまだ容疑ですし、詳しいことは後々分かるはずなので、ちょっと言葉を濁しますけど……。
記事によると、『モームリ』の利用料金は正社員で2.2万円、アルバイト・パートだと1.2万円らしいんです。
ただ、当然、そのお金はモームリを運営するアルバトロス社に払うわけですよね。
なのに、弁護士事務所からもモームリへとお金が払われている。
……これって、利用者はモームリだけじゃなく、弁護士事務所にもお金を払っていたってことでしょうか? そしてモームリは紹介料としてキックバックを受けていたのでしょうか?
本当に現段階では何も分からないので、これ以上書くのは控えます。今後の裁判に注目したいですね。
[追記]
あまりに気になって去年10月のいろいろな記事を漁っていたら、こんなものを見つけました。
10月22日、退職代行サービス「退職代行モームリ」を巡り、警視庁が弁護士法違反の疑いで同サービスを運営する株式会社アルバ…
捜索のきっかけは、モームリが退職関連の法律問題の交渉が必要になった利用者を提携弁護士に紹介し、紹介料(キックバック)を弁護士から受け取っていた疑いがあるためと見られる。
これを読むと、そもそも家宅捜索された時点で、キックバックを受けていた可能性が示唆されていますね。
つまり、弁護士資格を持たないモームリが交渉をする「非弁行為」は行っていないけど、報酬を得る目的で弁護士をあっせんする「非弁提携」の疑いがあったということ。
そして実際に、「2024年7月上旬~同年10月下旬、退職希望者6人に関する法律事務を弁護士らに紹介した疑いがある。アルバ社は、二つの弁護士法人から1人あたり万6500円の紹介料を得ていた(朝日新聞記事より」と判断されて逮捕された。
繰り返しますが、現段階ではまだ容疑でしかありませんが……これが本当であれば、キックバックを目当てに利用者を弁護士に斡旋していたという、ユーザー視点で見れば裏切りと捉えられかねない行為だと言わざるを得ません。
個人的に、とても残念です。
これからの代行サービスは?
過去に何度も書いたとおり、個人的に代行サービスの利用には否定的です。
ただ、このサービスがこれだけ市民権を得たということは、言いたくても言えない、言っても無視される、そんな状況の現れなのでしょう。
否定的に見ている私でさえ、このサービスがなくなることは、世の中にとっていいことだとは思っていません。
では、退職代行サービスが今後、ますますユーザーのためのサービスとして成立していくには、何が必要なのか?
それは「法律」です。
「探偵」が許されるのはなぜ?
ここで皆様に質問です。世の中に「探偵」という職業がありますよね。あれが成立していることを、不思議に感じたことはありませんか?
だって、ある意味では単なる一般人が、特定の人を張り込んで撮影したりするんですよ。ストーカーと何が違うのかと思いませんか?
結論を言ってしまうと、探偵が職業として認められるのは、刑法に「正当行為」と呼ばれる条文があるからです。
第三十五条 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。
引用:刑法第三十五条
つまり、法律や条例に基づく行為であれば、罪には問われないんですね。探偵業には通称「探偵業法」という法律があります。これに則って営業している限り、違法にはなりません。
競馬、宝くじも同じ
ちょっとだけ脱線すると、いわゆる「賭博」がダメで、競馬や宝くじがセーフなのも同じ理屈です。日本では賭博は禁止されていますが、「競馬法」や「当せん金付証票法(宝くじの法律)」のおかげで「正当行為」として認められるわけです。
さらに言うと、警察だけが人を逮捕できたり、銃の携帯や発射が許されるのも「警察官職務執行法」に基づく行為だからなんですね。
この正当行為の条文は、意外と私たちの生活と密接に関わる、とても大事な条文なんですよ。
代行サービスがめざすべき道
本題に戻ります。
つまり、探偵業法のおかげで探偵という職業が成り立つように、民間の代行サービス会社が非弁行為を合法的に行えるようになるには、「退職代行サービス業法」をつくるのがもっとも現実的だと思うのです。
というのも「○○業法」って、結構多くの業界で制定されているものであって、特殊なものではないんですよ。むしろ多すぎて一覧をつくるのも手間だし、皆様も見にくくなってしまうので、Wikipediaのページにリンクを貼っておきます。
詳しく見る必要はありません。そのボリューム感だけでも実感できれば、夢物語ではないことをご理解いただけると思います。
「業法」制定に必要なこと
とはいえ、業法をかんたんにつくれるかと言われれば、そうではありません。政治家と官僚の人たちをやる気にさせる必要がある……というか、やらなければいけないと思わせなければいけません。
- 業界団体をつくること:「業界の声」を1つにまとめられないと、お忙しい政治家さんたちは話を聞いてくれません。
- 組織の強化:業界内での影響力はもちろん、さまざまな寄付やボランティア的な行動により社会的地位を向上させる必要があります。
ここまでいけば、議員連盟が立ち上がることも可能でしょうし、その人たちが法律のたたき台を作ってくれて、ああでもないこうでもないと議論が進むかもしれません。
……。
はい、この書き方で分かるとおり、現実的に時間がかかるんですよ。会社を辞めたい皆様から見ると、不安は募る一方ですよね。
でも、こういう“正しいルート”を通らないと、結局アルバトロス社みたいな結果が待っているんですから、急がばまわれ、です。
それまでの代替措置ではないけれど、社労士とか行政書士とかには退職代行サービスと同等の交渉ができるようにするなど、既存の国家資格の枠組みを広げるなど、速度を意識した改革にも期待したいところですね。
今、退職したい方へ
「何年かかるか分からない業法制定や枠組みの広がりなんて待ってられない! 私は今、退職したいんだ!」
そんな方がご覧になっているかもしれません。
そんな方はぜひ、弁護士事務所が展開している退職代行サービスを利用してください。
モームリなどのような民間サービスと比べると少し割高で、事務所や内容によるものの、およそ5万円~10万円程度かかるようです。
でもね、あなたの人生の貴重な時間を無駄にすることを考えれば安いものですよ。
民間サービスとは違いほぼすべての交渉が適法ですし、会社側も弁護士相手に法律論で勝てるはずもないので、スムーズに退職までこぎつけられると思います。
ぜひスマホやパソコンで「退職代行サービス 弁護士事務所」と検索してください!
過去に利用したことのある方へ
昨年10月の家宅捜索もそうでしたけど、こういうニュースが流れると、モームリを使って退職した方は「私はなにか悪いことしたのかな?」と思ってしまうかもしれません。
結論から言います。安心してください。あなたが罪に問われることはありませんよ。
退職を取り消されたり、あとから損害賠償を請求されたりなどは一切ありませんからね。
あなたは新しい会社で、笑顔で楽しくがんばってください!
まとめ:会社をつけ上がらせないで!

私はアルバトロス社を擁護するつもりはありません。ちょっと詳しい人が見れば、誰でも「黒よりのグレーだ」と判断できるビジネスだったんですから。
ただね。
この手のサービスって、必要に迫られて生まれたものなんですよ。
はっきり言えば、我々会社員が退職をするのに、会社の許可なんていらないんですよ。民法第六百二十七条に則って、2週間で契約終了(=退職)できるんです。それが本来のルールなんです。
それを認めないという不法行為を先にやったのは、会社側じゃないですか。アルバトロス社も悪いけど、そんな会社がなければ、そもそも生まれなかったビジネスなんですよ。
そういう企業が1日も早く改心する、もしくは潰れることを、心から願っています。
そして、そういう会社をつけ上がらせないためにも……まだまだたくさんある退職代行サービス会社よ、がんばって!
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